日本作業療法士協会は6月、全国の作業療法士による事例をまとめた「介護予防・日常生活支援総合事業 短期集中予防サービス(サービス・活動C)の実践事例集(Vol.1)」を公開しました。
短期集中予防サービスとは
介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)では、市町村が提供する訪問型・通所型サービスにA〜Dの区分が設けられており、「サービス・活動C」はその中のひとつに定められています。
短期集中予防サービス(サービス・活動C)は、「介護予防・日常生活支援総合事業」の一環として位置づけられており、作業療法士、理学療法士、保健師などの専門職が関与し、3〜6か月の短期プログラムで高齢者の生活機能の改善を集中的に支援するサービスです。
支援を通じて、運動機能や生活習慣の改善を図り、その後は地域の通いの場や自主グループ活動へとつなげていく役割を担っています。
サービス・活動Cの実施状況と課題
高齢者の自立支援や重度化防止において重要な役割を担うサービス・活動Cですが、現時点では十分に普及しているとはいえない状況にあります。
厚生労働省が実施した令和5年度調査では、サービス・活動Cの実施率は依然として低く、訪問型は26.1%、通所型は42.6%にとどまっていることが明らかとなりました。
このような背景を踏まえて、今回の事例集では、全国の作業療法士および関連する多職種と連携して収集された多様な実践事例を紹介することで、このサービスの普及と質の向上を目指しています。
事例集には、10の事例が掲載されており、それぞれが「日常生活」「家事」「趣味・役割」「移動」「ボランティア・就労」「社会資源」「口腔・栄養」といった多様な支援内容で分類、整理されています。
各事例では、地域の実情に応じて作業療法士が取り組んだ内容が紹介されており、生活機能評価や個別プログラム、地域資源の活用など、多職種と連携した支援の工夫について掲載されています。
また、各市町村での取り組み概要、地域課題に応じた創意工夫、作業療法士の専門的な視点など、実践の中で培われた知見が盛り込まれており、現場での支援に直結する具体的かつ実用的な事例集となっています。
日本作業療法士協会は、「この事例集が多くの専門職の活動に資すること、そしてサービス・活動Cのさらなる発展につながること、ひいては作業療法士が国民一人ひとりの生活をより豊かにするために尽力し続けることを願っています」と述べています。
対象者の支援においては、心身状態が悪化する前にできるだけ早期にサービスにつなげることが望ましいとされています。一方、そのためには医療機関との連携強化や、サービス開始までの空白期間を埋める工夫(待機訪問など)が現場の課題として挙げられています。
今後は、事例集が全国各地で活用され、作業療法士が地域ケア個別会議や多職種連携の中で、その専門性を発揮し、総合事業のなかで高齢者の自立支援に貢献していくことが期待されます。
引用・参考
◾️介護予防・日常生活支援総合事業短期集中予防サービス(サービス・活動 C)実践事例集(日本作業療法士協会HP)
◾️介護予防・日常生活支援総合事業等(地域支援事業)の実施状況(令和5年度実施分)に関する調査結果(厚生労働省HP)