8月21日に開催された「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(第9回)にて、回復期リハビリテーションにおける廃用症候群リハビリテーション料の算定上限の見直しと、退院前訪問指導の取り扱いについて議論された。
廃用症候群リハビリテーション料では、1日7単位以上のリハビリテーション提供でもFIM利得が比較的小さいという分析結果が示されるなど、診療報酬上の評価のあり方について課題が示された。
回復期リハビリテーション病棟の「廃用症候群リハビリ料」6単位超えを議論
7月31日に示された「中間とりまとめ」では、廃用症候群リハビリテーション料について、7単位以上でFIM利得が小さくなる傾向について指摘がされてきた。
また、廃用症候群リハビリテーションを実施している施設が多数あることを踏まえ、疾患別リハビリテーション料の算定上限単位数のあり方についても検討する必要があるとの意見が示されていた。
運動器リハビリテーション料の上限見直しとその影響
今回(第9回)の分科会では、令和6年度診療報酬改定で行われた「運動器リハビリテーション料の算定単位数の見直し」について、その後のFIM利得の変化について厚生労働省は言及した。
令和6年度度診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟における運動器疾患の患者について、1日6単位を超えるリハビリテーション提供によるADLの明確な改善が見られなかったことを踏まえ、算定単位数の上限緩和対象から除外された。(参考記事は
こちら)
厚生労働省は、その改定の影響を評価することを目的に、運動器リハビリテーション料の算定単位数の上限見直し前後のDPCデータを提示。
運動器リハビリテーション料を改定前に1日6単位を超えて実施した患者と、改定後に1日5~6単位実施した患者について、FIM利得に大きな変化はないことを報告した。
この結果を受けて、委員からは「廃用症候群リハビリテーション料も運動器リハビリテーション料と同様の傾向が見られるため、上限の取り扱いについて検討する余地があるのではないか」との意見が挙がった。
厚生労働省は続けて、回復期リハビリテーション病棟における廃用症候群リハビリテーション料の実施状況について報告した。
回復期リハビリテーション病棟の全体でみると、廃用症候群リハビリテーション料の実施割合は7.3%にとどまっていることが示された。
また、廃用症候群リハビリテーション実施患者においては、傷病名のうち廃用症候群が55.0%であるとのデータが提示された。
一方で、一部の病棟では全患者のうち 40%以上が廃用症候群リハビリテーション料を実施している現状もあり、相対的に高い割合で実施されている例もあることがDPCデータより明らかとなった。
退院前訪問指導、効果は見込まれるが「時間的負担」が課題
回復期リハビリテーションにおける退院前訪問指導については、これまでの分科会で複数回にわたって議論されてきた。第5回分科会では病院における実施率の低さが示されていた。
今回の分科会では、退院前訪問指導を一定割合以上実施している病棟・施設ではリハビリテーション実績指数や自宅復帰率が良好であることを資料にて提示し、事例を通じてその効果について報告した。
一方で、退院前訪問指導には「時間的負担」の課題があることも示された。
厚生労働省が行なった実態調査によると、退院前訪問指導の実施施設のうち93%が「60分以上」を要しており、その中でも「120分以上150分未満」が最も多い割合を占めていた。
「中間とりまとめ」においても、「多職種で約半日を費やしており、労力に見合う評価がなされれば、より普及が進むのではないか」との指摘が明記されている。
今後、効率的で効果の得られる“質の高いリハビリテーション”の提供に向けて、廃用症候群リハビリテーション加算の見直しや労力に見合った退院前訪問指導について、リハビリテーションの実施状況等を踏まえ、どのように議論が進められるのか。引き続き議論が注目される。
引用・参考
◾️令和7年度 第9回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚生労働省)
入ー1(PDF)
入ー2(PDF)
◾️令和7年度 第8回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚生労働省)
入ー1(PDF)
【別添】資料編②(PDF)