理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイト

PT-OT-ST.NET

トピックス

2020.03.02

簡易的な摂食嚥下評価法をSTが開発 大森政美さんインタビュー

食事中にムセてしまう利用者さんや患者さんに、身近にいる医療従事者が摂食嚥下の客観的評価が出来る評価法として、摂食嚥下評価法 Assessment of Swallowing Ability for Pneumonia(以下、ASAP)を言語聴覚士が開発。

今回、開発者であり言語聴覚士である大森政美さんに開発に至った経緯、またASAPに掛ける想いを伺いました。


医療従事者であれば誰でも行える摂食嚥下評価法を開発


(大森さん)
皆さんは、『最近、患者さんや利用者さんが食事中によくムセるようになってきた』と思ったことがありますか?

そんな時に、言語聴覚士(ST)に診てもらいたいけど周囲にSTがいない…、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査などの検査を行っている病院がない…なんてことはありませんか?

今回、医療従事者(看護師や介護福祉士、PT、OT、DH等)であれば誰にでも行える、摂食嚥下評価法ASAPを作成しました。特別な機器を用いず5分程度で行える簡易的な評価法です。

ASAPは、8項目100点満点で点数に応じて重症度と食事の開始や推奨される食事形態が判定できることが特徴です。点数化できるため、繰り返し使用することで嚥下機能の変化も判断できます。推奨される食事形態が選択できるため嚥下調整食や水分にトロミを付けるなどの迅速な対応の一手となります。STによる評価や検査がすぐに行えない時などに使用して頂ければ幸いです。高齢者肺炎患者を対象に作成しているため、脳卒中後の嚥下障害患者さんなどへの使用には注意が必要です。

※ASAPは「as soon as possible(日本語訳:できるだけ早く)」にかけており、出来るだけ早く口から食べてほしいという意味もあります。


摂食嚥下評価法(ASAP)開発の経緯


私はこれまでに嚥下リハビリを実施する機会が多くありました。リハビリテーションを実施する際には、まず摂食嚥下評価(スクリーニング)を実施します。その評価のほとんどが評価の成績が悪いとSTなどの専門家に相談する…と言う流れになっています。そのことにずっと疑問を持っていました。

本邦には言語聴覚士は31000人(2018年)しかおらず、その約74%が病院に所属しています。嚥下障害の方は病院だけでなく施設などにも多くおられ、地域でも高齢者などに嚥下障害がみられる方がいます。現在、そのニーズに応えられるだけのSTが本邦にはいません。

嚥下リハビリはチームアプローチが重要と言われています。そのチームには、医師、歯科医師、看護師、介護福祉士、PT、OT、ST、歯科衛生士、栄養士、社会福祉士などがいます。これら全ての職種が行える共通した指標が必要と考え、このASAPを作成しました。また、重症度に応じて対応方法(食事の開始や食事形態)の選択ができるようにしました。

ASAPは高齢者肺炎患者を対象に作成しました。高齢者はさまざまな合併症を起こしやすく、認知症を発症していることも少なくありません。認知症があると指示が通りにくく、嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査も有効に行えないこともあります。

本邦では嚥下リハビリを行う対象は高齢者であることが多いと思います。ASAPは、できるだけ指示の入りにくい嚥下障害の方にも使用できる項目で構成しています。これまで発表されている摂食嚥下評価は脳卒中患者を対象としているものが多いため、本邦の特徴(高齢化)も踏まえてASAPの対象は高齢者肺炎患者にしました。

ASAPへの想い


私は、これまでの18年の間に急性期、回復期、外来、老人保健施設、訪問リハと幅広く摂食嚥下障害の患者さんに関わってきました。急性期や回復期では脳卒中後の嚥下リハビリを中心に実施してきましたが、その多くが食事形態などの調整は必要となっても概ね経口摂取が可能となり自宅退院されることを経験してきました。

しかし、脳卒中を再発する、または高齢(誤嚥性肺炎を発症し入院となる)になると経口摂取が難しくなることがあります。

そういった方々に医師からは食事(栄養)が摂れるかの評価を依頼されることが多いですが、食事が食べられなくても一口でも口から食べるということが重要と考えています。

ASAPでは、15点以下では食事の提供は難しいという判断となります。しかし、そうなったら経口摂取はまったく出来ないということではありません。あくまでも食事提供の判断ですので、数口または、おやつ程度の経口摂取は状況に応じて続けていただければと思います。
そのため、ASAPの項目には意識や咳(誤嚥時の対応)など経口摂取前の導入(リスク管理)の項目があります。

私の訪問リハ時代の経験です。最期まで本人の好きなプリンを食べられていた利用者さんや、娘さんの介助でトロミ食を食べられていた利用者さん、コンビニに一緒に行って好きなコーヒー(自宅に帰ってトロミは付けた)とポップコーンを買って帰った利用者さん…などたくさんの笑顔を覚えています。ASAPは、本人や家族が希望されるのであれば、リスク管理を行いながら経口摂取は続けてほしい、経口摂取についてチームで考えてほしいという願いも込めています。

論文は「産業医科大学雑誌 摂食 評価法」で検索していただければ、2019年41巻 NO.3で全文読むことが可能です。また、日本語版マニュアルとスコアシートは、「戸畑共立病院HP → 部署紹介 → リハビリテーション科 → 論文(やや上段)」からダウンロードできます。

ASAPはどんな場面でも使用できます。摂食嚥下障害が気になりだした方へ医院・歯科医院で使用して頂くのもよいと思います。このASAPを1つの参考として、みなさんの身近におられる摂食嚥下障害の方のQOLの向上に繋がればと願っております。





引用:「高齢者肺炎患者の簡易的な摂食嚥下機能評価法の検討(英文)」産業医科大学雑誌41巻3号:283-294, 2019



関連タグ
言語聴覚士 摂食嚥下
PT-OT-ST.NET:LINE公式アカウント「最新ニュースをLINEでお届け」友達追加

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

もっと見る 省略する
ページ上部へ戻る