臨床でも身近になってきたロボット歩行リハビリテーションですが、まだ活用するイメージが湧きにくいという声もよく聞きます。本稿では、3本のシステマティックレビューからその効果をまとめたいと思います。(著者:リハビリテーション医療DX研究会 幹事 桑原渉)
はじめに
令和2年の診療報酬改定にて「
運動量増加機器加算」が新設されてから、私たちの臨床にもロボットリハビリテーションがより身近になってきました。
また、脳卒中治療ガイドライン2021においても、「歩行機能の改善には頻回な歩行練習が必要である」ということが「エビデンスレベル:高,推奨度:A」で示されており、臨床家にとってロボット歩行リハビリテーションに理解を深めることは必須になってきています。
脳卒中後の歩行機能の改善には、各レベルに応じた出来る限りのdoseの確保が重要であることは既にコンセンサスが得られている知見と言えます。そのdoseの確保のために近年注目されている方法が、「ロボット歩行トレーニング」と捉えてよいと思います。
ロボット歩行トレーニングは、これまで歩行練習を実施できなかったような運動機能レベルの患者にも免荷装置の使用により適用可能となったり、これまで徒手で実施してきた運動アシストをロボットで実施できることによりトレーニング時間の延長を図ることができたりすることで、これまでのリハビリテーションよりもdoseの確保が可能となります。
前述のリハビリテーション総合計画評価料における運動量増加機器加算として、月1回に限り150点を所定点数に加算することできます。さらに、指定難病の患者に対してのロボット歩行トレーニングは、「歩行運動処置(ロボットスーツによるもの)」として、定められた基準に則って実施すれば、1日につき1,100点が算定することができます。
このように、治療効果および医療経済的に大きな可能性を有していると思われるロボット歩行トレーニングですが、まだまだリハビリテーション現場に普及しているとは言えない状況です。
そこで、今回、これまでに報告されているロボット歩行トレーニングに関する臨床的エビデンスを、過去に報告されたシステマティックレビューを基にまとめます。
システマティックレビューから見たロボット歩行トレーニングの臨床的エビデンス
脊髄損傷患者を対象としロボット歩行トレーニングの有効性を検証したシステマティックレビューにおいて、通常の歩行トレーニングと比較し、歩行自立度および持久力が、より大きな改善を認めたことが報告されています
2 。しかし、歩行速度については、通常の歩行トレーニングと同等の結果であったことも注目すべき結果です。
脳卒中患者を対象としロボット歩行トレーニングの有効性を検証したシステマティックレビューにおいては、理学療法と組み合わせることにより、自立歩行確率を向上させ、平均歩行速度を増加させたことが報告されています
3 。
また、この論文では、介入開始時点で歩行できないような重度麻痺を有する集団の方が、トレーニング効果が高い可能性があることが示されており、適応レベルについても言及されています。
さらに、本年、本邦から報告されたシステマティックレビューでは、ロボット歩行トレーニングに非侵襲的脳刺激を重畳することによる有効性が調べられました
4 。
メタアナリシスの結果、非侵襲的脳刺激の併用は、ロボット歩行トレーニングのみを実施することよりも、下肢身体機能に対する効果は有意に高かったが、歩行速度に対する効果については有意な差はありませんでした。更にこの効果は、非侵襲的脳刺激の種類によっても差がありました。
今後、ロボット歩行トレーニングに非侵襲的脳刺激を組み合わせるのが一般的になってくるかもしれません。
おわりに
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【引用・参考】
1.脳卒中治療ガイドライン2021 (協和企画HP)(Amazon)
2.Cheung EYY, Ng TKW, Yu KKK, Kwan RLC, Cheing GLY. Robot-Assisted Training for People With Spinal Cord Injury: A Meta-Analysis. Arch Phys Med Rehabil. Nov 2017;98(11):2320-2331.e12. doi:10.1016/j.apmr.2017.05.015
3.Mehrholz J, Thomas S, Kugler J, Pohl M, Elsner B. Electromechanical-assisted training for walking after stroke. Cochrane Database Syst Rev.October 2020;5(5):CD006185. doi:https://doi.org/10.1002/14651858.CD006185.pub5
4.Kuwahara W, Sasaki S, Yamamoto R, Kawakami M, Kaneko F. The effects of robot-assisted gait training combined with non-invasive brain stimulation on lower limb function in patients with stroke and spinal cord injury: A systematic review and meta-analysis. Front Hum Neurosci. Aug 2022;16:969036. doi: 10.3389/fnhum.2022.969036