5月14日、都内で「リハビリテーションを考える議員連盟(リハ議連)」第11回総会が開催され、与党の国会議員が出席する中、リハビリテーション専門職3団体(日本理学療法士協会・日本作業療法士協会・日本言語聴覚士協会)から政策要望が提出された。
会長の鈴木俊一議員は冒頭、「リハビリテーション専門職は社会的に不可欠な存在でありながら、処遇面の改善が遅れている。訪問サービスの基盤整備、書類業務の負担軽減、生涯教育への支援など、本来の専門性を十分に発揮できる環境の整備が必要であり、しっかりと議論していきたい」と挨拶した。
また、鈴木会長は「リハビリテーションが社会的に重要な位置づけとなっているなか、田中まさし議員は大変活躍されている」と、リハ議連の事務局長を務める田中まさし参議院議員(理学療法士)の活動にも言及し、全国のさらなる支援の継続を呼びかけた。
リハ専門職三団体、現場の実態をデータで訴え
今回の総会では、リハビリテーション専門職3団体がそれぞれの立場から、現場の課題と政策提言を具体的なデータに基づいて要望を提出した。
<リハ3団体からの要望>・すべての3療法士に対するさらなる賃上げの確実な実現
・訪問サービス提供体制の再構築と基盤強化
・資格取得後の研修・生涯学習の制度的支援
・文書・記録業務負担の大幅削減とタスクシフト・シェアの推進
・リハビリテーション制作の総合的推進体制の確立
― 処遇改善・訪問リハ強化・制度改革の必要性を強調 ―
賃金水準の低さと処遇については、不公平さが強く指摘された。医療・介護・障害福祉の各分野において、月収30万円未満の職員が7割以上を占めるという調査結果が示され、特に診療報酬以外の分野では3療法士の職名が明記されておらず、賃上げの恩恵が行き届かない実態が報告された。また、経済的理由で協会を退会するケースも多く、専門性維持のための研修費用も大きな負担となっていることを提起した。
訪問サービス提供体制の再構築と基盤強化については、退院直後に訪問リハビリテーションを実施した場合、医療費を半年間で1人当たり約107万円削減できるというデータを提示。社会保障費の削減、地域間の格差解消に向けて、訪問リハビリテーション事業所の設置要件緩和や、地域の実情に寄り添った医師の柔軟な配置の必要性を訴えた。
研修制度の制度化と女性のキャリア形成支援も大きな論点となった。リハ3団体は、卒後の継続学習が任意で自己負担も大きい中、研修機会を確保できずに専門性を十分に発揮できないケースがあることを指摘。加えて、女性が多い職種であるにもかかわらず、出産・育児等で研修や学会への参加が困難となり、キャリア形成の阻害要因になっている実態について報告した。
また、過剰な文書業務と業務効率の低下が離職の一因であることも強調された。1日平均で3時間以上を書類業務に費やし、患者と向き合う時間が確保できない実態があることから、文書簡素化やタスクシフトの必要性を訴えた。
「リハビリ強化は社会の利益」議員から相次ぐ、リハビリ施策への強い期待
リハビリテーション専門職団体からの要望に対して、出席した国会議員からは強い共感と賛同の声が上がり、今後の制度改革への強い期待が示された。
田畑祐明議員(富山)は、「診療報酬や予算編成をめぐる議論では、これまで“財政目安”に縛られてきた。物価高と人手不足が深刻化する中、今こそ、この目安主義を打破すべき」と力を込めた。処遇改善や働き方改革が本質的な制度改正に結びつくよう、骨太の方針への反映を強く求めた。
中村裕之議員(北海道)は、「リハビリテーションを適切に実施することは、入院期間の短縮や社会復帰の向上など非常に重要な効果がある。そうした重要なことを行なっているリハビリ専門職の方々が20年も賃金が上がっていない、この状況はなんとかしなければいけない」と述べた。
鬼木誠議員(福岡)は、地域での活動を通じてリハ専門職と触れ合った経験を紹介し、「現場の声が政治家の原動力になる。応援の言葉は確実に力になる」と発言。「選挙で議員を送り出すことも政治参加の一つ。その後の関係づくりも含めて、現場と議会がつながっていることを実感している」と語った。
医療・福祉全体に寄与するリハビリテーション
加田裕之議員(兵庫)は、「3療法士の仕事はオーダーメイド型で、患者の特性や内面的な問題も含めて支援する高度な専門性がある」と述べ、診療報酬上での正当な評価が必要であると強調。「リハビリテーション専門職の生産性向上は医療福祉全体の質向上に寄与する」として、書類業務の削減や制度整備、研修体制の充実と適切な評価の加速を求めた。
医師出身の櫻井充議員(宮城)は、パワーリハビリや呼吸器リハの効果を具体例とともに挙げ、「リハビリには明確な改善効果がある。これを点数に反映しないのは不合理」と制度設計の再考を促した。「予防や回復の観点から、リハビリは費用対効果の高い投資である」と断言し、厚生労働省にデータに基づいた交渉力の強化を求めた。
また、中村裕之議員(北海道)は、地域医療の実態として「訪問看護ステーションの縮小傾向の中、訪問リハビリの提供体制強化は急務」と指摘。周囲の例も交えながら、「自宅で自立を支えるためには、訪問リハの継続が重要」と実感を込めて提起した。
働きやすい環境整備と制度持続へ、若手定着と将来世代への投資を
山下貴司議員(岡山)は、業務の効率化に触れ、「仮に50万人が1時間業務を短縮できれば、年間500億円のコスト削減になる」と述べ、書類業務削減の経済的インパクトを強調。「人と向き合う時間を確保することが、医療・介護の本質である」と訴えた。
小野田紀美議員(岡山)は、「国は物価高騰に伴い価格転嫁を求めながら、賃上げには消極的。これは“下請けいじめ”と同じ構造だ」と厳しく指摘。リハビリテーションを「医療費抑制につながる投資」と位置づけ、「補正予算頼みではなく、制度として持続可能な賃上げが必要」と強調した。
さらに小野田議員は、若年層の離職については「賃金だけでなく働き方への不満も大きい。今の若者は“お金”より“時間”を重視している」と述べ、書類業務の削減や働きやすい環境整備の必要性を訴えた。
決議案を全会一致で採択、骨太方針へ
総会の最後には、リハビリテーション専門職の賃上げなどを含む5項目からなる議連決議が全会一致で採択された。
最後に、田野瀬太道議員(幹事長)は「リハビリ職が生き生きと活躍することは社会全体にとっての利益。制度と評価がその実態に追いついていない」と総括。「まずは骨太の方針、そして法改正を含めた改革の実現に向けて、議連として引き続き取り組んでまいりたい」と力強く締めくくった。
引用・参考■ 小野田紀美事務所 公式Facebook