日本理学療法学生協会(JPTSA、以下「学生協会」)という、理学療法士を目指す学生が集う団体があることをご存じでしょうか?
臨床の現場では、近年の学生が養成校の外でどのような活動をしているのか知る機会が少ないかもしれません。
学生協会は、大学を越えた交流やイベントを通して、学生が学びや将来について考えるきっかけをつくっています。
今回は、今年度の学生協会会長を務める柳原さんにもお話を伺いながら、活動の様子を紹介します。学生協会についてまだ知らなかった方も、ぜひ気軽に読み進めてみてください。
そもそも学生協会とは?
学生協会は、学生同士や現役理学療法士とのつながりを通して、将来への不安を解消し、自分の強みや進みたい道を見つけるきっかけをつくることを目指して活動しています。
理学療法を学ぶ学生が全国から参加しており、企画や運営、広報活動まで、すべて学生で構成されています。
今回、学生協会の現状を知るため、日本理学療法学生協会の会長 柳原凪陽さんにお話を伺いました。
ー 学生の参加状況と地域差について教えてください。
柳原会長 現在は277校ある養成校のうち、45校から138名の学生が参加しています。関西や関東では学生数が多いこともあり、参加する学生は比較的多いです。
一方で、全国の養成校の数に対して参加校は限られており、活動が十分に届いていない地域もあります。
また、同じ学校に先輩がいる場合は参加につながりやすいものの、新規の学校では団体そのものが知られていないことが多く、参加が広がりにくいという課題もあります。
そのため、学会で大学教員へ案内を依頼したり、賛助会員の方に母校へ情報を届けていただくなど、認知を広げる取り組みを行っています。
ー 地域ごとに支部があるようですが、主にどのような活動をされていますか?
柳原会長 学生協会には全国に支部があり、支部ごとにテーマを決めて学生同士で意見を交わす機会や現場の理学療法士とつながるイベントなど、さまざまな取り組みが行われています。
SNSでは、学生たちの企画の様子や学びの場づくりが発信されていますので、その一部をご紹介します。
北海道・東北支部、関東支部、中部支部、関西支部、中国支部、九州支部に分かれており、支部ごとに企画をしています。
特に国際部ではスタディーツアーを通じて海外の学生とも交流し、国際的な視点で学びを深める活動を行うなど、国を超えた取り組みをしているのも特徴です。
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理学療法学生交流会・支部大会他学校に通う学生と意見交換をする場づくりや様々な分野で活動する理学療法士との交流イベントなど、つながりづくりにおける活動を行っています。
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イベント「PTagora!」令和6年度から開始した「PTagora!」は、学生と現役理学療法士が実際に会場へ足を運び交流できるイベントで、理学療法の現状や将来について意見を交わし、学びを深める場となっています。
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オンラインセミナー病院だけでなく企業や介護予防など多様な分野で活躍する理学療法士を講師に招き、臨床での経験や考え方を学べるセミナーを定期的に開催しています。
3月には、日本理学療法士連盟による講演も実施いただき、専門的な知見に触れる機会が広がっています。
活動への思いと今後の展望
ー 学生協会として大切にしている思いや、今後どのような方向性を目指しているのか教えてください。
柳原会長 JPTSAは「繋~未来を彩るいまにトキメキを~」というパーパスのもと全国各地で様々な活動を行っています。
全国各地の理学療法学生や社会人の方と関わることで、漠然とした悩みや不安を解消できること、自身のモチベーションを向上させることができるのはJPTSAの強みです。
理学療法士が飽和化すると言われる中で、自分の強みは何なのか、将来自分は理学療法士としてどんな生活を送るのだろうか。漠然とした不安を抱える学生にとって、他大学の学生や社会人との交流は、自分自身と向き合い将来について深く考えるきっかけになると思います。
JPTSAでは学校生活だけでは学べないことをたくさん学ぶことができます。そして、そこにはたくさんの人との出会いがあります。
JPTSAを通して得た知識、情報、繋がりが様々な形で学生の未来を彩ってほしい。その未来に繋がる“いま”、学生が実際に見て、聞いて、触れて心が動く瞬間、トキメク瞬間をJPTSAとして作れるよう日々活動しています。
ー これからどのような活動を進めていきたいと考えていますか?
柳原会長 今後取り組みたいことは、大きく3つあります。
● 理学療法士の職域に触れる機会を広げる
● 賛助会員様との関わりを通じて、臨床以外の働き方を知る場をつくる
● 学会とのコラボ企画を検討し、学生が学会に参加しやすい環境を整える
学生がさまざまな働き方に触れながら将来を考えられるような環境をつくっていくことが、学生協会がこれから進めていきたいと考えている方向性のひとつです。
学校では臨床を中心に学ぶため、学生のうちに他の働き方を知ることは選択肢を広げる助けになると考えています。
学生協会のイベント『PTagora!』では、デイサービスや訪問看護、自費リハなどで働く理学療法士の方々にお越しいただき、現場の経験や、かつて臨床で勤務していた頃の話を領域別に共有していただいています。
また、デイサービスや訪問看護、自費リハなどの施設には見学に行く機会もあり、こうした多様な働き方に触れることが、学生にとって早い段階から将来を考えるきっかけになればと思っています。
日本理学療法学生協会(JPTSA)では、さまざまな活動が展開されています。
本記事ではその一部を紹介していますが、詳細は公式HPでご確認いただけます。興味のある方はぜひご覧ください。
今回お話を聞かせてくださった柳原会長、ありがとうございました。
各支部の活動
● JPTSA国際部
スタディーツアーを通じて海外の学生とも交流し、国際的な視点で学びを深める活動を行っています。
● JPTSA北海道・東北支部
勉強会や企画を通して学びを深める場をつくっています。
● JPTSA関東支部
参加学生が多く、さまざまな施設訪問やコミュニティ企画などを行っています。
● JPTSA中部支部
講師を迎え、臨床の視点を学べる勉強会や講座を実施しています。
● JPTSA関西支部
施設見学や講師を招いた企画など、実践的な学びを得られるイベントを定期的に行っています。
● JPTSA中国支部
医療学生×医療従事者交流会の参加や講師を招いた支部大会など、学生と現場をつなぐ活動を行っています。
● JPTSA九州支部
日本基礎理学療法学会とのコラボ企画やミーティングなど、継続的に学びと交流を深めています。
参考・引用
■ 日本理学療法学生協会 ホームページ
https://jptsa.net/