理学療法士で参議院議員の小川かつみ議員は11月5日、参議院厚生労働委員会で質疑に立ち、リハビリテーション政策や訪問リハビリテーションの提供体制などについて政府の考えを質しました。
今回の質疑では、主に以下の4点が取り上げられました。
・国家戦略としてのリハビリテーション政策
・訪問看護ステーションからのリハ職の訪問
・リハ専門職が主体となる訪問リハ事業所
・産前産後の理学療法
上野賢一郎厚生労働大臣は、リハビリテーションを分野横断的に推進するため「厚生労働省が中心となって関係省庁が連携するための会議を作らせていただきたい」と答弁しました。
関係省庁が一体となって総合的なリハビリテーション政策を進める体制を作る考えを示しました。
リハビリテーション政策を「国策」に
小川議員はまず、上野厚生労働大臣にリハビリテーションの現場を視察して感じた課題を尋ねました。
上野厚生労働大臣は、5月に厚生労働省にリハビリテーション統括調整室を設置したことを受け、国内外の現場を視察してきたと説明。
慶應義塾大学病院、初台リハビリテーション病院の視察では、急性期からの早期リハビリテーションの重要性、リハビリテーション専門職の人材不足、質の向上に向けた研修制度の必要性を改めて認識したと述べました。
茨城県での視察では、急性期から生活期まで切れ目のないリハビリテーションの必要性や、子どもや障害者などリハビリテーションを必要とする人が多くいる現状を把握したと答弁しました。
また、ASEAN保健大臣会合に合わせてマレーシアのリハビリテーションセンターを視察し、日本発の技術であるHALが同国の公的社会保障制度の中で活用されている現状から、海外展開の重要性を認識したと述べました。
続けて小川議員は、リハビリテーションは「再び」の意味から事後の対応と捉えられがちだが、現在は重症化予防や合併症予防から疾病予防・障害予防まで、1次から3次の予防に関わっていると説明しました。
その上で、上野大臣の「攻めの予防」プランの5本目の柱に「予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーションの提供」が掲げられていることに触れ、統括調整室を活かして、リハビリテーションを医療・介護・福祉の一政策から日本全体の国策に仕上げるよう求めました。
小川議員は、患者や障害者、高齢者へのサービス提供は「消費ではなく、費用ではなく投資である」と述べ、環境を整えることで障害のある人ができることが増え、生産性への貢献にもつながると訴えました。
これに対し上野厚生労働大臣は、7月に厚生労働省が策定した「攻めの予防」のプランでもリハビリテーションを重要と位置付け、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーションの推進に取り組むと説明しました。
さらに、分野横断的な推進や、投資の観点を含めた産業の育成も重要だとして、「厚生労働省が中心となって関係省庁が連携するための会議を作らせていただきたい」と答弁しました。
小川議員は「大変心強いお話をいただいた。具体化に向けて動くということで受け止めさせていただく」と応じました。
訪問看護STからのリハ職の訪問「専門職の矜持をくじく」、利用者ニーズの受け止めを
2つ目の質問では、訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問が取り上げられました。
小川議員は、訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問が、リハビリテーションではなく訪問看護の一環と位置付けられていると説明。
その上で、厚生労働省が訪問看護本来の役割を重視する考え方に基づき、累次の介護報酬改定で算定要件の見直しや減算が行われてきた経緯を資料で示し、現在の介護給付費分科会でもさらに厳格化を求める声が出ていると指摘しました。
小川議員は、現場から「私たちはリハビリテーションの専門職なのに、なぜ看護業務だと言わなければならないのか」と涙ながらに訴える声があったことを紹介し、「専門職としての矜持をくじくような制度」だと述べました。
また、議論がサービスを提供する側に偏り、サービスを受ける利用者の視点が欠けていると指摘しました。
一方で、訪問看護本来の設置目的は非常に大事だとして、理学療法士等の訪問を削るよりも、訪問看護の実績を高く評価する方向性もあってよいのではないかと提案しました。
その上で、これまで訪問看護ステーションからリハビリテーションを受けてきた利用者のニーズを今後どのように受け止めるのか、大臣の所見を求めました。
これに対し上野厚生労働大臣は、「医療・介護の複合ニーズを有する高齢者の皆さんを支えるためには、生活期における自立支援に向けたリハビリテーションを一層推進する必要がある」との認識を示しました。
介護保険の訪問リハビリテーションについて「重要なサービスである」とし、事業所数・受給者数とも増加していること、令和9年度(2027年度)から始まる第10期介護保険事業計画の基本指針で訪問リハビリテーションの拡充を市町村に示していることを説明。
令和9年度介護報酬改定に向けて介護給付費分科会で議論が行われているとして、「利用者のニーズを十分認識した上で、引き続き効果的かつ十分な訪問が提供されるよう、さらに検討を進めていきたい」と答弁しました。
リハ専門職が主体の訪問リハ事業所を提案、厚労相「慎重な検討が必要」
3つ目の質問では、リハビリテーション専門職が主体となってサービスを提供する、新たな訪問リハビリテーションの枠組みが取り上げられました。
小川議員は、人口減少地域や過疎地域で医療・介護のインフラが減り続けており、既存の医療機関や施設を基盤とする仕組みだけでは、地域のリハビリテーションのニーズに応えることが難しくなると指摘しました。
その前例として、東日本大震災後の復興特区で、訪問リハビリテーション事業所の設置要件が緩和され、リハビリテーション専門職が中心となってサービスを提供する仕組みが認められたことを紹介しました。
2012年に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3団体が共同で訪問リハビリテーション振興財団を設立。同財団を母体に、福島県南相馬市(浜通り)、2013年に岩手県宮古市、2014年に宮城県気仙沼市に訪問リハビリテーションのステーションが開設されました。
その後、特区の期限終了後は制度化されなかったため、浜通りを除いて訪問看護ステーションに移行して活動を続けている現状を述べました。
小川議員は、2019年に地元医師会を対象に行われた調査で、回答した医師の78%以上が特区期間の終了後も訪問リハビリテーションのステーションが必要だと回答したことを紹介し、「国が制度上の特例を認め、実際に運用してきた、効果を上げたという実績がすでにある」と訴えました。
その上で、訪問看護からの移行を抑制するだけでなく、新たな需要に応える仕組みを考えるべきではないかと政府の考えを求めました。
これに対し上野厚生労働大臣は、「訪問リハビリテーションが過疎地域あるいは人口減少地域でも当然安定的に提供されるということが重要だ」と述べ、令和6年度介護報酬改定で訪問リハビリテーションを提供する事業所を拡充したことなどを説明しました。
一方で、審議会では「事業所の医師が利用者の病状・生活上の課題を把握し、リハビリテーション専門職と目標を共有することが質の高い支援につながる」との意見もあるとして、「そうした点も踏まえながら慎重に検討することが必要」との考えを示しました。
小川議員は、増えるリハビリテーションのニーズに応えるだけでなく、少なくなった医療・介護のインフラをつなぐ役割も果たせるとして、引き続き前向きな検討を求めました。
産前産後の身体の不調に理学療法を|厚労相「必要に応じて中医協等で議論」
4つ目の質問では、周産期・産前産後の領域における理学療法の推進が取り上げられました。
小川議員は、昨年10月に「産前産後の母体に対するケアを通じて包括的に女性支援を考える議員連盟」を立ち上げたことを紹介しました。
学生時代にWHOから派遣された先生方から学んだ内容には「産科理学療法」があった一方、日本の養成カリキュラムには今も入っていないと指摘しました。
また、あるNPOの調査で、妊娠・出産に伴って身体の不調を抱える人が91%、1年後も不調が続いている人が40%以上いることが明らかになったと紹介しました。
小川議員は、こども家庭庁の創設で産後ケアが厚生労働省から移管され、医療的なサポートが担保されていない点も指摘しました。
母子健康手帳も出産後は子どもの記録が中心になり「母体が置き去りになっている」として、身体の不調が家庭内の関係の悪化や育児放棄・虐待、女性や子どもの貧困、更年期障害にも影響すると訴えました。
その上で、妊娠中から出産後に生じる身体の不調に対し、リハビリテーション専門職が評価や介入を含めて支援する必要があるとして、産科におけるリハビリテーションについての考えを求めました。
これに対し上野厚生労働大臣は、妊娠・出産に伴う身体の不調に医師をはじめ関係者が継続的に関わることは重要だと述べました。
現行の診療報酬でも、産科の医師が文書を添えて他の医療機関に患者を紹介した場合は診療情報提供料を、産科を含む医師の指示の下でリハビリテーションを実施した場合は、患者の状態によっては疾患別リハビリテーション料を算定できると説明しました。
その上で、「妊産婦におけるリハビリテーションや医師のさらなる関与のあり方も含めまして、今ご指摘のあった課題につきましては、関係者の皆さんのご意見を十分お聞きした上で、必要に応じて中医協等において議論していきたい」と答弁しました。
処遇改善と訪問看護等の基本報酬の増額を要望
小川議員は、法改正や養成制度についても質問を予定していましたが、時間の関係で取り上げられませんでした。
質疑の最後に、令和9年度介護報酬改定に向けて、全産業平均並みの処遇改善と、訪問看護等の基本報酬の増額を求めました。
令和9年度介護報酬改定に向けた議論は、社会保障審議会介護給付費分科会で引き続き進められます。
リハビリテーション専門職にとって関心の高いテーマを取り上げた小川かつみ議員の質疑について、以下に全文を掲載します。
(以下、全文文字起こし)
[小川かつみ 議員] 皆さん、おはようございます。自由民主党・無所属の会の小川克巳でございます。今日は久しぶりの厚生労働委員会での質問になります。どうぞよろしくお願いいたします。
まず冒頭、令和8年熊本震災で被災をされました方々、そしてお亡くなりになられました方々に対して心よりお見舞いと哀悼の意を表したいと思います。一日も早く元の生活に戻れることを祈念して、質問に入らせていただきます。
私はご承知のとおりリハビリテーションの専門職の一つであります理学療法士でございます。今日はこの25分、たっぷりとリハビリテーションについて質問をさせていただきたいと考えております。ぜひ上野大臣をはじめ皆様には、元気と勇気の出るご答弁をいただきたいと心からお願いをしております。
まず、国家戦略としてのリハビリテーションという観点から質問をさせていただきます。上野大臣はリハビリテーションに関して日頃よりご関心をお持ちいただいております。
そして現場にも足を運んでいただきまして視察をしていただきました。そうした視察のご経験等を踏まえてどのようにお感じになられたのか、また課題と感じられたことがありましたら率直にお話をいただきたいと思います。
[上野厚生労働大臣] はい。本年5月に厚生労働省にリハビリテーション統括調整室を設置いたしましたので、私自身が現場にお邪魔をいたしまして、現場の様々な実態、実情を把握をして課題を認識したい、そうした思いで積極的に国内、国外の視察をさせていただいてまいりました。
まず今年の5月になりますが、慶應義塾大学病院や初台リハビリテーション病院を視察した際には、先進的なリハビリテーションによる移動技術の進歩、あるいは多職種の皆さんが連携をして地域のリハビリテーションの向上に貢献をしていただいている、そういった実態について把握をさせていただきました。
また急性期でも特に早期からのリハビリテーションの重要性や、リハビリ専門職の人材不足、キャリアの中で質の向上を図るための研修制度の必要性、そうしたことについても改めて認識を深めたところでございます。
9月には茨城県の筑波記念病院、また県南病院を視察させていただきました。ここでは急性期から生活期まで切れ目のないリハビリテーションの提供の必要性であったり、あるいは子どもや障害者などリハビリテーションを必要とする方が多くいらっしゃる現状を把握させていただきました。
また9月にはマレーシアで開催されましたASEAN保健大臣会合に出席をいたしましたが、その際にはマレーシアにある東南アジア最大の医療複合施設であるPERKESO国立神経ロボット・サイバニクス・リハセンターを視察させていただきました。
このセンターでは日本発のリハビリテーション技術であるHALがマレーシアの公的社会保障制度の中で活用されて、患者の皆さんの機能回復、社会復帰を支えている現状について把握させていただきました。海外展開の重要性についても改めて認識をさせていただいたところでございます。
そうした視察を通じてのご意見やご要望等を把握させていただきましたので、しっかり政策の中で活かされるようにこれからも努めていきたいと考えています。
[小川かつみ 議員] どうもありがとうございました。私たちが抱えている様々な課題を共有させていただいたと思っております。
この場におられる皆様にもお願いをしたいのですが、リハビリテーションと言いますと頭に「Re」がついておりますので、「再び」という意味に取られてしまって、何らかの障害や疾病等の後に正常の生活から逸脱した人たちを元の生活に戻していくというのが元々の発想でございます。
ただ、それから我が国でも60年経っておりまして、様々な思想を反映しながらシステムが変わってきています。リハビリテーションについても、一つの事業・業務を挙げますと、すべてに大体「予防」がつきます。
重症化予防、合併症予防、疾病予防、障害予防というように、1次から3次までの予防に関わるということが現実の世界になっているわけですね。
ですから、今までリハビリテーションというと、何か起きた後の後付けとして、3次予防のフィールドが主戦場だという認識でいるわけですが、必ずしも今はそうではなくなってきているということはご認識いただきたいと思っております。その上で今後のリハビリテーション政策について考えていく必要があるのだろうと思っております。
そうした観点から、先ほど大臣からもお話がありましたリハビリテーション統括調整室を作っていただきました。本当にこれは我々の業界に明るい希望が差し込んだと前向きに捉えております。ありがとうございます。
続いて、リハビリテーション統括調整室で何をやっていくのかということでございますが、上野大臣肝いりのプランの中で、5番目の柱にリハビリテーションということで、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーションの提供ということを掲げていただいております。
こうした中で、医療・介護・福祉の一政策から日本全体の国策として仕上げていくために、ぜひこの統括調整室をしっかりと活かしていただきたいと思います。
リハビリテーションというのは人に対しての働きかけ、そして環境への働きかけ、その中に介在するものが実際の人間の行動であったり産業活動であったりと幅広くありますので、関連するものを並べていきますと相当に経済にも影響してくると考えております。
ですから、人に対する投資、障害者や患者さんに対して手厚くサービスを提供する、あるいは介護サービスを提供するということは、消費ではなく、費用ではなく「投資」であるというお考えを持っていただければありがたいと思っております。
特に障害をお持ちの方々は、環境を整えることによってできることが格段に増えます。特に今はICTの時代ですので、かなり省力化したところで、今までできないと思われていたことができるようになってきました。
そういう意味で生産性への貢献もできる。これは女性も障害者も高齢者もそうです。ですからコストではなく投資に変えていくという発想のもとで、この統括調整室から政策を考えていただければありがたいと思っておりますが、その方向性について大臣はどのようにお考えでしょうか。
[上野厚生労働大臣] はい。厚生労働省内の関係部局が一丸となって、委員からご指摘のあった課題にも十分対応していくために、リハビリテーション統括調整室を設置させていただきました。
また本年7月に厚生労働省で策定をいたしました「攻めの予防」のプランの中でもリハビリテーションを重要と位置付けさせていただきまして、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーションの推進などに取り組んでいくこととしております。
また、今議員からご指摘のありました、分野横断的にリハビリテーションを推進していく、また戦略的に投資という点も含めて産業の育成などを進めていく、そうした観点も重要でありますので、私としては厚生労働省が中心となって関係省庁が連携するための会議を作らせていただきたいと考えております。
関係省庁一体となって総合的なリハビリテーション政策をさらに進められるような体制を作っていければと考えているところであります。
[小川かつみ 議員] ありがとうございました。大変心強いお話をいただきました。具体化に向けて動くということで受け止めさせていただきます。
続きまして、訪問リハビリテーションも我々の業界の非常に大きな課題になっております。この訪問リハビリテーションの提供体制等につきましてお伺いをしたいと思います。
訪問看護ステーションから行くリハビリテーションにつきましては、訪問看護Ⅰ5という項目で定義されているわけですが、これはリハビリテーションではなく訪問看護の一環であるという位置付けがなされております。厚生労働省は訪問看護本来の役割として、利用者の全身状態の変化への対応、医療的管理、認知症などを重視しています。この考え方に基づき、これまで累次の介護報酬改定において理学療法士等による訪問の算定要件や減算などの見直しが行われてきました。お手元にお配りした資料の通りでございます。
これをずっと眺めていただいて、現場で働いている人間がどういう思いになるのか、その専門職がどういう思いになるのか、思いをいたしていただきたいと思います。
もう、心折れてしまいます。そして、今まさに介護給付費分科会で議論が進められておりますが、ここでも、さらにこれを厳格化しようという声が出ている。これでどうやってこのサービスを継続させるのでしょうか。
そこに携わっておられる現場の方々の心中を慮ったことはあるのでしょうか。
これですね、サービスを提供する側と受ける側があるわけですね。受ける側の議論が全然ない。訪問看護という名の下に「リハビリテーションじゃないんだ、看護だ。その看護の軒先きを借りてリハビリテーションを提供するんですよ」ということを、いちいち説明しなければならない。こんな専門職としての矜持をくじくような制度がいつまであるのだろうかと思っております。
現場の方々とお話をしますと「私たちはリハビリテーションの専門職なんだ。にもかかわらず、看護業務ですとなぜ言わなければならないんだ」と涙を流して訴える方もおられました。ぜひその心中を慮っていただきたい。
人がいるから、その人が前向きに取り組んでくれるから、その現場が生きているのです。これについて、私は怒りを持って抗議したいと思うのですけれども。
これまた、さらに減算であるとか回数制限で厳しくするということになると、ここからあぶれる人たちがいるのです。ユーザーがいるのです。提供側だけでなくユーザーがいるのですね。ユーザーのことも考えていただきたいと思っております。
ただ、そうはいっても訪問看護本来の設置目的があります。これは設置目的を実際に具体化する、具現化するうえで非常に大事だと思っております。ならば、訪問看護Ⅰ5を削るということよりも、むしろ訪問看護の実績を高く評価していく、そうした姿勢があってもいいのではないかと思っております。
看護本来の役割に沿った報酬の適正化を進める一方で、これまで訪問看護ステーションからリハビリテーションを受けていた利用者のニーズ、実際にあるから増えているわけですが、そのニーズを今後どのように受け止めていくのか、この点について大臣にご所見をお伺いします。
[上野厚生労働大臣] はい。まず、医療・介護の複合ニーズを有する高齢者の皆さんを支えるためには、生活期における自立支援に向けたリハビリテーションを一層推進する必要があると考えております。
その上で、まず介護保険における訪問リハビリテーションですが、高齢者の心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために理学療法士等がリハビリテーションを行うものであり、重要なサービスであると考えております。
これまでの訪問リハビリテーション提供体制の強化のための取り組みなどによりまして、事業所数あるいは受給者数とも増加している状況でございますが、令和9年度から始まります第10期の介護保険事業計画等の基本指針においても、訪問リハビリテーションの拡充について市町村にお示しをしているところであります。
その上で、令和9年度の介護報酬改定に向けて、現在介護給付費分科会において、利用者の日常生活の自立を促すためのリハビリテーションを推進する対応策についてご議論をいただいているところでございますので、利用者のニーズを十分認識した上で、引き続き効果的かつ十分な訪問が提供されるよう、さらに検討を進めていきたいと考えています。
[小川かつみ 議員] ぜひ前向きの検討をお願いいたします。時間の関係で質問を一つ飛ばさせていただきます。新しい訪問リハビリテーション提供体制についてお話をしたいと思います。
人口減少地域あるいは過疎地域における医療インフラや介護インフラは、減少の一途をたどっております。このままでは既存の医療機関や施設を基盤とする仕組みだけで地域の医療・介護、ならびにリハビリテーションの需要に十分応えることは難しくなるということは、共通の考え方であろうと思います。
そういう意味で、リハビリテーション専門職が主体となってサービスを提供できる新たな事業の枠組みを検討してはいかがかと、改めてご提案申し上げます。
これにはすでに前例がありまして、東日本大震災後の復興特区の中で、震災によって医療・介護資源が不足した地域で、在宅生活を支える訪問リハビリテーションの確保が大きな問題となった時期がございます。
そこで復興特区の特例措置により、訪問リハビリテーション事業所の設置要件が緩和されました。リハビリテーション専門職が中心となってサービスを提供する仕組みが認められたということでございます。
これに従って、2012年には理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3団体が共同して訪問リハビリテーション振興財団を設立しました。そこを母体として福島県南相馬市に浜通り訪問リハステーションを開設、その後、2013年には岩手県宮古市に宮古山田訪問リハビリテーションステーションゆずる、2014年には宮城県気仙沼市に気仙沼訪問リハステーションを立ち上げました。
ちなみに宮古市の訪問リハステーション「ゆずる」という名前は、津波の最中に入所者の救出にあたった理学療法士の名前から取ったものでございます。
いずれも復興特区の期限終了後、訪問リハステーションが制度化されないことから、現在は浜通りを除いて訪問看護ステーションに移行した上で活動を続けております。2019年に地元医師会を対象として行われた調査では、回答した医師の78%以上が、特区期間終了後も訪問リハステーションが必要だと回答したというアンケート結果も報告されております。
この特例は期間満了に伴って終了しましたけれども、このように国が制度上の特例を認め、実際に運用してきた、効果を上げたという実績がすでにあるということでございます。地元の医師会あるいは関連の医療関係団体と密接な連携のもとで、これが地域に受け入れられ、狙った通り以上の効果を上げたという事実があります。
そうしたことから、訪問看護からの移行を抑制するだけでなく、新たな需要に応えるための仕組みというものを考えるべきではないかと思っております。
こうした論点につきまして、政府はどのようにお考えかご所見をお願いいたします。
[上野厚生労働大臣] はい。在宅での日常生活を支えるために、訪問リハビリテーションが過疎地域あるいは人口減少地域でも当然安定的に提供されるということが重要だと認識をしております。
厚生労働省においては、その提供体制の確保を図るために、例えば令和6年度の介護報酬改定においては訪問リハビリテーションを提供する事業所を拡充する、そうした取り組みを行ってきたところでございます。
また先ほども申し上げましたけれども、第10期の計画の基本指針においては、訪問リハビリテーション等の拡充が重要であることを市町村にお示ししているところであります。
ご指摘の点、重要な課題と考えておりますが、審議会における議論においては、やはり「事業所の医師が利用者の病状・生活上の課題を把握して、リハビリテーション専門職と目標を共有することが質の高い支援につながる」などといったご意見もございますので、そうした点も踏まえながら慎重に検討することが必要かと考えております。
いずれにいたしましても、地域におけるリハビリテーションのニーズに適切に対応できるように、介護保険における訪問リハビリテーション提供体制の確保・充実にしっかり取り組んでいきたいと考えております。
[小川かつみ 議員] はい、ありがとうございます。引き続き前向きに検討をお願いしたいと思います。
地域の増えるリハビリテーションニーズに応えるだけでなく、少なくなった医療インフラ・介護インフラを適切につないでいく役割も果たすことができるという観点でも、ぜひ検討をお願いしたいと思います。
では私の取り組んでいる、産科領域における理学療法の推進について少しお話をさせていただきます。
「産前産後の母体に対するケアを通じて包括的に女性支援を考える議員連盟」というものを昨年10月に立ち上げさせていただきました。
私は学生の頃にWHOから派遣された先生方から習った世代なんですね。こうしたなかでテキストもなく、授業も英語で受けるといった経験をしたのですけれども、その中に「産科理学療法」というものがどれをみてもあるのですが、我が国にはカリキュラムに入っていない。未だに入っていない。学生時代からの率直な疑問でして、50年経ってようやく少し糸口をつけられることになったなと思っているところでございます。そういう意味では、私のある意味ライフワークの一つともいえるかと思います。
調べてみますと、妊娠・出産を契機に様々な身体の不調を抱える人たちが多くいらっしゃることがわかりました。あるNPOの調査で明らかになったのですが、妊娠・出産に伴って身体の不調を抱える方は91%おられます。そして1年後にもそれが継続している方々が40%以上おられます。
妊娠・出産しておしまいではなく、すぐ翌日から育児に関わらなければならない。その中で、身体の不調からうつに落ち込んでしまうという方がおられます。メンタルに対しては対応ができつつありますが、身体に関しての関心がなくなっている。こども家庭庁ができたことで産後ケアがそちらに移管されてしまって、厚労省の手を離れてしまい、医療的なサポートが担保されていないということでございます。
母体の方の意識、母親の方の意識も変えないといけないと思います。母子健康手帳でも、出産前は母体のことは当然ですが、出産すると子どもにシフトします。当然と言えば当然ですが、母体が置き去りになっているのですね。ここで不調が続いていないかを早めに対応しなければならないと思います。
この不調は、家庭内の関係が上手くいかなくなったり、育児放棄や虐待に結びついたり、ひいては就労に困難をきたす。そしてもっといけば、女性の貧困や子どもの貧困につながったり、更年期障害にも大きな影響を及ぼすことがわかってきております。
ぜひ早めにしっかりと取り組んでいただきたいと思いますが、まずは妊娠中から出産後に生じる身体的不調に対して、リハ職が評価や介入を含めた支援を充実させる必要があると思っておりますが、産科におけるリハビリテーションについてどのようにお考えか、ご所見をお願いいたします。
[上野厚生労働大臣] はい。妊娠・出産等に伴う身体的不調について、医師をはじめ関係の皆さんが継続的に関わることは重要だと考えております。
現行の診療報酬においても、産科の医師が診療状況を示す文書を添えて他の医療機関に患者の紹介を行った場合には診療情報提供料の算定、あるいは産科を含めた医師の指示のもとリハビリテーションを実施した場合には、患者の状態によっては疾患別リハビリテーション料の算定が可能であります。
妊産婦におけるリハビリテーションや医師のさらなる関与のあり方も含めまして、今ご指摘のあった課題につきましては、関係者の皆さんのご意見を十分お聞きした上で、必要に応じて中医協等において議論していきたいと考えています。
[小川かつみ 議員] ありがとうございます。法改正のことや養成制度につきましてもお話を伺いたかったのですけれども、時間が参りましたので次に回したいと思います。
あわせて、介護報酬改定に向けて議論が進んでおりますけれども、全産業平均並みの処遇改善と訪問看護等の基本報酬の増額をぜひお願いしたいと思います。
これで質問を終わります。ありがとうございました。
引用・参考
■ 参議院インターネット審議中継 2026年11月5日 厚生労働委員会(参議院HP)