介護保険制度だけでは対応しきれない高齢者の多様な生活ニーズに対し、保険外サービスへの注目が高まっている。こうした中、経済産業省は5月28日、保険外サービスの産業振興に向けた検討会の取りまとめを公表した。
「取りまとめ」資料では、地域における産業と福祉の連携を促進する「産福共創」をキーワードに、高齢者・介護関連サービス産業振興の目指すべき姿を提示。今後の方向性と具体的な施策について示した。
「保険外サービス」については、ガイドラインの公表や認証制度の開始の動きとも呼応する展開であり、リハビリテーション専門職においても注目すべき内容となっている。
「産福共創」戦略とは ─ 報告書の概要と狙い
経済産業省は、2040年にかけて増加する高齢者の生活支援ニーズに対応するため、介護保険外サービスの振興を国家戦略として打ち出した。
今回、検討会おける議論の取りまとめとして、自治体・介護事業者・民間企業が連携する「産福共創」を中核に据え、多様な担い手によるサービス提供体制の構築を目指すビジョンが示された。
取りまとめ資料では、保険外サービスは「高齢者・介護関連サービス」と広く定義され、大きく分けて、介護予防、社会参加支援、日常生活支援、生活機能維持・療養支援、家族支援に大別された。
具体的には、見守り、家事、移動、食事、運動、趣味、終活など、生活を支える支援が対象範囲として想定されている。
経済産業省は検討会の議論を経て、「保険外サービス」を担い手やサービス類型ごとに分けて、サービスの提供主体を整理した。また、これらの提供主体が、収益性などの観点から、いかに持続可能な形で活動を継続できるかという点にも重点を置いている。
資料では、サービス類型ごとに具体的提供主体の例を示すとともに、民間企業が関与する範囲についてもイメージが示された。
保険外サービスについて、既存の公的サービスではカバーしきれない領域を補完するものとして、地域に根ざした仕組みとなるよう国としても育てていく姿勢が強調された。
「産福共創」の地域実装に向けて、具体策を提示
取りまとめでは、「産福共創」を実際に地域へ実装するための具体策が提示された。
例として、先進的な保険外サービスの事例を創出・分析・評価する取り組みや、自治体への伴走支援、ケアマネジャーをはじめとした専門職との連携体制の整備などが、サービス振興に向けた戦略として挙げられている。これらは一部、今年度から実施予定となっている。
リハビリテーション専門職にとっての広がる役割と実践機会
今回、保険外サービス振興の意義の一つに、住み慣れた地域で自分らしく生活することに資するものとして「高齢者本人のQOL向上」も掲げられた。
取りまとめで示された「保険外サービス」の振興に向けた戦略は、リハビリテーション専門職にとっても活動領域の拡大につながる可能性がある。
医療・介護保険内のリハビリテーションサービスの提供に加え、家事支援や外出同行、趣味活動のサポートといった保険外サービスと連携することで、生活全体を見据えた支援が可能になることが期待される。
こうした支援の形は、機能回復だけでなく社会参加やQOL向上にもつながり、人生100年時代を支える重要な取り組みといえる。
制度の内外をまたいで支援の形を柔軟に構築できる立場として、リハビリテーション専門職がどのように役割を果たし、実践を展開できるのか。保険外サービス振興の時流に沿った、リハビリテーション関連サービスの事例も注目される。
引用・参考
◾️「高齢者・介護関連サービス産業振興に関する戦略検討会」の取りまとめを行いました(経済産業省)
ー 高齢者・介護関連サービス産業振興に関する戦略検討会取りまとめ(PDF)
ー 高齢者・介護関連サービス産業振興に関する戦略検討会取りまとめ(概要版)(PDF)