理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイト

PT-OT-ST.NET

トピックス

2026.03.30

WFOTが「作業療法士教育の最低基準」と「作業療法士の最低能力」の2026年版を公表



世界作業療法士連盟(WFOT)は2026年2月、タイ・バンコクで開催された総会において、 『作業療法士教育の最低基準(Minimum Standards)』および 『作業療法士の最低能力(Minimum Competencies)』の2026年版を承認し、公表しました。

WFOTは各国の作業療法士協会が加盟する国際団体で、作業療法士養成校の教育基準の策定などを行っています。

これらの文書は、WFOTによる養成校承認の基準となるものです。養成校は所定の承認・審査プロセスを経て、WFOT承認校として扱われます。

2016年から約10年ぶりとなる今回の改訂では、2031年以降のWFOT承認に学士号以上が必須となるほか、オンラインのみの教育プログラムが基準外とされるなど、日本を含む世界中の養成校に影響する内容が盛り込まれています。

新基準は2028年1月から適用される予定です。

何がどう変わるのか、詳しく見ていきましょう。


主な変更点5つ



国際的な健康・社会・教育的視点の更新

作業療法士教育が対応すべき国際的な課題を記載した「国際的な健康・社会・教育的視点」というセクションが大幅に改訂されました。

特に、以下の項目がより明確に整理されました。

● 非感染性疾患(NCDs)の増加
● 人口の高齢化
● リハビリテーション2030イニシアチブ
● 健康の社会的決定要因

また、気候・環境変化への適応や、AI・遠隔医療・バーチャルリアリティといったテクノロジーの活用も、教育において考慮すべき視点として組み込まれています。


WFOT承認に学士号以上を必須化

2031年以降、WFOTの承認を受けるためには学士号またはそれと同等の学位が取得できるプログラムであることが必須となりました。

これは、作業療法士に求められる能力の深さ・広さを認めるとともに、 大学院進学の機会をしっかりと確保するためです。

現在、専門学校等で教育を行っている組織に対しては、 政府と連携しながら移行できるよう2036年まで最長10年間の猶予期間が設けられています。


オンライン学習の制限と対面教育の必須化

オンライン教育が当たり前になりつつあるなか、2026年版ではオンラインのみのプログラムは基準外とされ、対面教育による補完が必須と示されました。

実技練習・対人コミュニケーション・チーム学習といった能力は、対面での学びなしには習得できないとされています。


臨床実習の要件が強化

実習で経験すべき内容が具体的に示され、精神保健・身体保健の実習経験が改めて必須とされました。

学生が実習で経験すべき内容として、以下が明記されています。

● さまざまな年齢層の人々
● 急性期・慢性期、両方の健康上の問題を抱えた人々
● 精神的な健康上のニーズを持つ人々、および身体的な健康上のニーズを持つ人々
● 人・作業・環境に焦点を当てた介入

またWFOTでは以前から臨床実習の最低時間として1,000時間を定めていますが、2026年版ではその根拠が新たに文書に明記されました。

さらに模擬演習(シミュレーション)や遠隔実習の活用も認められましたが、実習時間全体の20〜30%以内にとどめることが推奨されています。


能力要件が教育基準から分かれ別文書として発行

これまで教育基準の中に組み込まれていた能力要件が『作業療法士の最低能力(Minimum Competencies of Occupational Therapists)』として別冊化されました。

これからは、教育プログラムの開発や承認の際はこの2文書をセットで参照する必要があります。


作業療法士の教育に関する最低基準の目的

WFOTは、作業療法士教育の最低基準の目的について文書中に以下のように記載しています。

"The multiple purposes of the Standards demand that occupational therapy education is constantly updated to address changing conditions and expectations in society; regional and international differences are acknowledged within local programmes; and defined global standards are met."

引用:Minimum Standards for the Education of Occupational Therapists|WFOT


「作業療法士教育の最低基準は複数の目的を持つことから、作業療法教育には、社会の変化や期待に応じた継続的なアップデート、地域・国際間の違いを各地のプログラムの中で尊重する、そして定められたグローバル基準の遵守が求められます。」

各国の教育事情を尊重しながらグローバルな水準を目指すという考え方が、この基準の目的として明記されています。


今後の流れ

2016年の改訂時には、約3年後の2019年3月に日本作業療法士協会『作業療法士教育の最低基準』改訂第4.1版およびWFOT『作業療法士教育の最低基準』2016年改訂版(日本語版)が発刊されました。

日本では、日本作業療法士協会により、上記基準に基づきWFOT認定等教育水準審査が行われています。

2026年版についても同様の流れとなる場合、今後日本作業療法士協会から、正式に発表がなされるものと思われます。各養成校においては、それに基づき対応することが求められます。


WFOT承認とは

WFOT設立の理念の一つに、作業療法士のクオリティの維持と向上があり、WFOTは当初から作業療法士養成カリキュラムの最低基準を設定し、その基準を守ることをWFOT加入条件の1つとしました。

日本作業療法士協会の「WFOT養成施設認可の目的と意義」でも、WFOT承認校の卒業生であることのメリットとして、「有資格作業療法士であることの国際的認知にかかわる唯一の方法」、「諸外国でOTとしての雇用、大学院教育、研修等の際にチェックされることが多い」と説明しています。

日本作業療法士協会の「作業療法士養成校一覧」ページにおいて、各校がWFOT承認校に該当するか、公開されています。

加えて、WFOT本体にも一覧があります。

WFOTの 「WFOT Approved Education Programmes」ページには、現在または過去にWFOT承認を受けた教育課程の一覧があり、国・地域で絞り込み可能で、国の選択肢の中にJapanもあり、全世界に向けて公開されています。

引用・参考
Minimum Standards for the Education of Occupational Therapists(WFOT)
WFOT Approved Education Programmes(WFOT)
世界作業療法士連盟(WFOT)
■ 日本作業療法士協会
 ◯ 作業療法教育の最低基準
 ◯ WFOT養成施設認可の目的と意義
 ◯ 作業療法士養成校一覧

関連タグ
作業療法士 世界日本作業療法士連盟
PT-OT-ST.NET:LINE公式アカウント「最新ニュースをLINEでお届け」友達追加

この記事が気に入ったらいいね!しよう

もっと見る 省略する

情報提供

ページ上部へ戻る