PT・OTでは過去に需給推計も議論
厚生労働省医政局は、2026年5月7日、「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」の初会合を開催しました。第1回では、検討会の進め方に加え、「医療関係職種を取り巻く現状について」や「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する論点」などの資料が示されました。
この検討会は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に限らず、医療関係職種全体の養成・確保をテーマとするものです。背景には、2040年頃に向けた医療・介護ニーズの変化、生産年齢人口の減少、18歳人口の減少、養成校の定員充足率の低下、そして地域差があります。
少子化が進む中で、医療関係職種をどのように養成し、地域で必要な人材をどのように確保していくのか。今回の検討会は、そのような課題を扱う場として始まりました。
また、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)については、過去に厚労省の別の検討会で需給をめぐる議論が行われてきました。そこで本稿では、今回の検討会で示された初回資料の内容を紹介するとともに、PT・OTに関する過去の需給議論についても整理します。
初回資料で示された主な論点
今回の検討会では、医療関係職種を取り巻く現状として、人口構造の変化や養成校の状況が示されました。
資料の中では、特定の職種に関するデータや取組について、「当該職種における課題や取組に焦点を当てるものではなく、広く医療関係職種をめぐる現状・課題の議論に資するよう掲げたもの」と注記されました。
そのため、PT・OTに関するデータが示されている場合でも、初回資料全体としては、PT・OT固有の需給を検討するというより、「医療関係職種全体に共通する課題を整理するための資料」として位置づけられていると考え、読み解く必要があります。
また今回の検討会で検討する主な論点として、①養成体制の整備、②養成から現場へのつなぎ支援、③働く環境の整備、④地域における推進体制の整備、の4点が示されました。
まず、養成体制については、若者や社会人などの「なり手」の確保、中長期的な「なり手」の減少にも対応できる持続的な養成体制、多様な人材が参入しやすい養成課程・養成環境が論点として示されました。養成体制に関する参考として、既修単位の履修免除の活用や、養成に係る修業年限の柔軟化といった考え方も例示されています。
また、「養成から現場へのつなぎ支援」も論点に挙げられています。養成校での教育だけでなく、職場に入った後の資質向上や、職場・地域へのスムーズな定着をどう支えるかが含まれています。
PT・OTにおいても、養成数だけでなく、卒業後にどの地域・どの領域で働き続けるのか、入職後にどのように育成されるのかは、人材確保を考える上で重要な視点です。
さらに、今回の論点には「働く環境の整備」も含まれています。資料では、長い職業人生を通じてキャリアやスキルを高められること、ライフコースに応じて働き続けられる環境を整えることが挙げられています。
現状認識としても、ワークライフバランスや給与条件、ハラスメント対策、カスタマーハラスメントへの対応などが課題として示されています。
加えて、「地域における推進体制の整備」も論点として示されました。資料では、各地域で医療関係職種の需給状況や養成・確保に関する課題を把握・共有し、必要な取組を計画的に進める枠組みが論点として示されています。
特に資料の中では、養成施設の充足率について、経年変化や都道府県別の違いを見る資料が提示されており、PT・OTについてもデータが示されています。
厚生労働省が用意した初回資料から、今回の検討会は、特定の職種について「全国で何人必要か」を直接検討する場というよりも、「医療関係職種全体について、少子化の中で養成・確保の体制をどう維持していくか、さらに地域ごとの課題にどう対応していくか」を検討する場として位置づけられているように見えます。
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PT・OTについては、過去に需給検討会で議論があった
PT・OTについては、今回の検討会とは別に、過去に「理学療法士・作業療法士需給分科会」で需給推計が議論されてきました。
2019年4月に開催された第3回分科会では、「理学療法士・作業療法士の需給推計について」という資料が示されました。この資料では、一定の仮定・前提の下で厚労省が計算した推計結果を、議論のための「たたき台」として示したものと説明されています。
当時の資料では、PT・OTの供給推計、需要推計、需給推計が示されました。需要については、医療分野、介護分野、その他の分野に分けて整理されています。医療分野についても、入院医療、外来医療、在宅医療などに分けて検討されていました。
つまり、過去の需給分科会では「現在の養成定員などを前提にした場合、将来的にPT・OTの供給数と需要数がどのような関係になるのか」が議論されていました。
当時の需給推計では、一定の仮定の下で、PT・OTの供給数が将来的に需要数を上回る可能性も示されています。そのため、PT・OTについては、これまで「養成数をどう考えるか」「養成教育の質をどう担保するか」「需給バランスをどう見るか」といった論点が議論されてきました。
PT-OT-ST.NETでも、2019年当時、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる需給推計案が示されたことを紹介しました。
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新たに立ち上がった分科会と過去のPT・OT需給推計
今回の「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」は、医療関係職種全体を対象としています。初回資料でも、主な論点は、少子化、地域差、養成校の定員充足率低下、なり手確保、職場や地域への定着、働き続けられる環境などに置かれています。
一方で、初回資料では、過去のPT・OT需給分科会で示された需給推計との関係について、詳しい整理は示されていません。
もちろん、今回の検討会はPT・OTだけを対象としたものではありません。また、論点の中には、地域で医療関係職種の需給状況や養成・確保課題を把握・共有する枠組みも含まれています。そのため、需給の視点がなくなっているわけではないとも考えられます。
ただし、PT・OTについては、過去の検討会にて「将来の需給バランス」をめぐる具体的な推計が示されてきた経緯があります。
今回の検討会の中で、その過去の需給推計がどのように扱われるのか、あるいは新たな資料や議論の中で更新・整理されるのかは、今後確認していく必要があります。
今後確認したいこと
今後の検討会では、PT・OTに関して、いくつか確認しておきたい点があります。
まず、過去のPT・OT需給推計が、今回の議論の中でどのように扱われるかという点です。過去の推計からは時間が経過しており、医療・介護・在宅医療・地域リハビリテーションをめぐる状況も変化しています。今回の検討会で、過去の需給推計が参照されるのか、あるいは新たな整理が行われるのかは注目されます。
次に、養成校の定員充足率低下をどう評価するのかという点です。少子化による「なり手不足」としてみるのか、養成定員のあり方と関連づけてみるのかによって、議論の方向性は変わります。PT・OTについては、過去に需給バランスが議論されてきた経緯があるため、この点は特に丁寧な整理が必要になると思われます。
また、全国総量と地域偏在をどう分けて考えるのかも重要です。全国で見た需給と、地域ごとの人材確保の課題は、必ずしも同じではありません。過去の推計で示されたように、全国的には供給が需要を上回る可能性があっても、地域や領域によっては人材確保が難しい場合もあります。
さらに、養成の質保証をどのように位置づけるのかも確認したい点です。過去のPT・OT需給議論では、養成数だけでなく、養成の質も重要な論点とされてきました。今回の検討会でも、なり手確保や養成体制の維持とあわせて、教育の質や卒後の定着・資質向上がどのように議論されるかが注目されます。
今回の検討会は、少子化が進む中で、医療関係職種の養成・確保をどう考えるかという重要なテーマを扱っています。
PT・OTについては、過去に需給分科会で将来の需給バランスが議論されてきたことも踏まえ、今回の検討会でその議論がどのように位置づけられていくのか、引き続き注視されます。
参考・引用
■ 第1回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会(厚生労働省HP)
■ 医療従事者の需給に関する検討会 理学療法士・作業療法士需給分科会(第3回)(厚生労働省HP)