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2022.09.06

「理学療法士等の活用は有用、国は支援を拡充すべき」転倒防止・腰痛予防対策の在り方検討会

厚生労働省の「転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会」にて、労働者の健康づくりに「労働災害防止のため事業場において理学療法士等も活用して労働者の身体機能の維持改善を図ることは有用であり、国はそのための支援体制を拡充すべき。」と明記した、中間整理(案)が示された。

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過去、労働災害の種別では建設業、製造業が多くの割合を占めていたが、近年は第三次産業における労働災害が増加傾向にあり、トレンドの変化が認められている。特に小売業や介護施設等を中心に「転倒」や「腰痛」の発生が顕著であり、その対策の見直しが喫緊の課題となっている。

「転倒」や「動作の反動・無理な動作」といった「行動災害」については、その発生メカニズムが労働者の個人要因の影響によるものも大きいため、従来型の災害と同様の対策では、十分な成果を挙げることができていないことが指摘されてきた。

そのような背景から、同検討会では転倒防止・腰痛予防対策の在り方及び具体的な対策の方針について議論を実施。規制の見直しも念頭に置いた検討が重ねられてきた。

 

労働災害(転倒災害・腰痛災害)の発生状況と課題

業種別死傷災害(休業4日以上の労働災害)の推移

業種別でみると製造業、建設業などのいわゆる第二次産業の労働災害は減少傾向になっている。一方、小売業や介護事業等の社会福祉施設の労働災害は増加傾向にある。

これについて、同検討会は「人手不足により業務多忙が常態化していること、顧客や利用者への対応が最優先とされる慣習があること等から、労働者への雇入時教育等の安全衛生教育が適切に実施されているとはいえない実態がある。」と指摘。

中間整理(案)では、事業者や労働者の意識改革を図り、取組の動機付けとなるように動画やアプリ等の教育ツールを提供すること、労災保険の情報を基に「見える化」に取り組むこと、ナッジの活用など行動経済学の手法を取り込んで支援をする必要がある等と記載された。

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「挟まれた」「墜落」などの設備リスクから、行動リスクへ

「事故の型」については、作業環境の安全対策が進んだこと等により「墜落」「はさまれ」等の設備リスクに伴う発生する労働災害は減少傾向にある。一方、「転倒」「動作の反動・無理な動作」から発生する「行動災害」については増加傾向にあり、トレンドの変化が認められている。

また、働き手の高齢化等の影響をうけて、骨折や後遺症を伴う重大な事故が散見されると報告されている。

労働災害で発生する「転倒」は、女性の場合、60代後半は20代の約16倍の発生率となっている。また、労働災害で発生した「転倒」では、骨折などにより約6割が休業1ヶ月以上を要していることが調査にて報告されており、転倒予防対策などのリスクマネジメントは安定した経営を行う上で重要といえる。

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労働災害防止に、高まる理学療法士への期待

労働者が安全・安心に働ける環境を整え、転倒・腰痛等の労働災害の防止に務めることは事業者の責務といえる。

高齢者の就業者人口が年々増加している我が国において、加齢による筋力低下や認知機能の低下、焦りや注意力の欠如など個々の労働者の心身の状況をどのようにサポートし、高年齢者の働き方と活躍のための環境を整備するかが社会的な重要課題となっている。

労働者ひとり一人が心身の健康の維持・向上に努め、健康に働くことのできる職場づくりへの取り組みとして、
理学療法士等の介入が期待されている。


引用・参考:
転倒防止・腰痛予防対策の在り方に関する検討会
第1回(開催:2022年5月13日):今後の具体的な転倒防止・腰痛予防対策の在り方について 他
第2回(開催:2022年6月13日):第1回検討会を踏まえた論点について 他
第3回(開催:2022年5月13日):第1回検討会を踏まえた論点(残り)について 他
第4回(開催:2022年5月13日):中間整理(案)について 他

関連タグ
転倒予防 腰痛 厚生労働省 健康経営 理学療法士
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