在宅医療の体制見直しが始動
9月24日、厚生労働省で「第1回在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」が開催され、第8次医療計画(後期)に向けた議論が開始されました。
同省では現在、「新たな地域医療構想」の策定に向けて検討を進めており、2026年度に地域の医療提供体制全体の方向性を示す予定です。本ワーキンググループは、その一環として、在宅医療や医療・介護連携の推進に必要な事項を議論するために設置されました。
在宅医療の体制については、第8次医療計画の見直しのポイントとして「在宅療養患者が居宅において生活機能の回復・維持を図る観点からリハビリテーション提供体制の整備は重要であり、その機能・役割について明確化する」ことが明記されました。
本ワーキンググループでは、在宅医療需要の増加が見込まれる中、訪問リハビリテーションなどのサービスについて、多職種連携も含めた提供体制のあり方について議論が進められています。
訪問リハビリテーションの需要増加
厚生労働省は、訪問リハビリテーションの事業所数、提供件数、受給者数がいずれも増加していることを資料で報告しました。
資料では、医療保険か介護保険か(診療報酬における在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料、介護保険における訪問リハビリテーション、介護予防訪問リハビリテーション)や要介護度にかかわらず、ほぼ一貫して増加し続けていることが示されています。
訪問リハビリテーションは、今後も一層の需要増加が見込まれており、急性期・回復期リハビリテーションから、地域での生活期リハビリテーションへと、切れ目なく支援できる体制整備の必要性が強調されています。
今後は、「新たな地域医療構想」に向けて、訪問リハビリテーションの必要量や体制のあり方が具体的に議論される予定です。
「訪問看護におけるリハビリテーション」の扱いの不明確さ
同ワーキンググループでは、訪問看護についての記載はあるものの、事業所数や看護職員にとどまり「理学療法士等による訪問」については具体的に触れられていません。
しかし、訪問看護ステーションにおける全体の単位数のうち、理学療法士等による訪問は要支援の方に対するサービスで約半分(令和3年度で47.1%)、要介護の方に対するサービスで約3分の1を占めています(令和3年度で32.7%)。
過去の報酬改定に関する議論では、 訪問リハビリテーションとは別に、「訪問看護におけるリハビリテーション」として表記され、提供体制のあり方が議論されてきました。
それにもかかわらず、訪問看護と訪問リハビリテーション、いずれの項目でも明確に言及がみられない点は、地域におけるサービス提供体制を検討するうえで課題が残るように感じられます。
地域においてリハビリテーション需要に応える重要な役割を担っている実態を踏まえれば、今後の報酬改定の議論において、「リハビリテーション」としての位置づけをより明確に検討対象に含めていくことが望まれます。
持続可能な訪問リハビリテーション体制をどう築くか
訪問によるリハビリテーションの需要は高まる一方、地方におけるサービス提供者も含めた人口減少は止まりません。
限られたサービス提供者で、必要なサービスをどのように提供していくのか。この議論は今後さらに重要になります。
その際には、理学療法士等による訪問が、すでに地域のリハビリテーション需要を大きく担っている現状を踏まえ、現実的かつ持続可能な体制づくりが進められるのか、今後の議論の行方が注目されます。
引用・参考
■ 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ(厚生労働省)
資料2 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループにおける検討事項等について(PDF)
■ 第230回社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省)
【資料2】訪問看護(PDF)