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2026.01.26

日本の作業療法士の3Dプリンター活用実態 ー 60%以上が3Dプリンター理解不十分【杏林大学】



日本の作業療法士(OT)における3Dプリンターの利用率はわずか4.4%であることが、杏林大学、帝京科学大学、国立障害者リハビリテーションセンターの研究グループによる全国調査の結果から明らかになりました。

この成果は、2025年7月31日に国際学術誌「Disability and Rehabilitation: Assistive Technology」にオンライン掲載されました。


作業療法における3Dプリンターの可能性、日本における活用状況の不透明さ

3Dプリンティング技術は、義肢、装具、特に個人の身体形状に合わせて0.1mm単位の精度で調整可能なカスタムメイドの自助具製作において、OT実践に大きな可能性を秘めています。

一方で、設計が確立すれば同一形状の再現が可能である反面、試作や設計の初期段階では一定の負担を伴う点が示されています。

作業療法士は、クライアントの生活の質と自立を支援する自助具の作成・修正に重要な役割を果たしていますが、日本において3Dプリンターの技術がどの程度普及し、活用されているかは不明確でした。

本研究は、全国の作業療法士を対象に、3Dプリンターの利用状況およびその導入を妨げる要因を調査することを目的に実施されました。


調査方法:全国の臨床OT 3,469名を対象にウェブ調査

日本作業療法士協会の会員名簿に登録された13,668の臨床施設に所属する作業療法士を対象に、横断的なウェブベースの質問紙調査を実施しました。

教育機関に所属する作業療法士は臨床業務よりも教育・研究に従事しているため、本研究の対象者から除外されました。

アンケートは以下の4項目で構成されました。

● 作業療法士の基本属性・臨床経験
● 3Dプリンターに関する認知・知識・利用環境
● 職場での導入状況や導入上の課題
● 使用経験者に対する具体的な活用内容と利点・課題

ウェブ調査には、3,469人の作業療法士から回答が得られ、「利用経験の有無」を従属変数としたCHAID法※による決定木分析や二項ロジスティック回帰分析が用いられました。

※CHAID法(Chi-squared Automatic Interaction Detection):
目的変数(本研究では3Dプリンターの利用経験の有無)と統計的に有意な関連をもつ説明変数を、カイ二乗検定に基づいて自動的に分岐させる決定木分析手法。どの要因が利用経験の有無を最も強く左右しているかを、階層構造として可視化できる特徴がある。


作業療法士の3Dプリンターの利用経験は4.4%

回答者3,469名のうち、60%以上が調査に参加する前に3Dプリンターについて理解が不十分であると回答しました。ただし作業療法士個人の知識不足を示すものではなく、教育機会や臨床現場で3Dプリンターに触れる機会が限られている現状を反映したものと考えられます。

また、技術を認識していた人々の中でも、作業療法実践で補助具を作成するための3Dプリンターの実際の使用は20%未満でした。さらに、3Dプリンターを使用した経験があるのは153名(4.4%)にとどまりました。

3Dプリンターを使用した経験の有無を最も強く左右していたのは、「3Dプリンターの所有・利用環境」でした。また、「知識」や「情報収集の有無」も利用経験に関連していました。

一方で、個人の「ものづくり志向」や「電子機器への親和性」などの特性は使用経験に影響を及ぼさないことが明らかになりました。

3Dプリンターの使用ケースは、主に脳卒中リハビリテーションで使用されていました。また、3Dプリンターで作成されたデバイスの多くは、食事および食事補助に関連していました。

また、導入を阻む要因としては、「職場の設備が未整備」であることや、「知識不足(使い方がわからない)」が多く挙げられました。


アクセス機会の提供が不可欠

本研究より、日本の作業療法士の間で3Dプリンターの導入は極めて限定的であることが示されました。

また、利用促進には、知識や意欲よりも「実際の機器へのアクセス(所有)」が最も重要な要因であることが示唆されました。

筆者らは、本研究結果から、以下のように展望を述べています。

3Dプリンター利用における最も影響力の大きい要因は「3Dプリンターの所有」であり、本機器へのアクセスが利用促進に不可欠であることを示しています。3Dプリンターに関する知識も利用経験と有意に関連しており、知識が豊富な個人ほど本技術をより使いやすく認識し、応用意欲が高まる傾向にあります。

本研究はさらに、知識の習得だけでは受容を促進するには不十分であり、実際の機器と触れ合う機会を提供することが主要な要因として重要であることを強調しています。

作業療法における3Dプリンターの普及には、技術教育の提供だけでなく、療法士が実践的な経験を積める環境づくりが不可欠です。特に、特定の症状の治療や補助具開発における3Dプリンターの潜在的な有用性は、今後さらに注目されることが予想されます。




■ 論文情報

【掲載誌】Disability and Rehabilitation: Assistive Technology
【論文名】A nationwide survey on 3D printer utilization among occupational therapists in Japan
【著者】Yusuke Harada, Yuki Sawada, Hiroshi Momma, Rie Takeshima & Jun Suzurikawa
【DOI】10.1080/17483107.2025.2538669

引用・参考
◾️ Harada Y, Sawada Y, Momma H, Takeshima R, Suzurikawa J. A nationwide survey on 3D printer utilization among occupational therapists in Japan. Disabil Rehabil Assist Technol. 2025;20(8):3162-3176. doi:10.1080/17483107.2025.2538669

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