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2026.09.25

介護の2割負担拡大を議論 利用控えによる生活機能低下・重度化の検証を求める声



厚生労働省は9月18日、社会保障審議会介護保険部会を開き、介護サービスの利用者負担が2割となる「一定以上所得」の判断基準について議論しました。

政府は、2割負担の判断基準の見直しについて2026年度中に結論を得る方針です。会議では、現役世代の保険料負担を抑えるため、対象拡大を求める意見が示された一方、必要なサービスの利用控えを招き、生活機能の低下や重度化につながる可能性を検証すべきとの意見が相次ぎました。

今回は見直しに向けた議論のキックオフとされ、具体的な所得基準や施行時期は示されていません。




2割負担の対象拡大、過去には単身230万~260万円案

介護サービスの利用者負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得がある人は3割となります。

現在、2割負担となる「一定以上所得」の基準は、本人の合計所得金額が160万円以上で、「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯では280万円以上、2人以上世帯では世帯合計で346万円以上です。

これまでの介護保険部会では、2割負担の対象を第1号被保険者の上位約25~30%へ広げる機械的な選択肢として、単身世帯の基準を230万~260万円、夫婦世帯を296万~326万円とする案が示されてきました。

負担増への配慮措置として、新たに2割負担となる人について、当分の間、1割負担時からの増加額を月7,000円までに抑える案や、預貯金が一定額以下の場合に申請によって1割負担へ戻す案も議論されています。

いずれも過去の部会で示された選択肢であり、今回新たに提示された案ではありません。




「利用控えや重度化につながらないか」

会議では、負担増による介護サービスの利用控えと、その後の生活機能への影響を検証する必要性が繰り返し指摘されました。

民間介護事業推進委員会の山際淳委員は、単身世帯の基準を230万円まで引き下げた場合、負担増を月7,000円までに抑える措置を設けても約35万人が影響を受けるとの試算に触れました。

山際委員は、財政上の効果だけでなく、対象者が必要な介護サービスを継続して利用できるのか、利用控えや重度化につながらないかを検証する必要があると指摘。物価上昇の影響を踏まえ、年金などの所得が増えたことと、実際の生活に負担余力が生じていることは必ずしも同じではないとしました。

全国老人保健施設協会の瀬口里美委員は、資料にて示された2割・3割負担導入後のサービス利用量への影響が、いずれも導入後5カ月以内の状況である点に言及しました。

介護は長期間にわたって利用するサービスであり、利用を控えた結果、状態が悪化して要介護度が上がれば、その後に必要なサービス量が増え、本人の負担だけでなく介護給付費の増加にもつながる可能性があると説明。導入直後だけでなく、中長期的なサービス利用や要介護度の変化まで検証するよう求めました。



日本介護福祉士会の今村文典委員も、必要なサービスの利用控えが生活機能の低下や重度化を招き、かえって将来の給付増につながる可能性を指摘しました。

所得基準を検討する際には、財政効果だけでなく、どのような人がどの程度のサービスを利用し、負担の変化が生活にどのような影響を及ぼすのかという視点が必要だと述べました。


デイサービスを減らし、家族が送迎や入浴を代替

認知症の人と家族の会の和田誠委員は、認知症の親と同居する就労家族から聞いた事例を紹介しました。

その家族は、親の日中独居を避けるためデイサービスを利用していましたが、物価上昇などの経済的理由から利用回数を減らし、送迎や入浴を家族が担っている実態を伝えました。

和田委員は、こうした利用控えは本人の生活の安定を損なうだけでなく、家族の介護負担を増やし、就労継続や心身の健康、介護離職にも影響すると指摘しました。

また、単身・夫婦世帯だけでなく、未婚の子との同居や多世代世帯なども含め、家族構成や医療費、要介護度、預貯金の状況に応じた家計収支を示すよう求めました。


短期的なサービス量だけで判断できるか

今回の資料で示されたのは、2割・3割負担の導入後5カ月以内におけるサービス利用量の変化です。生活機能や要介護度、家族の介護負担などへの中長期的な影響は明らかにされていません。

厚労省は、家計収支についてもデータを更新し、今後の議論の中で提示可能な資料を示す考えを明らかにしました。

通所・訪問リハなどの利用頻度が減少すれば、運動や外出、社会参加、実生活場面での動作練習、家族支援の機会にも影響する可能性があります。

リハビリテーションの観点からも、利用者負担の見直しがサービス利用と生活機能に及ぼす中長期的な影響を、どのように検証するかが注目されます。


保険者・経済界は2026年度中の結論を求める

一方、全国健康保険協会や経済団体の委員からは、現役世代の保険料負担を抑えるため、2割負担の対象拡大を含む見直しを前へ進めるべきとの意見が示されました。

全国健康保険協会の鳥潟美夏子委員は、現役世代の保険料負担が限界を迎えているとして、対象範囲の拡大を含め、スピード感を持って制度を見直す必要があると主張しました。

経団連の岩崎一雄委員は、議論を一から始めるのではなく、これまでに示された選択肢を基に、対象拡大の方向で2026年度中に結論を得るよう求めました。

日本商工会議所の藤田英樹委員も、具体的な選択肢が示されながら結論が先送りされてきたとして、第10期介護保険事業計画の開始前までに結論を出すよう要請しました。


具体的な所得基準は今後検討

今回の会議では、2割負担の対象となる所得基準、月7,000円の負担増上限、預貯金要件、施行時期について結論は出ていません。

あわせて議論された第1号保険料については、高所得者の標準乗率の見直しや、年金額の上昇によって住民税非課税から課税へ移った際の急激な保険料上昇を緩和する方向に、複数の委員が理解を示しました。

一方、高齢者間の負担調整だけでは限界があるとして、公費を含む財源構成の検討を求める意見も示されました。



2割負担となる「一定以上所得」の判断基準については、2026年度中の結論に向け、介護保険部会で具体的な基準や配慮措置の検討が続けられます。

引用・参考
■ 第136回社会保障審議会介護保険部会(厚生労働省HP)

 ・資料1 第1号保険料の在り方について

 ・資料2 持続可能性の確保(給付と負担)について

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