厚生労働省は6月15日、社会保障審議会介護給付費分科会の第258回会合を開催。通所系サービスや短期入所系サービスについて、令和9年度介護報酬改定に向けた検討の材料となる資料が示されました。
資料では、各サービスの現状やこれまでの改定内容、事業所数・利用者数の推移、収支差率、サービス提供体制などについて現状と課題が整理され、次期改定に向けて議論が開始されています。
通所介護・通所リハの経営状況と利用者の推移
通所介護・地域密着型通所介護の事業所数は、平成28年度までは増加傾向にありましたが、それ以降はほぼ横ばいで推移しており、受給者数も平成31年度以降は横ばいが続いてることが示されました。
通所リハビリテーションの請求事業所数は、近年減少傾向にあり、令和7年の受給者数は約60万人(要支援約20万人、要介護約40万人)であると報告されました。
経営面では、令和6年度決算における収支差率(税引き前、物価高騰対策補助金を含まない)は通所介護6.2%、通所リハビリテーション2.0%、訪問リハビリテーション10.8%との調査結果が提示されました。
通所リハビリテーションの実施内容とADL改善の実態
厚生労働省は、高齢者の生活期リハビリテーションの
イメージ図を示し、「リハビリテーションは、単なる機能回復訓練ではなく、潜在する能力を最大限に発揮させ、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものである」との考えを提示しました。
一方、通所リハビリテーションで実際に提供されている内容は、筋力増強訓練・関節可動域訓練・歩行訓練(平地)の割合が高い実態にあることを指摘しました。
また、
通所リハビリテーション計画書の目標をみると、身体機能の維持・向上が約70%を占める一方、ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)の改善を目標とする割合は20〜30%にとどまっているとの現状が示されました。
アウトカムの実態では、利用開始6ヵ月後のADL改善が約26%、IADL改善が約36%とのデータが報告され、通所リハビリテーションとして「活動・参加」へのアプローチをどのように考え、強化するかが問われています。
令和6年度改定による影響、要件のあり方も議論
令和6年度改定では、リハビリテーションマネジメント加算に口腔・栄養の情報を一体的に共有する
新たな区分(ハ)が設けられ、PDCAサイクルの推進が図られました。
また、リハビリテーション・個別機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の推進や、医療機関からの退院後早期の連続性を確保するため医療機関のリハ計画書の受け取りも義務化されました。
一方で、加算が十分に活用されていない実態も浮き彫りになっています。認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定率は、(Ⅰ)3.0%、(Ⅱ)0.4%と極めて低く、生活行為向上リハビリテーション実施加算も1.6%にとどまっていることが指摘されました。
算定困難の理由には「対象となる利用者がいない」「研修修了者がいない」「リハビリテーションマネジメント加算の算定が困難」等が挙げられており、要件のあり方と専門職の配置状況が議論の焦点となっています。
送迎における深刻な負担
通所系サービスの現場で「送迎業務」が大きな課題となるなか、厚労省の調査より、送迎を担うのは事務職員等が多く、送迎体制は「基本的に一人で対応している」が73.0%と最も多く、次いで、「重度者に対応する場合、複数人で対応している(38.9%)」であるとの実態が報告されました。
また、送迎の課題として「シフト組みが負担」が5割強、「職員の確保が課題」が4割強、「個々の利用者で利用時間が多様」が4割弱であり、現場の負担が指摘されています。
さらに、最も時間のかかる利用者の片道送迎時間は「30分〜60分未満」が51.7%と過半数を占めていることが資料にて示されました。
特に、離島や中山間地域では送迎時間の長さが際立った課題となっており、他事業所との共同送迎や居住実態のある場所への送迎を認める柔軟な運用が求められています。
厚生労働省は資料の中で、介護施設等における共同送迎及び車両有効活用の事例についても紹介しました。
令和9年度改定に向けて
分科会では、「報酬体系の簡素化」がサービス全体に共通した論点として示されました。
介護報酬体系全体で加算の増加による複雑化が進むなか、算定率の低い加算の統合・整理を通じ、事業者の事務負担軽減と利用者にとっての分かりやすい制度設計が求められています。
また、質の高いサービスの提供の観点では、中重度者や認知症高齢者が在宅生活を継続できるよう、日常生活上の機能向上や自立支援に資するサービスの評価のあり方についても問われています。
単なる身体機能訓練にとどまらず、利用者の生活環境やADL、社会参加までを見据えたリハビリテーション計画の策定と、それを裏づける報酬上の評価についてどのように整理するのか。令和9年度介護報酬改定に向けて、今後の議論の行方が注目されます。
引用・参考:
■ 第258回社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省)
・通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護(PDF)
・通所リハビリテーション(PDF)
■ 通所・訪問リハビリテーションの適切な在り方についての調査研究事業(令和7年度老人保健健康増進等事業)サマリ・調査結果集・報告書(全国デイ・ケア協会)