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2026.06.25

【インタビュー】クラスをデザインする訪問型の『学校作業療法』|ゆいまわる仲間知穂さん



近年、作業療法士が学校に出向き子どもの支援をする『学校作業療法』が注目されています。作業療法士が関わるため、「発達障害の子を見つける」「個別支援をする」といった印象を抱かれる方も多いのではないでしょうか。

学校作業療法に取り組む事例は増える一方で、支援内容は幅広く一概に説明できるものではありません。

それぞれの地域や学校で起きている課題に対して、作業療法士がどのように活躍しているのか。その実態を学ぶために、沖縄県で長きにわたり学校作業療法に取り組まれている「ゆいまわる(YUIMAWARU株式会社)」の作業療法士・仲間知穂さんにお話を伺いました。





先生とともにクラスをデザインする『学校作業療法』


ー 学校作業療法と聞くと、先生にアドバイスをしたりするイメージですが、ゆいまわるさんはどのように関わっているのでしょうか。

仲間さん 私たち「ゆいまわる」は、保育園・小学校・中学校・高校の先生や保育士さんが届けたい教育・保育をクラス全体に届けられるよう、「クラス」を作業療法の視点で分析し、先生自身がデザインしていけるよう支援しています。

あくまで、学校は先生と子どもたちが主人公です。作業療法士が学校で主人公になることはありません。

「ゆいまわる」の技術提供には大きく二つの発注元があります。

一つは児童福祉法に基づく「児童発達支援」や「保育所等訪問支援事業」を活用した福祉サービスとしての関わりです。これは保護者から依頼を受けて、18歳までの子どもさんを対象に「サービス利用計画」を立てるところから継続的な相談支援などを行います。

もう一つは行政から委託される「学校訪問(まちOT)」です。作業療法士が保育園やこども園・小学校・中学校を定期的に巡回し、先生とともにクラスをデザインするための支援をしています。

どちらも「学校や保育園に作業療法士が行く」ことは共通していますが、私たちは子どもを「個別に見る」のではなく、その子の力を最大限に発揮させながら集団にどう参加できるかを分析し、先生や保護者がクラスの授業や活動のやり方を自分でデザインし直せるよう支援します。




行政から委託される「学校訪問」とは


ー 作業療法では発達に関するアプローチのイメージがありますが、子どもの個別支援ではなく、クラスのデザインとはどのような支援をされているのでしょうか。

仲間さん 行政委託型の学校訪問では、依頼相手は保護者ではなく「学校」になります。

学校から「来てください」と依頼が入ると、一回の訪問でおよそ2クラスを担当します。例えば「3年4組と3年7組を見てほしい」という依頼に対して、午前中にそれぞれのクラスで2〜3名の子どもを観察・分析します。そして放課後、担任の先生と30〜45分ほどの話し合いの場を持ちます。

この話し合いでは、こちらから一方的に「この子はADHDです」といった診断的な指導は一切しません。「先生が届けたい教育とは何ですか?」とまず伺い、そこから「その教育をこのクラス全員に届けるためのデザインをどう考えるか」という方向で作業療法士としての分析を共有していきます。

すると先生は「そんなことで立ち歩いていたんだ」「じゃあこういう声かけにしてみよう」と、自分自身でクラスのやり方を組み直していきます。決して解決策やアドバイスを先生にするのではなく、先生が自ら考えるための情報を提供するのが役割です。

支援が必要な子どもは発達障害のある子に限りません。保護者との関係でうまくいっていない子、他者に傷つけられた経験からトラウマを抱えている子など、困りごとの背景は多種多様です。先生が「この子たちの可能性をもっと開きたいと思った瞬間」が事業のスタートになります。




— 実際に教室でよく見られる困り感の例と、アプローチを教えてください。

仲間さん 最も多いのは「自分を発揮できていない子ども」です。友達とうまく交流できない、授業に参加できないといった表面的な問題の背景にあるのは、自信のなさや不安であることが非常に多いです。

アプローチとしては、「その子が学校の中で思わず熱中できる小さな作業を見つける」ことから始めます。給食の時間に顔がほころぶもの、時間を忘れて取り組めるものなど、その子のワクワクの種を探します。

次に、その子がワクワクできるものと、先生が授業や給食・休み時間の中でデザインしたい活動が「重なる点」を見つけます。重なる点で、子どもが「これなら自分でもできる!」と感じられる難易度と登場の仕方でデザインします。

例えば給食当番を「はい、やってください」ではなく、「今日、給食当番が一人足りなくて困っているんだよね」と先生が自然に場面をつくり、その子が出番を感じて動き出します。そうして子どもが主となり動き出す場面を、場面の仕込み方や先生の表現も含めて先生と一緒にデザインします。

この場合、「給食当番」が「作業」であり、作業をどのように組み替え、どんな環境で提供すればその子が自発的に動き出し、先生もそれを「いいね」と思えるか、これこそが作業療法士の技術です。




— 先生への「台本渡し」ではなく、先生自身が描けるようにするという点が印象的ですね。

仲間さん あくまで私たちの役割は舞台の構造を描くことです。「この子が怯えているのはなぜか」「これまでどんな経験があり、どんな可能性があるか」発達障害の診断名ではなく、その子のストーリーを先生に伝えます。

すると先生は「そういうことか、だったら私がこうしてみよう」と、自分で台本を書き始めます。先生が自分の手で教育を届けられたという達成感、子どもが自分でできたという自信、両者が同時に幸せになる瞬間をつくることが、「届けたい教育を叶える学校作業療法」の核心です。


臨床と哲学で育てる専門性


— 学校作業療法に必要な知識や技術はどのようにしたら学べますか?

仲間さん 養成校で学んだことが1だとすると、学校作業療法に必要な知識は10くらいあります。「残りの9」は臨床で学ぶしかありません。

運動学・脳神経学・発達の知識は当然必要で、授業中に立ち歩く1人の子を見るにしても「この子の脳内でどういう情報処理が起きているか」「どこでパンクしているか」を分析することが求められます。これは養成校で習ってきたことそのものですが、10分の1ほどしか役立てられないのが現実です。

また子どもの理解だけでも不十分です。それと同じくらいの比重で、先生や保護者の心が動く面接技術、学校・子育て文化への理解と敬意、言葉の選び方や振る舞い方なども必要になります。

さらに、作業をとおして人をどう幸せにするかという哲学は、学校では教えてもらえません。社会に出てから学ぶものです。まずはしっかり臨床で様々な経験をして色んな考えや人に触れることが大切です。




本質的な学校作業療法を届けるために


— 行政や教育委員会と連携する際、学校作業療法の価値をどのように伝えるのですか?

仲間さん 市町村の教育委員会であれば、「今一番取り組みたいこと=今うまくできていないこと」があります。先生不足、支援員の不足、特別支援の対応が追いつかないといった課題が目の前にあります。そこに学校作業療法をリンクさせて話します。

大切なのは、相手が「解決したいこと」の奥にある「本当に実現したいこと」を引き出すことです。

例えば「授業中に立ち歩いてしまう子を何とかしたい」という相談の裏には、「この子に楽しいと思いながら授業に参加してほしい」という根本の願いがあります。そこを言語化できた瞬間、先生や保護者は自然に「もっとやりましょう」と動き出します。

目の前の課題解決だけでなく、その言葉の背景や先生一人一人の想い、描きたいクラスまでを想像して作業療法がどのように役立つのかお伝えします。



— 「作業療法士」だからこそ選ばれるために、大切にされていることを教えてください。

仲間さん 需要と供給のバランスを崩してはいけない、というのが私の考えです。学校作業療法はとても楽しそうで興味を持ってくださる方もとても増えています。

しかし、学校作業療法は「非常に難しい技術である」ということを同時に伝えなければ、技術の伴わない作業療法士が現場も自分も傷つけてしまう事態になりかねません。

様々な支援職がいる中で、「作業療法士だからこそできる価値提供」をお伝えしなければ他の職種でよいとなりかねません。

機能の分析も環境との相互作用も先生のやりたいことの追求を統合して、クラスをデザインする技術を持った専門家としてこの分野に参戦してほしいと思います。

学校作業療法を取り入れようとした場合に、先生や自治体が歩み寄ってくれないという声もありますが、それは「ぜひお願いしたい!」と言いたくなるような技術者に作業療法士側がなることが先決です。

作業療法士として誇りを持ち、その技術でしかできないことに磨きをかけ続ける「専門家」として向き合っていただきたいです。

「届けたい教育を支援」(YUIMAWARU株式会社)



ー 最後に仲間さんの想いをお聞かせください。

仲間さん この仕事は「超難しくて、超面白い」。「ゆいまわる」の職員がこれだけ難しい技術にトライし続けるのは、本当に面白いからです。私たちは平成28年から取り組みを続けてきましたが、常に難しいと感じながら日々技術を磨いています。

子どもたちは生まれてから100%を超えて生きています。大人のように忖度しない、その多様な個性がクラスにあることで、周りの子どもたちも育っていく。発達の特性により一筋縄では生活が組み立てられない子がいてくれたからこそできる、一期一会の教育が生まれます。

作業療法士が学校に入ることの意義は、問題を引っ込めることではなく、ありのままのその子がいてくれたからこそできるオンリーワンの教育を作り出せる技術者であることにあります。

先生もその教育でしか幸せになれないし、そのクラスに在籍したすべての子どもたちの人生に、何らかの影響を与えていく。そういうことができる職種だから、「本気の作業療法」をやりましょう。このメッセージを、多くの仲間に届けたいと思っています。



引用・参考
■ YUIMAWARU株式会社 公式HP
飛騨市の小中学校で「学校作業療法室」を設置、OTが教育現場で支援(PT-OT-ST.NET)
日本学校作業療法研究会
インクルージョン推進に向けた施設等へのアウトリーチ支援事例集(P30〜32):令和7年度 子ども・子育て支援等推進調査研究事業(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)

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