
21名の作業療法士たちのキャリアについて概説した『「21人の作業療法士」とひらく、私らしいキャリア』が医学書院より発刊されました。本書は作業療法士でありキャリアコンサルタントの元廣惇さんと爲国友梨香さんが編集を担当しています。
本書は、総論と各論の二部構成となっており、総論ではキャリアの考え方について解説し「考えるポイント」として読者に対する問いかけが各項目ごとに掲載されています。

各論では作業療法士21名のキャリアが紹介されており、現在に至るまでの経緯が詳細に記され、彼らの思考過程が具体的に描かれているのが特徴です。
また、各エピソードには編集者である元廣さんや爲国さんの解説が加えられており、キャリアの考え方についてヒントを得られる一冊となっています。

今回、本書の企画に携わった医学書院の編集者であり作業療法士でもある小段裕太さんに、発刊の経緯や見どころについてお話を伺いました。
ー 本書は小段さんが企画をされたと伺いました。本書の制作に至った経緯について教えてください。
小段さん 編集者のお一人である元廣先生との出会いが全ての始まりです。SNSで元廣先生のご活動を知り、「とにかく一緒に仕事がしたい!」その一心でダイレクトメールをお送りしました。その時点では企画の構想は全くなかったのです。
ちょうどその頃、SNSを中心に作業療法士の多様なキャリアが可視化されつつありました。それらは作業療法の可能性を広げる一方で、憧れが先行してしまい作業療法の核を身につけないまま、ただ広がりだけを追い求めてしまう懸念もありました。
そうした背景を踏まえ元廣先生とディスカッションを重ねる中で、多様な領域で活躍する作業療法士が「何を大切にしてきたのか」を深く紐解くことが重要なのではないかという考えに辿り着き、本書の外形が現れました。
ー 本書の見どころはどのような点にありますか。
小段さん 本書では、21人の作業療法士の方々に、可能な限り赤裸々に、普段表に出さないような苦労や悩みといった「弱い側面」を開示していただきました。
その内容を紐解くと、皆さんがはじめから特別だったわけではなく、目の前の課題に丁寧に向き合うことから始めていたことが見えてきます。
立ちはだかる障壁に対して、逃げたり無理にこじ開けるわけでもなく、「自分が何を大切にしたいのか」という軸に立ち返りながら、直感や熟考の結果をもとに「自分がいまできること」を着実に続けられてきたことがわかります。
ー 編集者としての想い・読者へのメッセージ
小段さん 編集の過程では、執筆者それぞれの人生に深く入り込ませていただきました。かなりプライベートなことに踏み込むこともありましたが、皆さんそれを受け入れてくださり、「誰かのためになるなら」と、惜しみなく開示してくださいました。
自分だったらどこまで許せるだろうかと考えると自信はなく、ほかの誰かのことを思う先生方の真心に感動しました。
本書を読み進めるにあたっては、そうした"熱"を感じていただきながら、自身との共通点と相違点のそれぞれを見つけていただきたいです。そして、21人の作業療法士が「何をして/何があって、そこに辿り着いたのか」、過去と未来をつなげていただくことで、きっとご自身の大切なことがわかり、次の一歩が見つかることと思います。
そのようにしてご自身の解像度を高めていく作業は、作業療法士として対象者の人となりを捉えて行く際にも大きなヒントになるかもしれません。本書は皆さんの悩みを直接解決するのではなく、その"糸口"を見つけることに大きな力となることと思います。
【書籍概要】
書 名:「21人の作業療法士」とひらく、私らしいキャリア
編 集:元廣 惇・爲国 友梨香
発行者:株式会社 医学書院
価 格:3520円