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2025.01.24

セラピストの新たなキャリア ー 産業保健領域の話 ー



【はじめに】

セラピストの多くは病院や介護施設で活動していますが、新たなキャリアとして「産業保健領域」が注目を集めています。

厚生労働省は、第14次労働災害防止計画1)の重点対策の中で、作業行動に起因する労働災害や高年齢労働者の労働災害対策の推進を掲げており、姿勢・動作の分析や高齢者の身体・精神的特徴に関する知見を持ったセラピストは、今まさに活躍が求められています。

今回は、産業保健領域で国が求めていることに対して、セラピストが貢献できる可能性について探っていきましょう。


【日本の労働災害の現状】

令和5年の日本の労働災害の発生状況2)によると、第一位が「転倒」、第二位が腰痛の要因となる「動作の反動・無理な動作」であり、転倒に関しては高齢になるほど発生件数は上昇する傾向にあります3)。そして転倒による労働災害は年々増加傾向にあり、重大な社会問題となっています。



その要因の一つとして挙げられるのが、高年齢労働者の増加です。雇用者全体の約20%が60歳以上となっています。

労働災害全体で見ても60歳以上の死傷者数の割合が大きく、約30%を占めており、年々増加傾向にあります4)。高年齢労働者の労働災害防止対策が喫緊の課題と言えます。




【高年齢労働者への対策】

厚生労働省は令和2年3月に、働く高齢者の特性に配慮したエイジフレンドリーな職場を目指す目的で、エイジフレンドリーガイドライン5)を策定しました。

高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害の予防的観点からの高年齢労働者の健康づくりを推進するために、企業や労働者は対策が求められています。



対策を推進するためにエイジフレンドリー補助金が創設されています。

同補助金は、高年齢労働者の労働災害防止対策における機器の購入や環境整備のための工事から、発生件数の多い転倒や腰痛予防の為の身体機能チェックや運動指導などが対象となっています。添付の画像は、令和6年度の補助要件6)です。

補助要件

それぞれのコースの要件は以下のとおりです。


令和6年度のエイジフレンドリー補助金は、申請締切日の1か月前に限度額に達し、申請受付が終了となりました。

令和7年度の予算案では、新たな対策コースの新設や予算の増額が掲げられており、ニーズが高まっています。


【産業保健領域で活躍する為に必要なこと】

これまで述べてきたようにセラピストは今、産業保健領域で貢献していくことが求められています。

日本産業理学療法研究会では昨年、産業保健分野における理学療法の独自性、専門性を明確にし、産業保健スタッフからの信頼、社会からの認知を得て理学療法士の活動をさらに普及させるために、「産業保健理学療法の定義」が定められました7)。セラピストが産業保健領域に貢献していくための、環境整備が進んでいます。



一方で、産業保健の現場でセラピストとしての価値を提供するには産業保健職や人事労務担当者など多職種で連携することが求められ、産業保健領域の知識の習得が必須となります。

理学療法士を対象とした調査8)において、産業保健や健康経営に関して体系的に学習した経験があると回答した割合は、11%に留まります。産業保健領域でセラピストが貢献していくには、体系的な学習が必要となります。




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【参考文献】
(1)第14次労働災害防止計画の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001287386.pdf

(2)令和5年労働災害発生状況の分析等
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/dl/s23-16.pdf

(3)第1回産業保健のあり方に関する検討会.産業保健の現状と課題に関する参考資料
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001001488.pdf

(4)令和5年 高年齢労働者の労働災害発生状況
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/001099505.pdf

(5)高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000609494.pdf

(6)エイジフレンドリー補助金について
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001158947.pdf

(7)佐藤 友則ほか.産業保健理学療法の定義について.日産保理誌,2(1):18‒20,2024
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpoh/2/1/2_18/_pdf/-char/ja

(8)産業保健・健康経営における課題と理学療法士活躍の可能性に関する調査事業報告書
https://www.japanpt.or.jp/activity/asset/pdf/20240331_chousajigyou_houkokusho.pdf

この記事を書いた人

株式会社バックテック

肩こり・腰痛対策支援サービス ”ポケットセラピスト” を運営。
「全人類が健康に活き活きと暮らし、社会に貢献できる世界をつくる」をミッションに、慢性痛に悩む労働者を医療職がオンライン上でマンツーマンサポートしていくサービスを提供しています。ポケットセラピストにご興味がある方は、是非お気軽にお問い合わせください。

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