理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイト

PT-OT-ST.NET

トピックス

2018.06.14

車いすユーザーの旅行を変えた1本の棒 ~できないことができることに変わる喜び~


 私は20年の車いす生活をしているが、以前に比べて社会のインフラが整い、外出しやすい社会になってきたものの、旅行においては、未だに交通手段・宿泊施設の確保などスムーズにはいかないことが多い。そうした中で、車椅子ユーザーにとって格段に行動範囲が広がったのが、㈱ニコ・ドライブが開発した手動運転装置「ハンドコントロール」である。



 手動運転装置は、一般の自動車のアクセルペダルとブレーキペダルに装置を取りつけることで、足ではなく手によって前方に押せばブレーキ、手前に引けばアクセルといった単純構造になっている。ニコドライブ製の「ハンドコントロール」は重量が900グラムと非常に軽量であり、折りたためる優れものの為、車椅子ユーザーでも旅行時に持ち運びすることが十分可能である。

 取り付け方法はとてもシンプルであり、工事は不要。工具も使わずその場であっという間にハンドコントロールの取り付けが完成する。


 私はこのハンドコントロールを購入してから、今までは行けないと思っていた地にも訪れることができた。

 通常であれば、手動運転装置付のレンタカーを貸してくれる業者を現地で探すのだが、そう簡単には見つからない。でも、このハンドコントロールさえあれば、大手レンタカー会社の車にも取り付けられるので、業者を探す手間もなく柔軟に行動ができる。

 石垣島には唯一1社だけバリアフリー対応のツアー会社があり、マリンスポーツをすることができるのだが、移動が大変であり、体験できる方は少ない。

 そんな中、私には「ハンドコントロール」があったので、昨年石垣島に行き、車いすユーザーでもマリンスポーツのシュノーケリングやマングローブを楽しむためのカヤックに乗ることもできた。

 今までは『できない』と思っていたことが『できる』に変わったのである。

私も含め多くの車いすユーザーが、このニコ・ドライブ製のハンドコントロールを利用している。最近では脊柱管狭窄症・糖尿病・ヘルニアの病気を発症した方々が、足ではなく手で運転できるものを探して購入されるケースが多くなっているとのこと。また、毎日営業で車の運転をする人が、足を骨折したことで、ハンドコントロールがあれば、仕事にも影響が出ないといった声もある。

 この持ち運び可能な手動運転装置「ハンドコントロール」が普及していくことで、今までは困難だった全国各地への旅行が実現するようになるだろう。そして、2020年の東京五輪・パラリンピック開催に向けて日本国内のバリアフリー化がより一層加速していくことを願いたい。


この記事を書いた人

白倉栄一

バリアフリースタイル代表

1972年千葉県生まれ。1995年イオンリテール(株)入社。
1年後の24歳で交通事故に遭い、一生車椅子生活の宣告を受ける。復帰後は仕事の効率化・チームビルディングに挑み、38歳で人事総務課長に就任。従業員の働きやすい職場風土を目指し、お客さまへのサービスレベルを向上させた結果、店舗のお客さま満足度調査全国1位獲得に貢献。

仕事の傍ら、2005年から車椅子利用者向けの情報ブログを作り、1000件以上のバリアフリースポットを調査。2016年には念願だった日本1周を果たす。その後、同社を退社。

2017年8月に「バリアフリースタイル」を起業し、車椅子でも利用できる環境を創ってい<ための活動を開始。長年のバリアフリー調査の実績と店舗における従業員満足・お客さま満足に取り組んだ経験を活かしながら、小売・飲食・宿泊施設のバリアフリー化を進めている。

講演実績
・イオングループ
・J-Workout(脊髄損傷トレーニングジム)
・東京青年会議所文京支部主催イベント

▶︎ バリアフリースタイルHP
 


  

関連タグ
リハニュース 車椅子 自動車 バリアフリー リハビリ機器 オリンピック パラリンピック 白倉栄一
PT-OT-ST.NET:LINE公式アカウント「最新ニュースをLINEでお届け」友達追加

この記事が気に入ったらいいね!しよう

もっと見る 省略する

情報提供

ページ上部へ戻る