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2023.08.08

障がい当事者と医療従事者 101名がディズニーランドで大集合 〜行けるところより行きたいところへ〜

病院や介護施設を退院した後、障がい当事者の方々がどのような生活を送っているのか。一度は気になったことがあるのではないでしょうか。しかし、その現状を知る機会は多くはありません。

医療従事者と障がい当事者の垣根を超えて、「行けるところ」ではなく「行きたいところ」にお出かけするプロジェクトを一般社団法人tsunagariのAOiプロジェクトが実現しました。今回、総勢101名が集まったディズニーランド企画に参加された障がい当事者、理学療法士、看護師にお話を伺いました。


行けるところより、行きたいところへ。


吾妻勇吹氏(AOi代表/理学療法士)
AOiプロジェクトは、「障がいの有無にとらわれず、1歩踏み出す機会を共創する」をミッションに掲げ、活動する団体です。障がい当事者だけでは不安であるテーマパークに、医療従事者と共に行くことで不可能を可能にすることができるのではと考え、この企画を立ち上げました。

旅行支援の経験がある医療従事者を中心に第1回目を開催(2022年)し、現在では全国から様々な障がいを抱える当事者と医療従事者が集まっています。

この企画を通して、障がいを抱えてから初めてテーマパークに行けた方や、引きこもりがちだった生活から一歩踏み出し、日頃から外出ができるようになった方もいます。私たち医療従事者は、障がい当事者の日常生活動作(ADL)だけでなく生活の質(QOL)にも視点を置いて、生きることを楽しむ手段を広げていきたいと考えています。



参加者の声


PT-OT-ST.NET:よろしくお願いします。まずは参加した感想を教えてください。

大川さん(移動手段:車椅子)
これまで4回の企画がありましたが、初めて参加した時は本当に感動的で、自分自身ができないと思っていたことが覆った大きな経験でした。

車椅子ではディズニーランドを楽しめないだろうな、ジェットコースターに乗るにしても移乗が難しいだろうな、そもそもテーマパークには車椅子の人はいないだろうと思っていました。友達と行くにしても介助をお願いしたら迷惑をかけてしまうので、そこまでしてディズニーランドに行きたいと思いませんでした。

これまでの生活は引き籠りがちで、なんとなく家でゆっくり過ごしていましたが、AOiの企画に参加したことにより色んなところへ外出するようになり、人生が変わったと言っても過言ではない経験だったように思います。2回目からは、そうした体験を他の障がい当事者の人たちにも伝えていきたいと思うようになりました。


宮崎さん(移動手段:長距離は車椅子、日常生活はロフストランド杖)
今までも出かけることは大好きでよく外出はしていましたが、友達には気を遣ってしまったり行けるところに限りがありました。AOiプロジェクトは、医療従事者の方と一緒に行けるのでとても安心感があり、今まで乗りたくても乗れなかったアトラクションにも乗れて、ディズニーランドを心から楽しめたことで自分の世界が広がったように感じました。

福井県から東京までは初めて1人で飛行機に乗り、空港からはSNSで知り合っていた看護師さんが迎えに来てくださり、一緒に行くことができました。飛行機の中ではドキドキワクワクの方が強くて、怖さは全くなかったです。

AOiの企画に参加したいという夢を叶えてくれた看護師さんを初め、色んな方のサポートがあり参加出来たので感謝の気持ちでいっぱいです。笑顔が溢れてる時間を大好きな仲間と過ごせて幸せでした。これからもここで繋がったご縁を大切にしていきたいです。


ー 初対面の方とテーマパークに行くことに戸惑いはありませんでしたか?


大川さん:
正直、壁ができるんだろうなあとは考えていました。医療従事者の苦手なところは、身体状況から心理的なところまで「観察」を前提としたコミュニケーションをされることです。リハビリをしている時もそれが一番きつかったので、ディズニーランドでも全身を隈なく観察されるのだろうと思っていたのです。実際にはそうした感覚もなく、友達のように過ごせたことが気兼ねなく楽しめた理由の一つでもあります。

宮崎さん:
戸惑いではありませんが、自分の障がいのことを全部伝えないといけないことが多かったので今回も説明が必要だと思っていました。ですが全部を伝えなくても、一緒に過ごす中で気づいていただいたり、自然と自分のことを伝えられたのでとても話しやすかったのが印象的でした。もっと早くこの活動に出会いたかったなと思います。



ー 医療従事者のみなさんは、どのような理由から参加しようと思われたのでしょうか?


山下さん(理学療法士):
参加しようと思ったのは、元々ディズニーランドのキャストさんと触れ合うことが好きで、いつか自分の好きなディズニーと医療分野が関わることをしてみたいと漠然と思っていたことがきっかけです。AOiプロジェクト当日までは理学療法士として移乗のお手伝いやカメラマン担当としての役割で行く認識でした。ですが当日ははただただ楽しんでいました。(笑)今までは、「医療従事者だからお手伝いをする」という固定概念がありましたが、実際はただその場を楽しむ友達同士であり、一度も役割を意識したり「手伝わないと」という感覚は芽生えませんでした。言葉では表しきれないですが、立場を取り除いて人として愛を持って接し合う関わりがこの場で生まれていた事にとても感動しました。

下田さん(看護師):
病院で働いていた時は、支援する人(医療従事者)と支援される人(障がい当事者)という固定概念があり、「助けてあげなきゃ」と思っている自分がいました。その当時から、病院の中でしか関われないことに窮屈さを感じ、もっといろんなシーンで障がい当事者の方と交流したいと思い車椅子ラグビーのスタッフを始めたことがそれまでの概念を覆す経験でした。AOiの企画に参加したのは、私自身が当時の感覚を再認識し、新たな出会いや経験の機会になるのでないかと思ったからです。

車椅子ラグビーはある程度動ける状態の方が対象でしたが、AOiの企画には障がいの度合いも様々な方が参加されるため、自分にできることがあるのか正直不安もありました。ですが、いざ参加してみると職種も専門の領域も様々な医療従事者がいて、移乗動作のサポートや車椅子の操作、食事の運びや言語的なコミュニケーションのサポートなどそれぞれができることを担い、自然と不安なく楽しむことができました。

参加者の中には、「大きな一歩」としてこの企画を踏み出して来られた方が多くいたことから、テーマパークに行くことが「当たり前じゃない」ということを再確認できましたし、そうして一歩を踏み出す機会に一緒にいれたことが本当に幸せなことだなと感じました。




ー この企画は誰でも参加できるものなのでしょうか。


下田さん:
私は、医療従事者なら誰しもが立場の垣根を超えて人の役に立ちたいと思う心を持っていると信じています。病院外での活動は何か特別なものだと思われたり、「休みの日まで活動してすごいね」と言われたり、自分には向いていないと思われる方も中にはいます。私はそんなことはないと思っていますし、純粋に好きだから、楽しいから活動に参加しています。経験してみることで見える世界が変わる。そんなきっかけは日常に溢れていると思います。こんな活動がもっともっと身近な活動になるといいなと願っています。

PT-OT-ST.NET:
みなさん素敵なお話をありがとうございました。

印象的だったのは、当たり前になっている「固定概念」があるということです。医療従事者と患者という関わりはもちろん大切な立場ではあるものの、生活の中ではみな同じ人間であると同時に、助け合うのもお互い様なのだと思います。

医療従事者である前に、1人の人として大切なことに気づかせていただきました。仕事の中でも「障がい」と向き合うのではなく、1人の人として向き合うことを私たち医療従事者は忘れてはならないですね。

本日はありがとうございました。



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