
経済産業省は、1月31日に第1回高齢者・介護関連サービス産業復興に関する戦略検討会を開催した。
同検討会では、高齢者に対する介護保険内外サービスの重要性について言及しており、サービスを提供する主体を後押ししていく施策を講じていく姿勢を示した。
第1回の検討会では以下の点が主な論点として示された。
①地域分類のあり方
②産業復興の対象とすべきサービス領域
③複数地域への展開可能性がある事例・特徴
④地域共通/固有に抱える産業復興上の課題
1、地域分類のあり方
経済産業省は、地域の特性を考慮した産業振興策の必要性を示した。特に、人口密度や地域資源の状況に応じて、適切なサービスを提供することが重要であるとしている。
資料では地域分類のあり方として、中山間地域、一般都市、大都市の3分類を基本として2040年までの変化が示され、それぞれの課題に応じた支援策が検討された
経済産業省は、高齢者人口は都市部になるにつれて増加し、独居高齢者は中山間地域にいくにつれて増加傾向にあることを指摘。
地域特性を踏まえた地域分類を行う上で、人口密度に加えて、「在宅高齢者がどれだけ必要なサービスにアクセスできるか」を測る指標である地域資源充足率を加味してはどうかと提案した。

例えば、人口密度は高いものの地域資源が不足している都市部では、移動支援サービスやデジタル技術を活用した介護サポートの導入が有効であると考えられる。
一方で、人口密度は低くても特定エリアに資源が集中している地域では、サービスの分散配置を進めることで、より多くの高齢者が必要な支援を受けられるようになる。
このように、地域ごとの特性に応じた資源の最適化を図ることが、高齢者の生活支援の充実につながると考えられる。
2、産業振興の対象とすべきサービス領域と展開可能性がある事例・特徴

経済産業省は、介護保険外サービスの役割の拡大にも注目している。
介護保険外サービスには、家事代行・移動支援・買い物代行・見守りサービスなどが含まれ、介護保険ではカバーできないニーズに対応できる点が強みである。
また、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせたハイブリッド型の事業モデルの推進についても言及された。
具体的には以下のようなモデルが例示されている。
• 宮崎県小林市「andMORE」:午前は介護保険内のサービス(通所型リハビリ)、午後は保険外サービス(買い物支援・通院支援)を提供する仕組み
• 愛知県豊明市「チョイソコ」:自治体・民間企業が連携し、予約型のオンデマンド交通を運営する移動支援サービス
• 100円家事代行(御用聞き):短時間から手軽に利用できる家事代行サービス
3、地域が抱える産業振興上の課題

経済産業省は、「産業振興上の共通課題」として、民間企業におけるニーズ・需要量の把握や集客の課題、行政側の民間企業を活用する必要性の意識の希薄さ、地域包括・ケアマネに対するインセンティブ不足や紹介責任などが課題として挙げられるのではないかと仮説を提示した。
さらに、地域ごとに異なる介護課題に対応するため、地域特性を考慮した産業振興策が求められるとの考えを示した。

検討会の資料では、地域ごとに課題と対応策が例示された。
• 中山間地域では、買い物・移動支援が課題となりやすく、「移動スーパー」や「デマンド交通」のようなサービスが必要。
• 一般都市では、共働き世帯が増える中、介護保険外の家事支援や生活サポートサービスの需要が高まる。
• 大都市では、高齢者人口が増加するため、自治体と民間の連携による効率的なサービス提供が求められる。
地域の課題に応じたビジネスモデルを開発・普及させることは、持続可能な高齢者支援の鍵となるとも考えられる。
今後、保険外サービスを含む多様な介護支援策の活用が求められる中、自治体と企業の連携による持続可能な仕組みの構築が重要となる。
経済産業省の検討会を通じて、地域ごとの課題に応じた最適な支援モデルがどのように推進されるのか、議論が注目される。
引用・参考
■ 第1回 高齢者・介護関連サービス産業振興に関する 戦略検討会(経済産業省HP)
■ 資料4 事務局資料(PDF)