日本理学療法士協会は2月12日、赤澤亮正大臣(防災庁設置準備担当・内閣府特命担当大臣・経済再生担当大臣)に対し、「防災庁設置準備室の発足に際する防災庁におけるリハビリテーション専門職の配置に関する要望」を提出した。災害時における避難者の健康維持や生活の質を守るため、リハビリテーション専門職の役割の重要性を訴えている。
日本理学療法士協会からは、斉藤秀之会長、佐々木嘉光副会長が出席し、要望事項について説明した。また、日本理学療法士連盟から友清直樹会長代行、鳥取県理学療法士連盟から山根隆治会長が出席した。
要望事項
「防災庁における理学療法士を含む3療法士の配置を実現されたい」
出典:日本理学療法士協会.防災庁設置準備室の発足に際する防災庁における理学療法士の配置に関する要望
「要望書」提出の背景 – 災害がもたらす健康リスク
近年、日本では地震や豪雨などの大規模災害が頻発している。2024年1月の能登半島地震や同年9月の豪雨災害では、多くの被災者が長期間の避難生活を余儀なくされた。
避難生活の長期化は、以下のような健康リスクを引き起こす。
● 廃用症候群(動かないことによる筋力低下・体力低下)
● エコノミークラス症候群(血流の悪化による血栓形成)
● 嚥下機能の低下(食事のしづらさや誤嚥性肺炎のリスク)
● 精神的ストレスの増加(避難生活の不安・疲労)
これらの影響により、「災害関連死」 と呼ばれる避難生活中の死亡リスクが高まることが指摘されている。
リハビリテーション専門職の配置が求められる理由
要望書では、これらの実態を受けて「甚大な被害をもたらした災害においては、 迅速且つ円滑に医療支援体制を整える必要がある」とした上で、「3療法士による支援の強化及び整備は、喫緊の課題である」と提起した。
災害時におけるリハビリテーション専門職の配置は、以下の点で極めて重要である訴えた。
理学療法士:運動指導や廃用症候群の予防
作業療法士:避難所環境の調整、精神的サポート
言語聴覚士:嚥下機能やコミュニケーションの支援
リハビリテーション専門職が避難所や被災地で支援を行うことで、被災者の健康維持や回復を促し、災害関連死を防ぐ体制整備を含む「事前防災」の更なる強化を要望した。
今後の展望
政府は、防災庁の設立準備が進めており、災害対応の司令塔としての機能を強化する方針を示している。医療・福祉を一体的に支援する仕組みの整備が求められる中、日本理学療法士協会は3療法士の配置が防災対策の強化につながると考え、要望を提出した。
昨年6月には、「防災基本計画」が修正され、医療活動の「被災地域外からの災害派遣医療チーム(DMAT)等の派遣」の項目に、
「日本災害リハビリテーション支援協会(JRAT)」が明記されるなど、災害時におけるリハビリテーション対応への期待が高まっている。
今後、防災庁としてどのような方針が決定されるのか、引き続き注目される。
引用・参考
◾️赤澤亮正大臣(防災庁設置準備担当)に防災庁における理学療法士を含む3療法士の配置に関する要望を提出しました(日本理学療法士協会HP)
◾️防災庁設置準備室の発足に際する防災庁における理学療法士の配置に関する要望(PDF)