6組(12個)のコーンを並べれば準備でき、特別なトレーニング機器は必要ありません。所要時間は約20分。継続して取り入れることで、ケガのリスクが約3割低くなったと報告されているウォームアッププログラムをご存じでしょうか。
それが、国際サッカー連盟(FIFA)の医療評価研究センター(F-MARC)が開発した「FIFA 11+」です。マニュアルや指導動画は無料で公開されており、日本語版は日本サッカー協会(JFA)のサイトから見ることができます。
本記事では、動画を交えながら具体的な動きやエビデンス、継続するためのポイントを紹介します。
FIFA 11+とは?約20分・15種目のウォームアップ
FIFA 11+は、14歳以上のアマチュア選手を主な対象に、国際的な専門家グループが実践知見をもとに開発した傷害予防ウォームアッププログラムです。
FIFA 11+は、いつものウォームアップに「追加する」のではなく「置き換えて」行う、約20分・3パート15種目のプログラムです。
● パート1(8分)
ゆっくりとしたランニングに、動的ストレッチや2人1組での軽い接触動作を組み合わせたもの
● パート2(10分)
体幹・下肢の筋力、バランス、ジャンプ着地などの種目を、初級→中級→上級の3段階で行うもの
● パート3(2分)
ランニングにプラント&カット(方向転換)動作を組み合わせたもの
コース自体の準備も簡単で、5〜6m間隔でコーンを6組並べるだけ。パート1・3ではそのコーンの内側を2人1組で往復しながら種目をこなします。
全種目を通じて、下肢アライメントを崩さないこと、膝をつま先の真上に保つこと、着地を柔らかく行うことが徹底されています。
【動画】The "11+" Warm-up: Part 15
エビデンスが示す予防効果─ケガのリスクが3割減
Sadigursky ら(2017年)が、6件の研究、計6,344人分のデータをまとめたところ、FIFA 11+を行ったグループでは、行わなかったグループに比べてケガのリスクが約3割低いことが示されました。
国内でも同様の傾向が報告されています。馬越ら(2019)は、関東大学女子サッカーリーグ1部の選手235名を対象とした比較試験を実施した結果、実施グループはケガ全体の発生率が約4割、ACL・MCL損傷を含む膝の急性外傷が約6割少なく、スプリント、敏捷性、ジャンプ能力の指標が改善しました。
なぜ効果が出るのか|4つの運動学的ポイント
FIFA公式マニュアルは、効果的な傷害予防プログラムの鍵となる要素として、図に示す4つの要素を挙げています。
理屈を細かく知らなくても始められるのがFIFA 11+の魅力のひとつです。
プログラムでは、体幹の安定性、バランス感覚、ハムストリングスの使い方、着地やジャンプ時の体のコントロールといった、ケガにつながりやすい動きの質を、シンプルな種目の繰り返しの中で自然に高める設計になっています。
詳しい理論を知りたい方は、公式マニュアルに詳しい解説があります。
現場で続けるためのポイント
公式マニュアルは、効果を左右する最大の要因を「遵守率(コンプライアンス)」としており、実施の目安は週2回以上、効果を得るには10〜12週間ほどの継続が必要としています。
リハビリテーション専門職が関わることができる場面も多く、種目のレベル設定の判断支援や、着地動作・下肢アライメントのチェックとフィードバック、コーチ・選手への声かけなど、「現場で続けられる仕組み」をつくる部分で専門性の発揮も期待されます。
まずは動画を見てみませんか?
FIFA 11+は、特別な道具も難しい理論も必要とせず、今日からでも始められるプログラムです。
世界のトップレベルの戦いに注目が集まっている今だからこそ、担当するチームや選手に話しやすいタイミングでもあります。
まずは公式動画を1本見てみることから始めてみてはいかがでしょうか。
引用・参考
◾️FIFA 11+ 公式マニュアル(PDF)
The "11+" A complete warm-up programme to prevent injuries
◾️FIFA11+ 日本語版(日本サッカー協会HP)
◾️FIFA 11+ Warm-up Program 再生リスト(FIFA公式YouTube)
◾️Soligard T, Myklebust G, Steffen K, et al. Comprehensive warm-up programme to prevent injuries in young female footballers: cluster randomised controlled trial. BMJ. 2008;337:a2469. DOI: 10.1136/bmj.a2469
◾️Sadigursky D, et al. The FIFA 11+ injury prevention program for soccer players: a systematic review. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation. 2017;9:18. DOI: 10.1186/s13102-017-0083-z
◾️馬越博久, 干場拓真, 佐保泰明, 広瀬統一, 福林徹. 傷害予防プログラム「FIFA 11+」が大学女子サッカー選手の傷害発生率およびパフォーマンスに与える影響. 日本臨床スポーツ医学会誌. 2019;27(3):440-449. (日本臨床スポーツ医学会 HP)