治療しながら働く人を支える「両立支援コーディネーター」をご存知でしょうか。
働く人の3人に1人がなんらかの治療を受けながら働いており、専門的な知識を持たない企業にとって、治療しながら働く人をどう支えるかが課題になっています。
そこで注目されているのが「両立支援コーディネーター」です。現在は看護師や医療ソーシャルワーカー(MSW)が取得するケースが多いですが、リハビリテーション専門職の間でも取得者が増えています。
退院後の生活や職場復帰を見据えた支援を考えるうえで、この資格で学ぶ知識はリハビリテーション専門職の視野を広げるきっかけになるかもしれません。
この記事では、リハビリテーション専門職として「両立支援コーディネーター」をどう活かしていくかについて考えていきます。
両立支援コーディネーターとは
両立支援コーディネーターとは、病気を抱えながら働く人が「治療」と「仕事」を両立できるよう支援するサポーターです。
病気を抱えながら働く人にとって、職場と医療機関の連携が欠かせません。
しかし、職場は病気に関する知識が少ないためどのような配慮をすればよいかわからず、医師も仕事の詳細がわからないため、病気を抱えながら働く人へ何を指導すればよいかわかりません。
そのような場面で、両立支援コーディネーターが間に立ち、たとえば「重いものは10kgまで」「治療のために2週間の休みが必要」といった病気への配慮を職場にわかりやすく伝えると同時に、仕事の内容や職場環境を医師に共有します。
両立支援コーディネーターは、病気を抱えながら働く人が安心して働き続けられる環境づくりを支えます。
なぜ治療と就業の両立支援が必要なのか
厚生労働省の資料によると、少子高齢化が進む中、働く人の3人に1人がなんらかの治療を受けながら働いているといわれています。
そのなかで、治療を受けながらも働きたいと考える人は多い一方、職場の理解や支援体制が十分でないために離職してしまうケースも少なくありません。
疾病を理由に退職した人の退職理由を見ると、「治療と仕事を両立できるような就業形態がなかった」「治療や静養に必要な休みをとることが難しかった」など、職場環境の整備不足に課題があるのが現状です。
こうした課題に対し、厚生労働省は働き方改革実行計画を策定し、企業と医療機関の連携マニュアルの作成や、両立支援コーディネーターの育成・配置など、さまざまな取り組みを進めてきました。
また、令和8年4月からは、職場における治療と就業の両立支援への取り組みが事業主の努力義務となり、両立支援コーディネーターへの注目はさらに高まっていくことが予想されます。
診療報酬においても「療養・就労両立支援指導料」が拡充されるなど、国として両立支援を後押しする動きが続いています。
両立支援コーディネーターの基礎研修
両立支援コーディネーターになるには、独立行政法人労働者健康安全機構が実施する基礎研修の受講が必要です。
研修内容は、医療・産業保健・労務管理・社会資源といった幅広い知識に加え、コミュニケーションの取り方やがん・精神疾患への対応など、現場で必要なスキルを総合的に学べる構成になっています。
産業保健や労務管理など、病院勤務のリハビリテーション専門職が普段あまり触れることのない領域も含まれており、企業側の視点や産業保健分野への知識を深める機会にもなります。
令和7年時点で、34,396人が両立支援コーディネーターの基礎研修を修了しています。
働き方改革実行計画を踏まえた取り組みが始まった平成29年度以降、修了者数は年々増加しており、社会的な関心の高まりがうかがえます。
両立支援コーディネーターの知識はリハビリテーション専門職の幅を広げる
現状では、両立支援コーディネーターは主に産業保健分野や企業で活躍しており、関連した診療報酬上の加算を算定できるのも看護師・社会福祉士・精神保健福祉士・公認心理師に限られています。
病院に勤務するリハビリテーション専門職がこの資格を取得して院内で活かす機会は、現時点では一般的とはいえません。
しかし、この資格で学ぶ知識は、以下のような場面でリハビリテーション専門職としての幅を広げることに役立つものではないでしょうか。
● 退院後の就労を見据えた具体的なアドバイスができるようになる
● 企業・支援機関・医療機関と共通言語で話せるようになり、関係機関との連携がスムーズになる
● 産業保健分野への理解が深まり、視野が広がる
病院で働くリハビリテーション専門職にとって、企業側の視点や産業保健分野の知識はイメージしにくい部分もあるかもしれません。
両立支援コーディネーターの知識はそこを補い、退院支援の幅を広げてくれるのではないでしょうか。
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参考・引用
■ 令和7年度 両立支援コーディネーター基礎研修 申込要領(独立行政法人労働者健康安全機構)
■ 治療しながら働く人を応援する情報ポータルサイト 治療と仕事の両立支援ナビ(厚生労働省)
■ 治療と仕事の両立支援対策について(厚生労働省)
■ JILPT 調査シリーズ No.241.治療と仕事の両立に関する実態調査(患者WEB調査)(労働政策研究・研修機構)
■ 働き⽅改⾰実⾏計画に基づく事業場における治療と職業⽣活の両⽴支援について(厚生労働省)
■ 治療と就業の両立支援指針(厚生労働省)