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2026.05.14

「生活機能を守る防災」を国会で問う――理学療法士の田中まさし議員が災害対策特別委員会で質疑



5月14日、衆議院災害対策特別委員会にて、衆議院議員の田中まさし議員(理学療法士)が、防災庁設置法案をめぐる審議の場で、リハビリテーション専門職の視点から「生活機能を守る防災」の重要性を訴えました。




避難生活が招く「生活不活発病」――災害関連死を防ぐ視点を計画に

田中議員はまず、首都直下地震への備えとして、インフラ整備や物資輸送にとどまらない「生活機能の維持」を防災計画に盛り込むべきだと主張しました。

内閣府は、首都直下地震による建物倒壊・火災の被害は61万棟、死者は最大2万3,000人にのぼると試算しています。

田中議員は、その後の避難生活に着目し「長期にわたる避難は高齢者を中心に生活不活発病を引き起こし、多くの災害関連死につながりうる。これは理学療法士をはじめとするリハビリテーション専門職が日々の臨床で向き合っている現実でもある」と指摘しました。

政府(内閣官房次長)は、能登半島地震での段ボールベッドの設置やリハビリテーション専門職による体操教室の実績を挙げ、「保健医療福祉調整本部支援チームとの連携を進める」と答弁しました。

国の「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画」にも、高齢者等の心身機能低下への対応が盛り込まれていることが確認されました。




JRATの登録者は769名――人材不足の現実

専門人材の確保に関する質疑では、現状の数字が明らかになりました。



田中議員はこの数字を受け、「JRATの人員確保はまだ不十分ではないか」と指摘しました。

また現場では、BCP(業務継続計画)の観点から「自組織の維持のために人を外に出せない」 という声があることも取り上げました。

政府は、職員を派遣した際の減収補填については「診療報酬・介護報酬上の配置基準の柔軟化や、JRATへの補助事業を実施している」と答弁しましたが、「減収分が補填されなければ派遣しづらい」という問題は引き続き課題として残る形となりました。




協定だけでは動かない――事前訓練と標準モデルの必要性

続けて田中議員は、自治体と専門職団体との連携についても質問しました。

「協定を結んでいても具体的に進んでいない」という現場の声を紹介し、全国的な標準モデルの策定と地域防災計画への反映を求めました。

政府は、今年3月末に内閣府・厚生労働省の連名で先進事例をモデルとして示す通知を発出したこと、また今年度創設の「防災力強化総合交付金」の対象にこうした取り組みが加えられたことを報告しました。



現場の実態に即した政策の必要性を訴えた、リハビリテーション専門職にとって注目される田中昌史議員の質疑について、以下に全文掲載します。


(以下、全文文字起こし)

[田中まさし 議員]
おはようございます。自由民主党の田中昌史です。今日は質問の機会をいただきました委員長、理事の皆様方に心から感謝申し上げます。

災害が多発する我が国におきまして、この防災庁の意義というのは非常に大きいものがあると思います。先般の参考人質疑でも、4名の皆様方から大いに期待するというお声をいただきました。私も、この防災庁には大いに発展、そして活躍いただきたいという風に賛同するところであります。

災害現場や被災地を私も見てまいりました。能登ですとか、胆振東部ですとか見てまいりました。現場の方からお話を伺ってまいりました。私は理学療法士ですから、どちらかというと福祉的な、あるいは医療的な支援を見てきたわけですが、当然、命を救うだけでなく、生活を守り再建するところまで完結して、初めて、防災の役割が成し遂げられると考えております。

そのためにはですね、かねてからこの委員会でも議論されていますが、平時からの備えというのが極めて大事でありまして、行政と支援団体との関係、産学官民の連携を含めて大事なんですが、何よりもですね、地域で暮らす方々が「自分たちはこの防災を乗り切れる」と、「安心だ」と、そう思って暮らしていただけることが極めて私は大事だろうと考えているところであります。

こういった過去の災害を視察して、経験した中でですね、見てきたこと、そして現場の皆さん方からいただいた声をもとにですね、今日は質問させていただきたいと考えております。

まず、私は東京ブロック選出ですので、首都直下地震の備えについて伺いたいと思います。

この首都直下地震、単なる局地災害ではありません。首都圏を中心とした広域かつ長期避難を伴う災害となることが想定されます。

内閣府による、首都直下地震の被害想定と対策についてという報告書では、建物の倒壊と火災による焼失であわせて61万棟、それから死者が最大2万3000人の被害が想定されているということであります。

多くの被災者が長期の避難生活を余儀なくされる事態となればですね、高齢者を中心に生活不活発病を引き起こし、災害関連死に多くの方がつながる可能性があるというのが、この首都直下地震であろうと思います。

そこで伺いたいと思います。防災庁として、この首都直下地震といった大規模災害に対して、インフラ整備や物資輸送だけではなくて、生活不活発病の予防ですとか、身体機能の維持、それから災害関連死の防止といった「生活機能を守る防災」をどのように事前計画に盛り込んでいくのか、政府としての見解を伺いたいと思います。


[内閣官房 横山防災庁設置準備室次長]
お答えいたします。

首都直下地震では、多数の避難者が発生し、自力での対応が困難な要支援者だけでも多数に上るため、こうした方々の健康を守り、災害関連死を防ぐため、高齢者などの身体機能を維持して生活機能の低下を防止する取り組みが重要だと考えてございます。

このため、例えば能登半島地震においては、避難所において段ボールベッド等の簡易ベッドを設置するとともに、リハビリ専門職の方が身体機能を維持するために体操教室を開催していたというような実績もございます。

このような環境が災害現場において速やかに実現するよう、関係者が連携して事前の取り組みを進めることが重要だと考えてございます。

このような観点から、例えば東京都を含む9都県市では、首都直下地震を想定した9都県市合同防災訓練を実施してございますけれども、医師会と保健医療福祉関係者も参画していただいて、しっかりと行なっているところでございます。

計画上の位置付けとしてもですね、中央防災会議幹事会で決定してございます国の「首都直下地震における具体的な応急対策活動に関する計画」においては、生活環境の変化による高齢者等の心身の機能低下、生活習慣病の悪化、心の問題など健康上の課題に対応していく旨を記載しております。

こういう考え方に基づいて、厚生労働省が新たに設置された保健医療福祉調整本部支援チームとも連携しながら、必要な保健医療福祉に関する支援活動が行われるよう取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。


[田中まさし 議員]
ありがとうございます。しっかりお願いしたいと思います。

いろいろと聞いてもですね、自治体、例えば東京都と協定を結んでいるのだけど、具体的に何も進んでいないという声は多数私も聞いておりますので、具体的にそこをしっかりと進展させていただきたいなと考えているところであります。

次に、地方自治体の専門人材の確保についてであります。

この命、健康、暮らしを守る初動対応。これを強化していくためには、市町村に対する医療、福祉、リハビリ専門職などのマンパワーが必要になりますが、現実にはこの人材が不足しているという自治体も非常に多いと。

地方に行けば、圧倒的に人材不足は不足していますし、これは加速している状況であります。

そこで、政府は自治体ごとの医療、福祉、リハビリ専門職等の充足状況ですとか、災害時の動員可能人数、これをどの程度把握されていらっしゃるのか。また、人材不足の地域に対してどのような人的支援、制度的補完を行うのか、教えていただきたいと思います。


[厚生労働省 榊原審議官]
お答え申し上げます。

災害発生時に、被災自治体が医療福祉分野の活動を円滑に行うとともに、必要に応じて人的な支援を受けられる様、国として平時より人材確保を進めることは重要と認識しているところでございます。

災害医療において中心的役割を担うDMAT(災害派遣医療チーム)は2万356名が単位養成研修を終了しているとこでございます。

また、避難所等に避難する高齢者などの要配慮者に対し、福祉的支援を行うDWAT(災害派遣福祉チーム)は約1万1000名、災害時のリハビリテーション支援を行うJRAT(日本災害リハビリテーション支援協会)は769名が隊員として登録されているところでございます。

こうした、災害時に活躍いただく人材の確保に向けて、各種予算事業により研修の実施等に取り組んでおりまして、引き続きこうした取り組みを通じて、災害時における医療、福祉、リハビリテーションの人材を確保してまいりたいと考えているところでございます。


[田中まさし 議員]
ありがとうございます。まだDMATですとか、JRATですとか、こういったところの人材の教育、確保体制というのはまだまだ不十分な状況なのではないかなと思っています。

各団体、一生懸命やっていらっしゃると思っておりますが、ぜひ政府としても支援をお願いしたいというのと、それから現場でよく聞くのは災害が起こった時に、BCP(業務継続計画)をそれぞれ策定していると思うのですが、「自分のところの策定したBCPをもとにすると、人は出せませんよ」というところは結構多いんですよ。

自分のところの機能をしっかり維持しなきゃいけないということでありますから。ここはよく、BCPは非常に大事なんですけれども、災害時においてのBCPのあり方というか、各施設の対応のあり方については、今後も政府として検討していっていただきたいと思います。

やはり、災害が起こった時に「行けません」では済まされないと思うんですよ。行かなきゃいけないんです。でも、行ける体制を組むということがとても大事ですから、ぜひここは今後とも検討していただきたいと考えております。

次にまいります。専門職団体と自治体との連携についてであります。

先ほどお話しした協定は、非常に初動対応の空白期間を、時間を埋めるためにとても大事であります。ただ、やはり誰が何をどこで、いつ、どこまで担うのか。

例えば、南海トラフ地震が起きた時に、そこに被災自治体に対してどこの県のどの市街の専門職が入るのか、という具体的な計画を立てておかないと、実行的には正直ならないんだと思います。

そこでですね、自治体とリハビリ専門職団体などとの事前の協定、そして合同訓練、それから避難所支援における役割分担と計画策定などの進捗状況についてどのようになっているのか。

これらの自治体と専門職団体との連携について、私はやはり全国的な標準モデルを作って、地域防災計画もなかなか進んでいない自治体が多いですから、こういった標準モデルを参考にしながら、ぜひ地域防災計画を前に進めていくということを進めていかれてはどうかと思いますが、見解を伺いたいと思います。


[内閣官房 横山防災庁設置準備室次長]
大規模災害時におきましては、現場でリハビリを含めまして、保健医療福祉分野が連携して、被災者に寄り添った支援が行われるよう、都道府県が保健医療福祉調整本部を設置することとされており、自治体に平時より保健医療福祉活動チーム等との合同訓練、研修会議の開催等に取り組むよう求めているところでございます。

また例えばですね、関係行政機関や応援協定を締結している関係団体等による合同会議を開催し、行政、各団体、各事業者が実施できる内容を共有するなどの取り組みも進めてきているところでございます。

平時から地域における関係団体等において連携を深めることを目指し、既に実施している自治体の例、先進事例をモデルとして示す通知も本年3月末に内閣府防災担当と厚生労働省の連名で発出して、取り組みを促しているというところでございます。

さらに、必要な費用の問題がございますので、今年度創設した「防災力強化総合交付金」の対象にこういう取り組みもしてございます。防災庁設置を見据えてですね、各自治体での開催を促して事前に体制を整備するなど、厚生労働省とも連携しながら取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。


[田中まさし 議員]
ありがとうございます。ぜひですね、組織として協定を結んでいますよ、でも、そこに所属する会員たちが、やはり自分たちがそういう役割を持っているという意識づけをきちんと平時からやっておくというのは極めて大事だと思います。

その上では、計画を具体的に策定して、事前訓練等もしっかりやっておくことが非常に大事だと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。

次にまいります。専門団体の災害支援に関する制度的課題について質問したいと思います。

この医療福祉に従事する団体、専門職、まあ結構、災害に関わりたいという方は結構います。研修なんかをやると、結構募集も多いですよね。非常にいいことだと思います。

しかし、現場ではやはり、支援に行きたいんだけれども、所属機関の許可が得られないとか、派遣できないという声があると。その原因は主に大きく2つあります。

派遣した先で被災したり、あるいは何らかの障害を負った時の責任の所在と補償がどうなるのかというのが1点目であります。2点目は、当然ですね、行った、派遣した人間の人件費、日当は、これは支給されますが、派遣した元の病院は当然、例えば出来高払いとか、施設基準があったら減収になるわけです。

これは経営的に非常に医療介護福祉施設、厳しい状況の中で派遣した方がいいけれども、減収になって経営が厳しくなるんだったら、やはりそこはなかなか派遣しづらいなと、ということに当然なってくるわけであります。

そこで、政府として派遣する医療福祉施設への補償制度、医療福祉機関の職員を送り出しやすくなるような支援制度や基準の緩和、専門職の派遣に関わる各団体の総合調整ですとか、あるいは人材育成の推進と財政措置について十分な制度整備を行うべきだと考えますが、見解を伺いたいと思います。


[厚生労働省 林審議官]
お答え申し上げます。

ご指摘の点につきまして、現在の取り組み状況でございますが、まず、医療機関が3大災害が発生した際に、被災地にリハビリテーション専門職を含む職員を派遣した場合、診療報酬上の職員配置基準等を柔軟に取り扱うことができるようにするということで、被災地への支援、職員派遣支援というのを支援するという制度的な対応を行なっております。

この取り合いにつきましては、介護事業所等においても同様でございまして、被災地に職員を派遣した場合、災害発生時における人員基準加算の算定のための人員配置について柔軟な取り扱いをする、差し支えないというような対応をしております。

また、厚生労働省では、JRATに対しまして、災害発生時における被災地の活動に係る連絡調整、リハビリテーション専門職等の派遣調整や平常時における大規模災害時など発生に備えた途端への専門的な研修、都道府県における地域リハビリテーション体制の構築や強化、こういったところの事業に要する費用の補助を行っているところでございます。

引き続き、こうした必要な支援を行ってまいりたいと考えております。


[田中まさし 議員]
ありがとうございます。基準緩和については適宜行われるというご答弁だったんだろうと思いますが、減収分については、これは補填されない、まだ明確ではないということであろうと思いますから、これについても派遣した施設が持ち出しでやらなきゃいけないというのは、ちょっと私は問題があるんじゃないかと思いますので、ぜひこういったものは引き続き検討いただきたいと思っております。

最後の質問になりますけれども、広域防災について伺いたいと思います。

この委員会でもずっと広域防災については議論が行われてまいりました。大規模災害ですね。首都直下ですと内海トラフ、1,000島、日本海溝もそうですけれども、この広域災害では当然、1自治体だけで対応するというのは困難であります。

先ほど申し上げましたとおり、自治体の今の現状の原因だけでは対応が難しいというのは、もう明らかであろうと思います。自治体の職員も被災者であって、対応が困難になるというのは、もうずっと指摘されているところであります。

どの自治体で災害が発生するかわからないという状況の中で、私は全自治体に配置転換されない防災担当職員を1名以上ずつ置いて、防災大学校での研修なども活用して人材育成をする。

大規模災害が起こった時に、やはり周辺あるいは全国の自治体の防災担当者が一斉に被災地に入って1次対応に万全を期すという体制を私は組んだ方がいいのではないかと考えているところであります。

そこで質問しますが、政府として、この広域災害を前提とした自治体横断型の防災体制の構築、全自治体における防災専門人材の配置の促進、防災対策を活用した防災人材育成の強化、発災時に国を強化するのもとで防災人材を迅速派遣できる仕組みの整備について、どのように取り組んでいかれるのか、見解を伺いたいと思います。


[牧野たかお復興大臣/防災庁設置準備担当]
田中委員のご質問にお答えをさせていただきます。

ご指摘のように、地方自治体は人材不足でございますので、災害時に必要な要因を確保するということは大変重要だと考えております。

防災庁は、平時には災害時の要員確保を含む事前防災について、関係府省庁とともに地方自治体を支援しております。例えば、災害発生時に国から迅速に応援職員を派遣するための事前の準備や、地方自治体間で相互に応援するための仕組みづくり、さらには民間人材の育成確保や民間との協定の支援などの取り組みを強化しております。

また、防災に関する専門人材の育成のため、今後、国や自治体の職員、さらには民間人材を対象に、仮称ではありますけれども、防災大学校の設置の検討を含めて、防災人材の育成のさらなる強化を図ってまいります。

加えて、防災に関する専門的な知識や経験を有する、そうした人材を「地域防災マネジャー」として自治体が採用、また配置するための経費を支援し、地方自治体への防災専門人材の配置を支援してまります。

このような事前の準備を行いながら、いざ発災時には防災庁が被災自治体のワンストップ窓口として、被災地のニーズを丁寧に汲み取り、ニーズに応じた寺院が被災地に確保される様、関係府省庁、自治体、そして民間も含めた、関係機関など密接に連携しながら、政府一丸となった伴走型の被災者、被災地支援を行ってまいります。


[田中まさし 議員]
大臣、ありがとうございました。

ぜひ、大臣を先頭に、しっかり頑張っていただきたいと思います。

国民の安心を守る。断固として守っていく、防災庁の活躍を大いに期待したいと思います。

以上で質問を終わります。ありがとうございました。

引用■ 衆議院インターネット審議中継 2026年5月14日 災害対策特別委員会(衆議院HP)

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災害 防災 国会質疑 衆議院議員 田中まさし
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