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2014.06.26
日本老年医学会は高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)を「フレイル(Frailty)」と呼ぶことを5月に提唱した。また、医療介護に携わる専門職に「フレイル」の理解と予防に取り組むことを呼びかけている。(参照:フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント)
日本は介護および介護予防サービスに要する費用は8兆円を超えており、少子高齢化が大きな課題となっている。高齢者が要介護状態に陥る過程には意図しない衰弱、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下など健康障害を起こしやすい脆弱な状態(中段階的な段階)を経ることが多く、これらの状態を日本老年医学会は「フレイル」として提唱している。一般的に高齢者の虚弱状態を加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態と理解されることも多いが、このフレイル(Frailty)の概念には、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれている。フレイル(Frailty)に陥った高齢者を早期に発見し、適切に介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待されていることから「要介護状態に陥るのを防げる効果がある」と対策を呼びかけている。
サルコペニアとフレイル(虚弱)の違いは?
両者とも加齢に伴う機能低下を意味している。サルコペニアが筋肉量減少を主体として筋力,身体機能の低下を主要因として扱うのに対して,フレイル(虚弱)には移動能力,筋力,バランス,運動処理能力,認知機能,栄養状態,持久力,日常生活の活動性,疲労感など広範な要素が含まれている点が大きな違い。(参考:サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A)
フレイルの診断基準は?
健康寿命を実現させるために注目されている「フレイル」でもあるが、定義や診断基準については世界的にも多くの研究者により現在も議論が行われている状況である。学術的にはFriedらによる評価指標が主流となっているが、日本では具体的な診断基準の統一はまだされておらず、今後の診断基準の整理が必要とされる。
【フレイルの評価表】
1. 体重が減少
2. 歩行速度が低下
3. 握力が低下
4. 疲れやすい
5. 身体の活動レベルが低下
これら5つのうち、3つが当てはまるとフレイルとみなされます。※ 日本では、記憶力の低下なども考慮した評価表を検討中
関連サイト
・日本老年医学会:フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント
・筋力・活力の老化は「フレイル」 学会が命名、予防提言:朝日新聞デジタル
・高齢者は「フレイル」に注意 放置すると要介護に :日本経済新聞
・サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサスの監訳とQ&A
・虚弱(フレイル)の評価を診療の中に 長寿医療研究センター病院レター 第49号
・Frailtyに関する国際学会:ICFSR International Conference on Frailty & Sarcopenia Research - April, 2015 Boston, MA, USA
関連書籍紹介
Monthly Book Medical Rehabilitation(メディカルリハビリテーション) 170
高齢者のフレイル(虚弱)とリハビリテーション
近藤和泉/編 定価4,212円(税込み)
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