理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイト

PT-OT-ST.NET

トピックス

2025.08.14

【厚労省】2040年を見据えた介護・福祉サービス提供体制のあり方「とりまとめ」公表



7月25日、厚生労働省は「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会の報告書(とりまとめ)を公表した。

検討会では、全9回にわたる議論をもとに、団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」の先を見据えて議論が重ねられてきた。

本報告書では、2040年に65歳以上人口がピークを迎える日本社会に向けて、今後必要となるサービス提供体制のあり方が示されている。

報告書では、主に以下の4つの章立てで議論の方向性が示されている。

1. 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築や支援体制の方向性
2. 人材確保と職場環境改善・生産性向上、経営支援の方向性
3. 地域包括ケアとその体制確保のための医療介護連携、介護予防・健康づくり、認知症ケアの方向性
4. 福祉サービス共通課題への対応(地域における「連携」と地域共生社会)




1. 地域特性に応じた柔軟なサービス提供体制の構築

高齢化や人口減少の進行スピードは地域により異なるため、サービス提供体制も各地の需要に応じて構築する必要がある。

報告書では「時間軸(将来の人口動態)」と「地域軸(現時点の都市構造)」を組み合わせ、全国を「中山間・人口減少地域」「大都市部」「一般市」の3類型に分類し、それぞれに応じたアプローチが提示された。



● 中山間・人口減少地域

中山間・人口減少地域では、人口やサービス需要の減少に対応するため、柔軟な体制整備が求められており、報告書では、各地の取り組みが例示されている。

例として、介護や生活支援を一体的に提供する多機能化(高知県「あったかふれあいセンター」)、事業者間の協働化、人員配置基準の弾力化などが挙げられている。

また、医療・交通・買い物支援などを組み合わせた多分野連携の推進(例:鳥取県の「生活基盤確保」戦略)や、既存施設の有効活用に向けた規制緩和の検討も進められている。

さらに、障害福祉分野(例:島根県浜田市・江津市、鹿児島県伊佐市)や保育分野(鳥取県日吉津村)では、地域資源を活かした継続的な支援体制の整備が進められている。

● 大都市部

大都市部では、高齢者人口の急増に備え、ICTやAI技術を活用した24時間365日の見守り体制を含む、包括的なサービス提供が必要とされている。

あわせて、高齢者の多様な住まい方と支援サービスを効果的に連携させる体制の整備も重要とされている。

● 一般市等

一般市では、需要の増減が想定される中で、既存のリソースを賢く使い、過剰投資を避けつつ将来変化に備える柔軟性が必要となるとのあり方が示された。


2. 人材確保と職場環境改善、生産性向上(DX)

人材不足への対応として、介護職を中心に2040年までに約57万人の追加確保が必要とされていることに触れつつ、賃上げなどの処遇改善や、外国人材・若年層・介護助手の活用といった多様な人材確保の方向性が示された。

また、ICTやAIなどのテクノロジーを活用した業務効率化により、職員の負担軽減やサービスの質向上を図る取り組みも紹介されている。テクノロジー導入によって生まれた余裕を研修や職員支援に活かすという視点も求められている。

さらに、地域でのデジタル人材育成や、都道府県単位での経営支援体制の整備、法人間連携による人材育成の取り組みなども挙げられた。

なかでも、訪問看護・リハビリテーション等の現場において「一人で訪問する不安」といった特有の理由により、有効求人倍率が高い傾向にあるとし、同行支援(訪問)や経営改善、魅力発信等に取り組むべきであることも示された。

こうした多様な人材確保の施策を効果的に進めるためには、地域の関係機関を結びつける「プラットフォーム」の整備が重要であるとされている。

プラットフォームは、介護事業所や養成施設、行政、医療・福祉団体などをつなぎ、研修やキャリア支援、既存会議体との連携を通じて人材の育成・定着を促す役割が期待されている。

これらの機能が充実すれば、多職種協働が進み、地域全体での課題共有と改善が促されるとともに、PDCAサイクルを回しながら持続的な人材確保とサービスの質、生産性向上につながるとしている。


3. 地域包括ケアの深化と認知症対応

85歳以上の高齢者が急増する中で、医療と介護を地域内で完結できるよう、地域包括ケアシステムの再構築の必要性も示された。

医療と介護の連携強化では、急変時対応や在宅療養への移行を見据え、介護施設と医療機関の関係性を強め、地域内の資源を可視化して活用する方針が示されている。

また、介護予防や健康づくりに関しては、通いの場や高齢期の就労機会の活用を通じて、フレイルや認知症の予防を進める方向が提示されている。事例として鳥取県では、生活支援と予防を組み合わせた取り組みが紹介された。

認知症ケアについては、「認知症基本法」に基づき、本人の意思を尊重した支援のあり方を推進する姿勢が示されている。

認知症カフェや就労支援、ピアサポートといった居場所づくりに加えて、独居高齢者への孤立防止や意思決定支援を含む統合的な対応も求められている。




4. 福祉分野共通の課題と地域共生社会の実現

介護・障害福祉・保育といった分野には、利用者層や制度は異なるものの、人材不足・財源制約・サービスの質確保・地域間格差などの共通課題が存在する。

報告書では、こうした課題に対応するために、分野横断的な連携と包括的な取り組みが不可欠であると述べられている。

また、現状の細かな課題は地域の人口構成や生活様式、社会資源の分布などによって異なるため、地域ごとの精緻な課題分析が必要との考えが示された。

具体的には、人口動態に基づく需要予測(高齢化率、出生率、人口流出入など)、医療・介護・福祉資源の現況把握(施設数、従事者数、稼働率など)、過去からのトレンド変化の分析(サービス利用率の推移、疾病構造の変化など)などが挙げられる。

さらに、地域包括ケアシステムにおける介護予防の推進には、地域での健康づくり・リハビリテーション・重度化防止に継続的に取り組む必要があり、そのためにも「介護・医療人材の確保」の必要性が改めて強調された。

これらの課題解決に向けて、事業者間の連携にとどまらず、行政や福祉人材センター、養成機関なども含めて、地域全体で課題を共有し、協働して対応していく仕組みづくりが求められている。

また、旧保育園や公共施設を活用し、介護・障害・相談支援などを一体的に担う多機能・共生型の拠点を整備する取り組みも各地で進められている(例:滋賀県米原市、東松山市等)。


2024年に向けたサービス提供体制の構築へ

2040年を見据えた福祉サービスの再構築は、単なる制度の見直しではなく、地域の多様な関係者が垣根を越えて連携し、地域ごとの特性に応じた柔軟な仕組みを共に創る取り組みといえる。

今回のとりまとめは、今後策定される第10期介護保険事業計画にも反映される見通しであり、必要な財政措置とともに、具体的な制度設計と運用へと展開されていくことが期待されている。


引用・参考:厚生労働省ホームページ
「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会
   検討会 とりまとめ
   中間とりまとめ概要
■ 地域包括ケアシステムの推進、相談支援、認知症施策の推進について

関連タグ
地域共生社会 保険外 地域包括ケアシステム
PT-OT-ST.NET:LINE公式アカウント「最新ニュースをLINEでお届け」友達追加

この記事が気に入ったらいいね!しよう

もっと見る 省略する

情報提供

ページ上部へ戻る