厚生労働省は「令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業」について、特設ページを公開しました。
このページでは、交付ルールや申請に使う書類の様式が確認できるようになっており、政府が掲げる「物価高騰を上回る賃上げ」を医療現場で実現するための具体的な進め方が示されています。
本施策は「申請しなければ支給されない仕組み」であるため、日本理学療法士協会は申請に係る要件などの確認と、理学療法士職員が賃上げ対象に含まれるよう、経営層等に積極的な働きかけを行うことを促し、部門管理者宛へ周知しています。
病院を対象とした「病床数に応じた賃上げ・物価高騰支援」
入院施設を持つ病院に対しては、スタッフの給与アップの原資となる給付金と、経営を支えるための給付金の両面から支援が行われます。
① 病院賃上げ支援事業
病院が従事者の処遇改善を行うための経費として支給される給付金です。
● 対象: 令和8年2月1日時点で「ベースアップ評価料」を届け出ている病院
● 支給額: 使用許可病床数(令和7年8月1日時点)×84,000円
● 留意点: 病院はこの給付金を必ず賃金改善に充て、その結果を厚生労働省に報告する義務があります。
② 病院物価支援事業
医療機関が物価高騰に対応し、経営状態を改善して地域医療を守るための給付金です。
● 対象:原則、すべての病院
● 支給額:【基礎額】病床数(令和7年8月1日時点)×111,000円+【加算額】500万〜2億円
※救急受入や手術件数などの実績に応じて加算されます。
診療所・訪問看護等を対象とした「施設単位の賃上げ・物価高騰支援」
クリニックや訪問看護ステーションなどの経営体に対しても、施設の形態に応じた支援の枠組みが用意されています。
③ 診療所等賃上げ支援事業
診療所や訪問看護ステーションが賃上げを行うための経費を補助する事業です。
● 対象: 令和8年3月1日時点で「ベースアップ評価料」を届け出ている施設など
● 支給額(1施設あたり)
訪問看護ステーション:228,000円
無床診療所(医科・歯科):1施設 150,000円
有床診療所(医科・歯科):病床数 (令和7年8月1日時点)×72,000円
● 留意点: 給付金を賃金改善に充て、都道府県へ結果を報告する必要があります。
④ 診療所等物価支援事業
物価高騰の影響を受けるなかで、診療所や薬局の経営をサポートするための給付金です。
● 対象: 原則、すべての医療機関等
● 支給額(1施設あたり)
無床診療所:170,000円
有床診療所:病床数(令和7年8月1日時点)×13,000円(13床以下は一律17万円)
リハビリテーション職のベースアップ率は全職種で最低
今回の賃上げ支援事業において重要なのが、支援を受ける条件として「ベースアップ評価料」の届出が必要になるという点です。
とはいえ、リハビリテーション職を取り巻く現状を見ると、スムーズな処遇改善にはまだ課題があることが分かります。令和7年度の調査によると、リハビリテーション専門職のベースアップ率はわずか0.77%に留まっていました。これは全職種の中で最も低い数値です。
この調査では、事業者側から「現行の報酬では十分な原資が確保できない」「物価高騰で賃上げの余力がない」といった声が圧倒的多数を占めていたことも判明しています。
こうした現場の厳しい実態がデータとして示されるなかで、国会議員で構成される「
リハビリテーションを考える議員連盟」では、現場の賃金水準の低さがもたらす人材流出の危機感が強く共有され、特に処遇改善については「掛け声だけではなく実行性のある政策」を求める活発な議論が展開されてきました。
同議連総会では、出席した国会議員から「賃金上昇と物価高騰に対応した大幅なプラス改定」を要望する声が挙がり、特に補正予算による賃上げ財源が「現場で働くリハ専門職の手に確実に届くような仕組み」を構築するよう、厚生労働省に強く要請がされていました。
リハビリテーション専門職の処遇改善にどうつながるのか
今回の給付金は、国から施設へ支払われた後、職員の給与や職場環境に還元されることを目的とした仕組みになっています。
● 基本給の引き上げや諸手当の原資になる
今回の給付金がその原資となり、月々の固定給アップなどに活用されやすくなる。
● 適切に給与還元されるための仕組みがある
報告義務があるため、受け取った資金が適切にリハビリテーション職の給与へ反映されることが促される。
● 物価高騰の影響をカバーできる
「物価高騰で賃上げの余裕がない」という課題に対し、国が別枠で支援することで、物価高の影響を気にせず賃上げが進められるよう配慮される。
このように、今回の支援事業は医療現場を支えるスタッフの処遇改善を具体的に進めるためのものです。
一方で、この施策は「申請しなければ支給されない仕組み」であることに留意が必要です。
日本理学療法士協会は、補正予算に基づく療法士の賃上げに対する支援の申請について、同協会ホームページで以下の周知を進めています。
さて、令和7年度補正予算(2025 年 12 月 16 日閣議決定)において、医療・介護等の賃上げ・物価高騰対策として打ち出された【医療・介護等支援パッケージ】に約 1.36 兆円が盛り込まれました。
本会の活動もあり、3療法士については、1人当たり6万円の賃上げを十分実現し得る規模の予算が確保されたと考えています。具体的には、理学療法士を含む医療・介護・障害福祉の従事者に対する賃上げ施策として、医療従事者はプラス3%、介護・障害福祉従事者は月額1万円の上乗せを目指した6か月分(令和7年 12 月~令和8年5月)の支援が実施されます。
この支援は、 「療法士の処遇改善」・「人材確保・定着」・「現場のモチベーション向上」といった観点において、本会会員にとって非常に重要な措置・制度です。今後、厚生労働省のホームページ等で具体的な手続きに関する情報が公表される見込みです。
管理者の皆様におかれましては、所属施設の支給方式や要件を確認のうえ、理学療法士職員が賃上げ対象に含まれるよう、経営層等に積極的な働きかけをいただきますようお願い申し上げます。
特に以下の点について、ご協力をお願いいたします。
・自施設・自部門における対象療法士人数の確認
・申請を行った場合の支給総額の把握
・経営層に対し、本事業の概要および申請の意義を共有・提案
引用:日本理学療法士協会.国の補正予算に基づく療法士の賃上げに対する支援の申請について(周知・お願い)【第1報】
国によるこの新しい仕組みが、日々のリハビリテーション業務に対する適切な評価や、実際の給与への反映につながることが期待されます。
詳細な申請手順や最新情報は、厚生労働省の特設サイトをご確認ください。
引用・参考
■ 令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について(厚生労働省HP)
■ 国の補正予算に基づく療法士の賃上げに対する支援の申請について(周知・お願い)【第1報】(日本理学療法士協会HP)
■ リハ専門職の賃上げ、全職種で「最低」を記録—令和7年度ベースアップ率は0.77%(PT-OT-ST.NET)
■ 【速報】リハ議連 第12回総会「人を支える人が、報われる社会へ」— 待ったなしの5大決議(PT-OT-ST.NET)