厚生労働省は10月19日、社会保障審議会介護給付費分科会で、訪問看護ステーションの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による訪問について、報酬評価を見直す方向性を示しました。
訪問看護の役割を踏まえ、サービス提供体制や実績等に応じた評価の見直しを検討するものです。委員からは、これまでの報酬改定で導入された減算をさらに厳格化すべきとの意見も示されました。
訪問看護STのリハ職による訪問、報酬評価の見直しを提案
厚生労働省は今回、令和9年度介護報酬改定に向けた論点の一つとして、訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護の評価の見直しを提示しました。
対応案では、訪問看護の役割を踏まえたサービスを適切に評価する観点から、サービスの提供体制や実績等を踏まえた評価の見直しについて、委員に意見を求めました。
訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問については、これまでの介護報酬改定でも評価の見直しが行われてきました。
令和3年度改定では、理学療法士等による訪問が看護職員による訪問を上回る場合などに減算する仕組みが導入され、令和6年度改定でも減算の見直しが行われています。
今回の対応案では、具体的な減算率や新たな算定要件は示されておらず、今後の検討課題となっています。
リハ職による訪問は増加傾向、事業所の収支差率にも違い
厚生労働省が示した資料によると、訪問看護ステーションにおける理学療法士等による訪問回数の割合は増加傾向にあり、令和8年4月審査分では、介護予防訪問看護で63.2%、訪問看護で53.2%を占めています。
また、年間の算定回数を平成30年度と令和6年度で比較すると、訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護は約1.7倍となり、訪問リハビリテーションの約1.3倍を上回る増加がみられました。
事業所の経営状況にも違いが示されています。
令和6年度決算における訪問看護事業所の収支差率は、看護職員のみが訪問する事業所で5.7%、理学療法士等による訪問も行う事業所で11.1%でした。さらに、理学療法士等の職員割合が50%を超える事業所では14.1%となっていました。
ただし、これらの事業所では介護料収入にも大きな差があり、事業所規模による経営効率の違いが収支差率に影響している可能性もあります。なお、厚生労働省の口頭説明では収支差率の違いについて言及はなく、資料上で示されるにとどまりました。
厚生労働省は、こうしたサービスの提供実態などを踏まえ、訪問看護の本来の役割に応じた評価の在り方について検討を求めました。
「減算をより厳しく」「訪問看護と訪問リハの役割分担を明確に」
審議では、日本医師会の江澤和彦委員が、訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問について、既存の減算をさらに厳しくすべきとの考えを示しました。
江澤委員は、訪問看護ステーションからの理学療法士等による訪問が件数ベースで5割を超え、請求単位数でも約3分の1を占めていると指摘しました。
訪問看護ステーションからのリハビリテーション専門職による訪問は、あくまでも訪問看護の一環として提供されるものであり、訪問リハビリテーションとは異なることを強調しました。
その上で、これまでの報酬改定で導入された減算について、さらに厳しく対応し、報酬による誘導を通じて訪問看護ステーションを本来あるべき姿に戻していくべきとの考えを述べました。
一方、訪問看護ステーションに所属するリハビリテーション専門職は、利用者のために懸命に働いているとした上で、事業所の経営側や運営側に理解を求める必要があることも付け加えました。
また、健康保険組合連合会の伊藤悦郎委員は、訪問看護と訪問リハビリテーションの役割分担を明確にし、サービス提供体制や実績等に応じたメリハリのある評価を進めるべきと提起しました。
全国老人保健施設協会の東憲太郎委員も、訪問看護と訪問リハビリテーションは異なる固有の役割を担っているとして、訪問看護本来の機能と価値を踏まえた評価の見直しへの考えを示しました。
今回の審議では、厚生労働省から具体的な減算率や報酬区分の変更案は示されておらず、令和9年度介護報酬改定に向け、引き続き評価の在り方が検討されます。
引用・参考:
■ 第271回社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省HP)
・【資料3】訪問看護