2026年度診療報酬改定に向けて、11月14日の中央社会保険医療協議会総会では、回復期リハビリテーション病棟入院料の見直しが議論されました。
診療報酬改定に関わる事項として、回復期リハビリテーション病棟について主に以下の3点について議論が交わされました。
1. 実績指数の除外基準の妥当性
― 80歳以上・FIM認知24点以下の患者を除外すべきか再検討が必要とされている。
2. 重度患者のリハビリ効果
― 集中的なリハビリを実施することが目的の病棟であるが、リハビリの効果が得られにくい重症患者の改善可能性を踏まえ、重症患者割合4割という基準が適切かが問われている。
3. 日常生活機能評価表の必要性と位置づけ
― FIMとの重複を踏まえ、指標としての役割整理や簡素化が求められている。
本記事では、示された新しいデータを基に、回復期リハビリテーション病棟の評価体系が今後どのように見直される可能性があるのかを整理します。
実績指数の「年齢80歳」「認知項目24点以下」患者の取り扱い検討へ
最新の議論では、実績指数から除外できる患者(年齢80歳以上や入棟時FIM認知項目24点以下など)の評価に対する影響について、新たな知見が示されました。
そもそも実績指数とは、入院期間にどれだけ効率的に日常生活(FIM)を改善できたかを示す指標として位置付けられています。
ただし、実績指数には「除外基準」が設けられています。これはリハビリテーションによって効果は得られているものの、その結果がFIM得点(運動項目)の効率的な改善を表す指標では表れにくい患者について、回復期リハビリテーション病棟への入棟が不当に制限されないようにするための仕組みです。
現在、実績指数の除外基準の項目は、以下のように示されています。
そこで今回、厚生労働省は「除外患者の割合が多いほどリハビリテーションの効果が得られにくい患者の割合も増える可能性がある」との考えから、DPCデータを基にFIM運動利得について分析を実施しました。
その結果、回復期リハビリテーション病棟における患者全体と除外基準に該当する患者のFIM運動利得を比較したところ、「年齢が80歳以上のもの」は患者全体と変わらないことが示されました。
また、FIM認知項目を細分化した「FIM認知項目の得点が15~24点の患者」も、FIM運動項目の利得は患者全体と概ね同程度か、むしろ高い範囲に分布していました。
一方、「FIM運動項目20点以下」「FIM認知項目14点以下」の患者については、FIM利得がほとんど得られない層が存在することも確認されています。
ただし、この層においても、1日当たりのリハビリ平均実施単位数が3単位を超える患者では、患者全体と同程度のFIM利得を得ているケースが一定数あることが示されました。
また、リハビリテーションの実施単位数を増やしても利得は頭打ちになる傾向が示されています。これに関する課題として、「6単位を越えて実施した場合であっても、3~6単位実施と比べてさらにFIM利得が増すことはなかった」と表記されました。
「FIM運動20点以下・認知14点以下」については、一定量以上のリハビリを行った患者は実績指数の計算対象に含められる可能性が示唆されましたが、どの患者を計算対象とするかは、データと現場の実感を踏まえ、慎重な調整が求められます。
また、FIMの歩行やトイレ動作が5点~6点程度まで改善した場合は在宅復帰の割合が大きく上昇することは引き続き示されました。
重症患者への介入は効果がない?現場感との乖離
今回の議論では、重症患者へのリハビリ効果についての議論もなされました。
重症患者割合(回リハ入院料1・2では4割以上)は、アウトカム評価を導入する際に、患者選別を防ぎ、重症患者の受け入れを進める目的で導入された仕組みです。
しかし、回リハ入院料1・2においては、重症患者割合が4割に設定されているため、集中的なリハビリテーションは難しいような患者の入棟を受け入れなければならない状況になっているのではないかとの課題意識が示されました。
重症患者の基準を満たす患者のうち約1割は、FIM得点が20点以下(ほとんど全介助又はそれに準じる状態)と考えられる患者であり、これらの患者はFIM利得が全体と比べて小さい傾向があります。
提示された結果を踏まえ、回復期リハビリテーション病棟における集中的なリハビリテーションが必要な重症患者の入棟を適切に評価する観点から、重症患者の範囲や入棟を求める割合を見直す方向性について検討が進められています。
日常生活機能評価表の役割と現場の負担軽減
重症患者の判定や改善度合いの測定指標として、FIMの他に日常生活機能評価表が規定されています。今回、その運用について現場の負担軽減の視点から課題が提示されました。
日常生活機能評価表は、重症患者の判定や改善度の測定に用いるための選択肢として位置づけられています。
一方で、実績指数の算出にはFIMが必須であり、日常生活機能評価表については、それ以外の目的での測定は求められていません。
両指標は、認知項目はFIMにおいてやや比重が高いという違いがあるものの、重複項目が得点全体の5~6割程度を占めています。
日常生活機能評価表がFIMによる基準と併記されている現状を踏まえ、現場の負担軽減の観点から、その役割についてどのように考えるかが論点となっています。
今回の議論では、高齢や一部の認知機能の患者を実績指数から除外する必要性は乏しいというデータが示され、評価の公平性を高めるための除外基準の見直しが最大の焦点となりました。
また、重症患者へのリハビリ効果が確認された一方で、重度患者をリハビリの機会から外すことへの現場の懸念も示されました 。
今後は、これらのデータと現場の声を統合し、「実績指数」や「重症患者割合」の基準をどのように見直すか、そして集中的なリハビリテーションが必要な患者への支援体制をいかに制度に反映させるかが、具体的に議論が交わされる見込みです。
引用・参考
◾️ 中央社会保険医療協議会 総会(第627回)(厚生労働省HP)
総-2入院について(その5)