7月23日、日本慢性期医療協会(日慢協)は定例記者会見を開催し、「骨折・転倒を防ぐ攻めのリハビリ 〜寝たきり・要介護を防ぐ、これからの予防的リハビリ〜」をテーマに提言を行いました。
近年、国の「骨太の方針」や厚生労働省において「予防医療」への言及が増加しています。
本会見では、健康寿命の延伸を阻害し、要介護化や重度化の大きな要因となっている「骨折・転倒」を防ぐため、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)をはじめとするリハビリテーション専門職が、「転倒リスク健診」を導入し予防領域で積極的に介入する「攻めのリハビリ」の必要性が強調されました。
健康寿命の伸び悩みと、要介護化の最大の敵「骨折・転倒」
現在、我が国の健康寿命の伸びは停滞傾向にあるとされています。日慢協の橋本会長は、健康寿命を縮め、要介護の原因や要介護度の重度化要因として、骨折・転倒の寄与する割合が大きいと指摘しました。
骨折・転倒は「事故」であるため、「認知症や脳血管疾患などの『疾患』とは異なり、身体機能の改善や環境設定の見直しといった具体的な介入により予防・結果の可視化がしやすい」と述べ、リハビリテーション専門職による介入の重要性を強く訴えました。
活躍の場は「予防・健康増進」へ、PT・OT法の見直しも視野に
国も予防分野におけるリハビリテーション専門職の活用に本腰を入れています。5月19日には、厚生労働省内に「リハビリテーション統括調整室」が設置されました。
これに伴い、「
理学療法士及び作業療法士法」の制度的な見直しが検討される可能性が示唆されています。
現在の法律(第2条)では、理学療法の対象は「身体に障害のある者」、作業療法の対象は「身体又は精神に障害のある者」と規定されています。
近年の動きとして、予防の段階にある「障害のない健康な高齢者」に対してもPT・OTがアプローチできるよう、約60年ぶりに役割の変化を踏まえた見直しが求められています。
提言:「転倒リスク健診」の導入とPT・OTの専門性活用
日慢協は「攻めのリハビリ戦略」として、要介護になる前の予防的リハビリテーションを評価する制度創設に向け、以下の4つの提言を行いました。
- 高齢者への「転倒リスク健診」導入 身体機能、生活環境、栄養、服薬、骨粗鬆症などを総合的に評価する健診制度を導入する。
- 転倒リスク健診の担い手として理学療法士・作業療法士を位置づける 要介護前の転倒リスク評価を担う専門職として活用する。
- ICT・AIを活用した自宅環境評価の簡便化 自宅の写真や動画からAIが段差などのリスクを抽出し、高リスク者に重点的な訪問や環境調整を行えるようなシステムを開発・活用する。
- 要介護になる前の予防的リハビリを評価する制度創設 介護保険の前段階で、骨折・転倒を防ぐ支援を提供できる仕組み(点数化など)をつくる。
病院から地域へ。求められるセラピストの地域進出
質疑応答の中で橋本会長は、理学療法士や作業療法士が地域に不足しており、病院(回復期リハ病棟など)に偏在している現状を指摘しました。言語聴覚士(ST)についても地域にはほとんどいないのが顕著であると述べています。
今後の展望として、学校医が学校検診を行うように、市町村などの地域で「転倒リスク健診」が実施される際には、病院所属の理学療法士・作業療法士が地域へ出向いて評価を担うような形が必要になるとの見解を示しました。
引用・参考
■ 定例記者会見 令和8(2026)年7月23日(日本慢性期医療協会HP)