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2025.11.19

リハ専門職の賃上げ、全職種で「最低」を記録—令和7年度ベースアップ率は0.77%



骨太方針に記載された賃上げの行方は? 介護現場の処遇改善に関する緊急調査結果

全国老人保健施設協会など13団体は「介護現場の幅広い職種の賃上げ実現のための賃上げ状況調査」(令和7年8月29日~9月18日実施、回答数1,918件)を実施し、速報値を公表しました。

調査結果から、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士らリハビリテーション専門職の待遇改善が他の職種と比較して著しく遅れているという実態が明らかになりました。

令和7年度(2025年度)におけるリハビリテーション専門職の賃上げ額、賃上げ率、そしてベースアップ(ベア)の額と率の全てにおいて、調査対象となった全職種(介護職、看護職、リハビリテーション専門職、介護支援専門員、相談員、事務職)の中で最低値を記録しています。




令和7年度の賃上げ、リハ専門職は全職種の中で“最下位“

今回の調査で示された、令和7年度の正社員(全体)の平均賃上げ額は6,413円(賃上げ率2.58%)、うちベースアップ分は3,404円(ベア率1.37%)でした。

しかし、リハビリテーション専門職の令和7年度の平均賃上げ額は4,668円であり、これは全職種(6,413円)を大きく下回り、調査対象となった全ての職種の中で最も低い額となっています。賃上げ額が最も高い介護職の6,734円と比較すると、2,000円以上の差がつく結果となりました。

賃上げ率でみても、リハビリテーション専門職は1.62%に留まり、看護職の1.63% や介護支援専門員の1.70% を下回っています。特に介護職の2.71% と比較すると、その格差は顕著です。




ベースアップ率0.77%が示す構造的な課題

給与水準の底上げを示すベースアップ分に注目すると、リハビリテーション専門職の厳しい状況はさらに明確になります。

令和7年度のベア額は2,229円、ベア率は0.77% であり、これは賃上げ額・賃上げ率と同様に、全ての職種の中で最低です。

ベア率で見ると、介護職(1.42%) や事務職(1.05%) は1%台を維持しているのに対し、リハビリテーション専門職は0.77%という水準に沈んでいます。

ベースアップは給与の基礎部分を継続的に引き上げる仕組みですが、その伸びが限定的であることは、リハビリテーション専門職の長期的な所得形成において課題が残ることを示しています。




広がる全産業との「格差」と経営上の課題

介護・福祉業界全体の賃上げの勢いが鈍化している中で、リハビリテーション専門職の待遇の停滞はさらに深刻です。
介護業界全体の令和7年度の賃上げ率は2.58%と、令和6年度の2.99%から低下しており、全産業の春闘における賃上げ率(令和7年度:5.25%) との差はさらに拡大しています。

調査では、事業者側が賃上げを行う上での課題についての設問もあり、最も多く挙げられたのは「現行の報酬では十分な賃上げ額が確保できない」(93.3%)であり、次いで「物価高騰による支出の増加のため、賃上げ余力が不足している」(88.7%) が挙げられています。

これらの経営課題により、結果としてリハビリテーション専門職の賃上げにも影響が及んでいると考えられます。




質の高いリハビリテーション提供に向けた課題の明確化

今回の調査結果は、訪問リハビリテーション(調査回答事業所1.8%)や通所リハビリテーション(同2.1%)を含むリハビリテーション関連サービスに従事する専門職の処遇が、他職種と比較して伸び悩んでいる現状を示しています。

賃上げ額・ベースアップ額ともに全職種の中で最も低かった点は、リハビリテーション専門職の配置や人材確保に影響を及ぼす可能性があり、将来的なサービス提供体制を考える上で注視すべき結果といえます。

一方で、事業者側が挙げた課題として、「現行の報酬体系では十分な賃上げ原資を確保しにくい」「物価高騰により賃上げ余力が圧迫されている」など、業界全体が共通して抱える構造的な要因も浮き彫りとなりました。

こうした複合的な要因がリハビリテーション専門職の処遇改善の遅れにつながっていると考えられます。

高い専門性を必要とするリハビリテーションの質を持続的に確保するためには、人材確保や定着に向けた環境整備が求められており、今回の調査はその検討に際して重要な示唆を与えるものとなっています。

引用・参考:
【緊急!】【骨太方針2025記載】介護現場の幅広い職種の賃上げ実現のための賃上げ状況調査(速報)について(全国老人保健施設協会HP)

 調査結果(速報)

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