厚生労働省は、人口減少と超高齢化が進行する2040年を見据え、新たな地域医療構想の策定ガイドラインについて「地域医療構想及び医療計画等に関する検討会」で集中的な議論を実施しています。
この新構想において、リハビリテーション機能は、医療機関の役割分担を明確にし、高齢者医療を「治し支える医療」へと転換するための重要な要素として位置づけられています。
検討会における資料と議事録に基づき、リハビリテーション機能のあり方、医療・介護連携、そして二次医療圏の再編にまつわる議論の主要なポイントを整理し、以下に解説します。
1.新たな医療機関機能分類におけるリハビリテーションの位置づけ
新たな地域医療構想では、2040年に向けた「治し支える医療」を持続可能にするため、医療機関の役割を4つの機能に再分類しています。
これまで重複や非効率性が課題であった慢性期医療と介護の連携強化を目指しており、リハビリテーション機能は、その連携の中核として、以下の通り4つの機能すべてに関わります。
※今回の議論では「医療機関の機能」と「病床の機能」という、性格の異なる整理が用いられている点に注意が必要です。
「医療機関機能」は、病院全体として地域の中でどのような役割を担うかを示す分類であり、「病床機能」は、個々の病床がどの段階の患者を受け入れるかを整理する枠組みになります。
(1)集中的な回復期リハビリは「専門等機能」
集中的な回復期リハビリテーションの提供は、「専門等機能」の一つとして明確に位置づけられ、「集中的なリハビリテーション」の提供として整理されています。
「専門等機能」には、集中的な回復期リハビリテーションのほか、特定の診療科に特化した手術等の提供、高齢者等の中長期にわたる入院医療機能、有床診療所の担う地域に根ざした診療機能などが含まれます。
なお、病床の機能区分においては、高齢者増加に伴い病床の不足を鑑みて、従来の「回復期機能」が見直され、新たに「包括期機能」として位置づけられています。
脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の急性期を経過した患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的とした集中的なリハビリテーションを提供する機能は、この「包括期機能」の中に含まれます。
本検討会の第5、6回では、「回復期リハビリテーション病棟は、脳血管疾患の割合が減少し、整形外科疾患の割合が上昇している。また、同じ整形外科疾患であっても地域包括ケア病棟と比較して回復期リハ病棟の方が平均在院日数が長い」という実態が共有され、あり方が議論されてきました。
この状況を踏まえて、包括期機能について下記を改革モデルとして組み込むこととしてはどうかという意見が示されています。
・急性期機能の病床にかわって高齢者等の急性期患者を受け入れること
・回復期リハビリテーションの効率的な提供
・医療機関の連携・再編・集約化に向けた取組による効率化 等
(2)急性期からの橋渡しを担う「高齢者救急・地域急性期機能」
高齢者医療においては、多疾病併存状態(マルチモビディティ)患者へのリハビリテーションを含む、「治し支える医療」の観点が、あらゆる段階で重要であるとされています。
この「治し支える医療」の具体的な提供体制の一つが、高齢者救急・地域急性期機能です。
この機能には、医療機関に対し、高齢者等の救急搬送を受け入れるとともに、入院早期からのリハビリテーションの提供と退院調整を行い、早期の退院につなげることが求められています。
これらの機能の確保状況を協議するための参考データとして、包括期の病床数(地域包括ケア病棟入院料や地域包括医療病棟の届出状況など)が確認されています。
人口の少ないエリアでは、有床診療所が地域の医療需要を踏まえ柔軟に医療を提供している事例もあります。今回の議論の中では、その役割が「地域密着型医療の包括期機能」を担う病棟と表現されています。
(3)慢性期における医療・介護連携の課題
リハビリテーション機能の役割を病院機能ごとに明確化する背景には、介護保険施設、療養病床の一部(特に医療区分1相当分)、在宅医療といった慢性期のサービス間で患者像が重複しており、地域全体として効率的な提供体制の構築を阻む以下の課題がありました。
データ把握の困難さ
病院の病床数や介護施設の定員数といった供給量は把握できるものの、在宅医療が具体的に「どういった施設等で、どれぐらい提供されているか」という定量的な提供実態の把握が困難であるという課題がある。
協議の場の不徹底
医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を確保するための協議の場が設けられているにもかかわらず、一部の地域では協議が行われていない実態がある。その理由には、「調整・協議を行う必要があることを把握していなかった」という事例も含まれている。
新たな構想では、これらの課題を解決するため、構想区域単位等の範囲で、都道府県、市町村、医療関係者、介護関係者等が複数のデータ(療養病床の病床数、介護保険施設の定員数、在宅医療の提供状況など)を統合して検討し、協議を行うことが求められています。
第5回検討会では、「入院の需要は拡大していくが、地域によって異なり、入院患者の推移は必ずしも予測通りではない」ことも示されています。
必要病床数の算定に当たっては、医療技術の進歩や医療提供の効率化の取組など、複数の要因から受療率は低下してきていると考えられています。
それらを踏まえ、「改革モデルでは受療率の低下を組み込んで計算することとしてはどうか」という意見が示されています。
また第6回検討会では、在宅医療の位置づけも整理され、これらが生活期における自立支援・重度化予防を担う中核として明確化されています。
今後、「新たな地域医療構想」では、医療計画と介護保険計画を連動させ、在宅医療の提供体制の質と量の確保を図ることが今後の重要課題として示されています。
2.地域再編の焦点:「二次医療圏」とリハビリテーション専門職の広域的な貢献
医療提供体制の確保を図る一体の区域として、二次医療圏が構想区域の原則的な単位として設定されています。
この区域は、基準病床数や必要病床数を設定する単位として制度運用されています。
今回、新たな地域医療構想では、人口構造の変化に伴う区域の見直しが議論の焦点となっています。
(1)小規模区域の集約化とアクセス確保
現在の人口が概ね30万人までの小規模な地域については、2040年以降も含め将来にわたって急性期医療を維持できるよう、1か所への集約に向けて取り組んでいくことが重要である、という意見が示されています。
区域の広域化や集約化が進むと、患者の医療へのアクセスを維持する観点が重要になります。このアクセスを維持するための方策として、巡回車の整備や、看護師が患者の受診を支援する「D to P with N」を含むオンライン診療の活用などが挙げられています。
第5、6回検討会では、急性期機能や病床数の適正配置を踏まえ、隣接区域・都道府県間の流入出も考慮して見直す必要性も議論されました。
今後、病床の増床判断は広域的な病床状況を踏まえて協議し、将来に必要な医療資源(麻酔科医など)の確保も次期医療計画で検討するとしています。
(2)大学病院とリハビリテーション専門職の派遣
広域な観点での医療提供体制維持のため、大学病院の本院は、高度な医療提供だけでなく、医師派遣機能など、地域医療に対するさらなる貢献が求められています。
この点について、第5回検討会では、大学病院の地域への医療人材貢献には、医師だけでなく、歯科医師、薬剤師、看護師、リハビリテーションセラピストなども含めて検討してもよいのではないかという提案がされました。
3.医療・介護連携における老健施設のリハビリ機能の再評価
新たな地域医療構想では、高齢化に伴う医療・介護の複合ニーズに対応するため、地域包括ケアシステムの深化が基本方針とされています。
リハビリテーションは、急性期病院の負担軽減と在宅生活の継続を支える上で欠かせない存在といえます。
検討会に出席した委員会からは、新たな地域医療構想の取りまとめにおいて、「入院での早期のリハビリテーションや集中的なリハビリテーションが効果的な場合は入院でのリハビリテーションを提供しつつ、それ以外の場合には、介護老人保健施設等の他施設とも連携しながら、適切な場でリハビリテーションを提供することが求められる」と意見が示されました。
その上で、今後のワーキンググループにおいて、急性期病棟からのトリアージ先として老健施設を明確に位置づけるよう検討すべきだと要望しています。
4.ガイドライン構成と具体的なスケジュール
新たな地域医療構想のガイドラインは、前回の枠組みを踏まえつつ、入院だけでなく外来・在宅・介護との連携や医療従事者確保などを含めて内容を広げる方針です。
地域医療構想調整会議については、議題に応じて医療・介護・市町村・保険者などが参加できるよう、柔軟で効率的な運営を行うことが求められています。
スケジュールとして、2025年には国がガイドラインを示し、都道府県は区域の見直しなど着手可能な項目から検討を開始しました。
2026年には必要病床数の推計などの議論を進め、2027年以降は医療機能分化や連携の協議を本格化させる見通しです。
新たな医療構想の実施に関しては、2040年を見据え、状況の変化を踏まえながら継続的に点検・見直しを行っていくことが想定されています。
引用・参考
■ 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会(厚生労働省HP)
◯ 新たな地域医療構想策定ガイドラインについて(PDF)
・区域・医療機関機能、医療と介護の連携、構想策定のあり方
・構想の策定・取組の進め方、病床等の医療需要の見込み