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2025.12.04

【診療報酬改定】病棟における多職種連携の課題 — 早期介入、専門職の業務範囲など焦点に



中央社会保険医療協議会総会(第627回)において、医療の質向上と患者のADL維持・向上を目的とした病棟における多職種連携について、その評価体制、専門職の役割および課題が議論されています。

質の高いケアを提供するための多職種協働を推進するため、診療報酬では各種の連携加算が設定されていますが、その運用実態や現場の負担、各専門職の病棟での業務範囲について、データに基づく検討が進められています。

本記事では、病棟の多職種連携に関わる主要な3つの議論と、今後の見直しに向けた論点を整理します。




早期介入の成果が見える体制加算病棟と口腔ケアに残る課題

急性期医療の現場を中心に、廃用症候群の予防やADLの維持・向上を図るため、リハビリテーション、栄養管理、口腔管理の連携に関する評価が議論されました。

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(リハ・栄養・口腔連携加算)は、急性期病棟において、「入棟した患者全員に対し、原則として入棟後48時間以内にADL、栄養状態、口腔状態の評価に基づいた計画を作成し、多職種により取り組むこと」を要件としています。

施設基準として、専従の常勤理学療法士等(PT・OT・ST)2名以上(うち1名は専任でも可)と、専任の常勤管理栄養士1名以上の配置が求められます。

現状、この体制加算を届け出ている医療機関は9.0%に留まっており、その理由として、「人員配置や休日リハビリ提供体制に関する基準の厳しさ」が以前から指摘されています。

【診療報酬改定】病棟における療法士の役割を議論 ― ADL維持・向上をどう支えるか

2025.10.14

一方で、加算を算定している病棟(届出施設)では、患者の年齢や要介護度が高いにもかかわらず、「ADL低下割合は3%未満」と基準を満たしていることがDPCデータより示されました。



今回、厚生労働省はDPCデータを分析し、入院初日に禁食だった誤嚥性肺炎患者が食事を取っている割合についても新たに提示しました。

結果として、入院初日に禁食だった患者が入院3日目に経口摂取へ移行できた割合は、体制加算ありで48.4%、加算なしで39.4%と差があることが示されました。

また、入院7日目でみても、それぞれ73.6%と65.9%で、いずれの時点でも加算ありの病棟のほうが早期経口摂取につながっていることが明らかとなりました。

厚生労働省は、こうした状況から「体制加算を届け出ている病棟は多職種連携による早期介入が実際に成果として表れている」とした一方で「口腔の地域連携や退院後フォローなど、制度を超えた視点での課題も残されている」との考えを示しました。




病棟で求められる専門職の役割と評価

次期改定では、病棟に配置された専門職、特に3療法士(PT・OT・ST)の役割をどのように評価し、位置づけていくかも現議論の重要なテーマとなっています。

療法士は、ADLや摂食・嚥下状態のスクリーニング・評価、計画立案といった専門的業務を主として担当しており、多くの病棟で中心的な役割を担っています。

また、病棟専従の療法士による短時間のADL動作指導や生活機能維持・向上に向けた介入は、一定の効果があることは以前から示されています。

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特に回復期リハビリテーション病棟では、生活機能に関わる項目における療法士の関与が高く、機能回復に向けた支援を担う重要な専門職として位置づけられています。

これらの成果を踏まえると、今後の診療報酬改定では、療法士の病棟業務をより適切に評価し、専門職がその力を発揮しやすい環境を整える方向で議論が進むことが想定されます。




病棟における多職種の役割分担とタスクシフトの現状

病棟業務では、多職種がどの領域を担い、どこまで役割を広げていくべきかが重要な議論となっています。

多職種連携は、専門的な評価に関わる「診察・治療」の業務だけでなく、患者の日常生活を支える「患者のケア」の領域でも進められています。

「診察・治療」に係る業務では、栄養状態・ADL・口腔状態などのスクリーニングや計画作成は、管理栄養士や療法士が主として担当するものとされています。

また「患者のケア」においては、排泄や離床の促し、患者宅への訪問といった生活機能の回復支援について、療法士が関与する割合が比較的高い傾向にあることが調査より示されています。

一方、バイタルサインの測定、診察介助、吸引などの医療的ケアや、患者のケアに関する業務は、看護師が中心となって実施している病棟が多いのが現状です。

これらの状況を踏まえて、多職種が協働しながら質の高いケアを提供できる体制づくり、看護師の負担軽減に向けたタスクシフト・タスクシェアの推進、そして人員配置の柔軟化をどのように制度的に支援していくかに焦点が当たると考えられます。



これらの論点は、「高い成果を出している多職種連携モデルをいかに普及させるか」という視点も含まれていると考えられます。

各専門職の「病棟での専門的業務」をいかに明確に評価し、支援の質を落とさずに人員配置を柔軟化するという方向性で進むのか、今後の議論に注目です。

引用・参考
◾️ 中央社会保険医療協議会 総会(第627回)(厚生労働省HP)
  総-2入院について(その5)

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