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2025.09.01

【調査レポート】リハ職とケアマネの連携、現場の満足度は?~約850名の声から見えた課題と連携強化のヒント~



PT-OT-ST.NETはケアマネジメント・オンラインと合同で「リハビリテーション専門職とケアマネジャーの連携」に関するアンケート調査を実施しました。

リハビリテーション専門職273名(PT-OT-ST.NET実施)、ケアマネジャー581名(ケアマネジメント・オンライン実施)からの回答が寄せられ、多職種連携における現場の課題と改善のヒントが浮かび上がってきました。

ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。


■ 調査の背景と目的

リハビリテーション専門職(以下、リハ専門職)として現場に立つ皆さまは、退院支援の場面などでケアマネジャーとの連携を行うことも多いのではないでしょうか。

その際に、「もう少し◯◯だったら」「こう伝えたらうまくいった」といった、現場ならではの声や課題意識をお持ちの方も少なくないかもしれません。

一方、ケアマネジャー側からも同様に「もっとこうしてほしい」「連携のここが難しい」といった声も聞かれます。

今回のアンケートでは、それぞれの立場が感じている課題感や工夫を可視化することを目的に実施しました。リハ専門職とケアマネジャー、それぞれの立場を尊重し、より良い連携のあり方を考える一助となれば幸いです。


■ 調査の概要(PT-OT-ST.NET実施分)

期間:2023/12/15〜12/28
設問:最大24問(想定回答時間 約10分)
対象:リハビリテーション専門職として働いている方

<回答者属性>

リハ専門職・ケアマネジャーともに、30〜40代以降の方の割合が多く、リハ専門職 においては生活期に従事している方が多い傾向がみられました。






リハ専門職の約4割、ケアマネとの連携「うまくいっている」

居宅のケアマネジャーとの「連携の機会」について、「ある(73%)」「時々ある(21.%)」を合わせて、およそ9割のリハビリ専門職が機会があると回答しました。

場面としては、家屋調査やサービス担当者会議での連携の機会が多いことが示されました。

一方、「連携の機会がある」と回答した方への「連携がうまくいっているか?」という質問に対しては、「どちらとも言えない(44%)」、「そう思わない(18%)」であり、約6割は連携に何らかの課題感を抱いている実態がみえてきました。




ケアマネの回答「リハビリの質は十分」は約3割

一方、ケアマネジャーに対して「利用者が受けているリハビリテーションの質は十分だと思うか」という質問したところ、十分に思っている方は32.5%、どちらとも言えないは42.6%という結果でした。




リハ専門職・ケアマネ双方が感じる課題:“コミュニケーション”と“知識”

リハ専門職とケアマネジャーの連携において、それぞれ課題はどのような課題を感じているのでしょうか。

リハ専門職から最も多く挙がったのは「コミュニケーションの難しさ」でした。具体的には、「電話やFAXなどアナログな連絡手段が不便」「時間的な制約や訪問中のすれ違いで連絡が取れない」などの声が寄せられました。

一方、ケアマネジャーから最も多く挙げられた連携の課題感は、「介護保険の知識が不足しているように思える」に関する意見でした。また、「高齢者のリハビリを理解していない」「福祉用具に関する知識が病棟のセラピストに不足している」といった意見が多くみられました。

それぞれの立場から見える「連携の壁」は、お互いの専門性や業務への理解不足と情報共有の障壁によって起因している可能性が示されました。


両者に共通する“解決の鍵”は、日頃のコミュニケーションの工夫

では、この課題を乗り越え、より良い連携を実現するためにはどのようにしたらよいのでしょうか。

これについて、リハ専門職、ケアマネジャー双方から共通して挙がったのは「こまめな連携」「信頼関係の構築」「情報共有の工夫」が必要であるといった意見でした。

リハ専門職からの解決策の提案

● 「こまめに連絡を取り合える体制の構築」
● 「利用者の情報を共有し、信頼関係を築くこと」
● 「電話以外の方法で気軽にやり取りできる仕組み作り、ツールの導入」
● 「目的意識を持った対話の場の確保」

ケアマネジャーからの解決策の提案

● 「日頃からこまめに連絡を取り合う」
● 「利用者の状況や目標の共有を日常的に」
● 「些細なことでも相談できる関係作り」
● 「お互いに専門性を尊重し合う姿勢を持つ」



これらの意見を踏まえると、リハビリテーション専門職とケアマネジャーが連携を強化するためには、単なる情報共有に留まらず、お互いの専門性や視点を理解し合いながら、共通の目的に向かって、協働する関係が重要だといえます。

まずはお互いの専門性や視点を理解し、尊重し合いながら、利用者中心のケアを目指すための環境づくりが求められていると考えられます。

これらの点はコミュニケーションの基本的な要素のように思われますが、利用者をサポートする現場では “いかにタイムリーかつ相互性をもって伝えるか”が連携の要であることを、本調査は示しているといえるかもしれません。


■ ケアマネがリハ職に求めるのは“身体状況の助言”と“福祉用具の提案”

「ケアマネジャーがリハ専門職に求める助言」についての質問では、最多回答が「利用者の身体状況(82.6%)」であり、次いで「福祉用具の活用(75%)」という結果でした。

利用者の状態や必要なサポートについて、リハ専門職の視点から正確かつ詳細な情報を共有することは、ケアマネジャーの日常業務をより効果的にすることにつながっていることが考えられます。

リハビリテーション専門職が、臨床現場で把握した利用者の現状を積極的に伝える姿勢を持つことの重要性を示唆しているとも考えられます。




互いを知ることから始まる、より良い連携へ

本調査から、リハビリ職とケアマネジャーの間で課題となっているのは「コミュニケーションの工夫」や「情報共有の質や知識の深さ」であることがみえてきました。

お互いの役割や専門性を尊重しながら、利用者を中心に据えた連携をタイムリーに実践することが、より良いケアの提供につながると考えられます。

なかでも、利用者の身体状況や福祉用具の活用に関する具体的な情報の提供、ツールなどを活用した円滑な連絡手段の整備、そして日常的に顔の見える関係性の構築といった取り組みが、職種間の理解を深めるうえで有効であるということが、あらためてアンケート結果より示されました。

これらの取り組み積み重ねにより、利用者の生活の質を向上に寄与すると期待されます。

また、アンケートでは、ICTツールの活用を求める声も多く寄せられました。セキュリティ面にも配慮された連携支援ツールの導入は、現場のニーズに応える有効な手段として選択肢の一つといえます。

今後、制度や環境が変化していくなかでも、こうした現場の声に耳を傾けながら、連携の在り方を見直し、改善していく取り組みが求められていることが、本アンケート結果よりあらためて確認することができました。

本調査の結果が、リハビリ職とケアマネジャーの連携をより実効性あるものとするための一助となれば幸いです。


引用・参考
【WEB調査】リハ専門職とケアマネの連携に関するアンケート(PT-OT-ST.NET)

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