香川県理学療法士会は2026年3月、全国健康保険協会(協会けんぽ)香川支部と「健康づくりの推進に向けた包括的連携に関する協定」を締結しました。
中小企業の従業員を対象とした生活習慣病予防・健康づくり支援に、理学療法士が専門職として関わる可能性を広げる取り組みとして注目されます。
本協定は、「腰痛予防講座」から始まった地道な実績が、より大きな事業連携の枠組みへと発展したものです。地域の関係機関と連携して健康づくり支援に取り組む上でも参考になります。
生活習慣病予防へ広がった背景
香川県理学療法士会は、これまで香川産業保健総合支援センターと連携し、事業所に対する腰痛等の健康教育を継続的に提供し、実績を積み重ねていました。
その過程で、香川県では糖尿病に関連する健康指標が課題とされ、県の健康増進計画でも重点課題として位置づけられていることなど、より幅広い地域課題が見えてきました。
こうした背景を受け、既存の腰痛予防講座を「入口」として、生活習慣病予防を含む健康づくり支援へと事業の対象を広げていきました。
当面の取り組みとして掲げたのは次の3点です。
● 協会けんぽと連携した事業所への出前講座の実施
● 生活習慣病予防をテーマとした新たな講座モデルの構築
● モデル事業の実績を通じた事業の継続化・有料化
協定締結までのプロセス—関係機関との丁寧な調整が鍵
協定締結に至るまでには、関係機関との調整を重ねるプロセスがありました。
2025年9月には香川県健康福祉部主催のシンポジウムに参加し、行政・協会けんぽ関係者と意見交換が行われました。同年10月には、協会けんぽ香川支部に対して事業提案資料やチラシを提出し、企業向けメールマガジンを通じた講座案内の周知も進められました。
同年11月の正式な打ち合わせでは、健康づくりに取り組む「健康宣言事業所」への講座提供や、今後の連携可能性について具体的に協議されました。
こうした段階的なアプローチについて、香川県理学療法士会は「関係機関との直接面談を通じた信頼関係の構築」「相手方のニーズを事前に把握した上での提案」「提供可能なサービスの具体的な提示」が、連携を円滑に進める上で重要だったと整理しています。
2026年3月12日には、高松市内で締結式が行われ、協会けんぽ香川支部の近藤浩之支部長と、香川県理学療法士会の高橋謙一会長が協定書に署名しました。
香川県理学療法士会 高橋謙一 監事(前会長)からのコメント
今回の連携について、協定締結に向けた取り組みに会長として関わってきた香川県理学療法士会の高橋謙一監事(前会長)からコメントをいただきました。
高橋監事 本会の健康増進推進部では、働く世代を対象とした健康増進活動として、まず腰痛予防をはじめとする労働災害対策に取り組んできました。
活動を進めるにあたっては、部員向けの研修会を開催し、担い手となる人材の育成を図るとともに、香川県内の事業所を対象に腰痛予防に関するニーズ調査を実施するなど、事業化に向けた基盤づくりを進めてきました。
また、香川産業保健総合支援センターに理学療法士が在籍していたことも、産業理学療法の重要性を改めて認識する大きなきっかけとなりました。
その後、同センターが主催するセミナーへの講師派遣や、県内企業への出前講座などを通じて、企業との接点を広げてきました。さらに、「香川健康づくり推進セミナー」では、転倒予防などを目的とした運動機能チェックのコーナーを担当し、毎年多くの企業担当者とつながる機会を得てきました。
一方で、事業を展開する上での大きな課題は、人材の確保です。活動に関わる部員の多くは医療機関や施設に所属しているため、特に平日の事業展開には制約があります。その中でも、現在は対応可能な範囲で柔軟に活動を継続しています。
協会けんぽ香川支部との連携については、「健やか香川21県民会議」などの場を通じた情報交換がきっかけとなりました。そうした中で、同支部から理学療法士による生活習慣病予防の取り組みに高い関心を寄せていただき、県民の健康支援を共同で進めるための協力体制が整いました。
今回の連携は、本会が持つ理学療法士としての専門性と、協会けんぽ香川支部が抱えるニーズが一致したことで実現したものです。本会としては、腰痛予防、職場での転倒予防、生活習慣病予防など、理学療法士の知見を活かしたプログラムを提供することができます。
一方、協会けんぽ香川支部にとっては、自社で研修を実施することが難しい中小企業に対し、理学療法士の専門性を活用することで、従業員の健康維持や離職防止につなげることが期待されています。
今後は、協定に基づく取り組みの実績を一つひとつ積み重ねながら、さらなる信頼関係を築き、次のステップへと事業を推進していきたいと考えています。
働く世代の健康づくりを支援する理学療法士
今回の協定締結は、腰痛予防をはじめとする労働災害対策への取り組みを起点に、香川県理学療法士会が行政、保険者、産業保健関係機関との接点を段階的に築いてきた成果といえます。
高橋監事(前会長)のコメントにもあるように、企業向け講座や健康づくりイベントを通じた地道な活動が、協会けんぽ香川支部との協力体制につながりました。
一方で、事業を継続していく上では、平日の日中に活動できる人材の確保など、今後に向けた課題も残されています。
協定に基づく実績を積み重ねながら、腰痛予防、職場での転倒予防、生活習慣病予防など、働く世代の健康づくりに理学療法士がどのように関わっていくのか、今後の展開が注目されます。
引用・参考
■ 香川県理学療法士会との健康づくりの推進に向けた包括的連携協定(協会けんぽ香川支部HP)
■ 理学療法士・作業療法士の地域・職域での予防・健康づくりを目的とした保健活動を推進するための伴走支援のあり方に関する検討と普及事業 報告書(日本理学療法士協会HP)
■ 成人の健康づくりに寄与するための手引き(実践版)(日本理学療法士協会HP)