はじめに:AI使用きっかけがないと69%が回答
2023年にChatGPTが公開されてから、医療・介護の現場でも生成AIに対する関心が急速に高まっています。
PT-OT-ST.NETが2025年3~4月に実施したアンケート調査では、回答者117人のうち36%が既に業務に生成AIを取り入れており、「AIを使っていない」と回答した人のうち69%は「AIを使ってみたい」と回答しました。
注目すべき点として、AI利用者の76%は「1日30分以上の時短効果を実感した」と答えており、満足度は85%が4点以上の評価(5点満点)をつけるなど、AI利用の満足度の高さが示されました。
これらの結果から、AIが単なる流行りではなく、業務内における価値も認識されていることがわかってきました。
しかし、未導入者からは「きっかけがない」「使い方がわからない」といった声が多く、導入済みの方からも「セキュリティや出力の正確性が不安」「研修が不足している」などの課題が挙がりました。
本記事では、こうした課題をふまえて、アンケートで回答の多かった利用パターンを中心に、リハビリテーション業務・事務業に関わる具体的なAI活用事例を紹介します。
掲示板で実際のAI活用事例を共有しませんか?皆さんの活用方法をコメントで投稿できる掲示板をご用意しました。
他の方の活用を参考にしたり、ご自身の事例をぜひコメントで教えてください!
調査概要 webアンケート調査について
調査方法
● 調査期間:2025年3月28日(金)〜2025年4月13日(日)
● 設問数 :最大27問
● 回答数 :117件
● 対象職種(内訳)
○ 理学療法士(PT):76%
○ 作業療法士(OT):21%
○ 言語聴覚士(ST):3%
● 年齢・経験年数、役職
○ 年齢層は40代が最多、経験年数は10〜20年がボリュームゾーン
○ 管理職(主任クラス以上)が58%
>>>詳細はこちら
リハ職のAI活用状況とニーズの整理
アンケートでは、リハビリテーション専門職においてAI利用者の多くが事務作業における「時間短縮」と「質の担保」を効果として挙げました。
AI導入により、情報検索や資料要約で1日30分以上の時間削減を実感した人が多く、事務作業の業務効率が向上したと回答しています。
「AIはあなたの業務に対して、どの程度の必要性を感じていますか?」という質問では、AIの必要性について「不可欠」と答えた人が52.4%、「高い必要性」と答えた人が40.5%で、合わせて92.9%がAIを高く評価していました。
自由記述の内容を分類すると、AI利用者の主な活用目的は以下の6つに整理されました。
<主な活用目的>
1. 時間短縮・業務効率化 – 情報検索や資料要約、定型作業の迅速化、PC操作全般の効率向上など。
2. 文章品質担保・標準化支援 – 文書の添削・校正や文体や語調の調整、敬語表現の統一による品質向上。
3. 思考整理・客観的フィードバック – アイデアや意見の壁打ち、論理構造や順序の整理。
4. チラシ・資料作成支援 – アイデアのひな形提示やスライド・パンフレットの雛形やドラフトの作成、患者向け資料作成支援。
5. 調査・データ分析支援 – 文献検索と要約、データ整理と簡易分析、市場調査レベルのアウトライン生成。
6. メイン業務への作業時間創出 – 定型業務の一部をAIに委任し、患者対応など本質的な業務に時間を割く。
実践事例
「時間短縮・業務効率化」「文章品質担保・標準化支援」「メイン業務への作業時間創出」にあたる事例を紹介します。無料版のChatGPTでも活用できる事例でのAI回答を添えていますので、すぐにお試しいただける事例です。
以下の事例の実践にあたっては、個人情報や機密情報を含むデータを扱う場合、必ず社内規定や関連法令に従い、適切に管理・取り扱う必要があります。入力内容に応じて情報漏れのリスクが生じる可能性もあるため、取り扱いには十分ご注意ください。
事例1:計画書/報告書作成の効率化
患者さんのリハビリテーション経過報告書や退院時サマリーなど、定型的ながらも個別の情報を含む書類の作成は、AIの得意分野です。
例えば、ChatGPTのような生成AIに、匿名化された患者の基本情報、リハビリテーションの目標、実施内容、評価結果、今後の計画などを箇条書きで入力し、報告書のドラフトを作成させることができます。
>>> 実際のChatGPT作業動画
■実践例:
1. 情報整理患者のカルテや口頭での申し送り、自身のメモを用意します。
2. AIへの指示ChatGPTに以下のようなプロンプト(指示文)を入力します。
PT太郎 3. 確認と修正AIが生成した内容を確認し、事実との相違がないか、表現が適切かなどを修正します。また、AIはあくまで補助ツールであり、必ず自身の目で確認し、加筆修正を行うことが重要です。叩き台として必要部分を修正するなどして活用が期待できます。
ポイント● 事実確認の重要性
AIが生成する情報は、あくまで入力されたデータに基づいて作成されたものであり、必ず事実と照らし合わせて正しいか確認することが重要です。
特に医療現場においては、情報の正確性が患者さんの安全に直結するため、細心の注意を払う必要があります。「叩き台」として活用し、必ず専門職の視点で最終確認を行いましょう。
事例2:資料の要約と管理
最新のガイドライン、研究論文など、膨大な量の資料から必要な情報を効率的に抽出することは、日々の業務において非常に重要です。
AIを活用することで、これらの資料を素早く要約し、必要な情報を迅速に見つけることができます。
>>> 実際のChatGPT作業動画
■実践例:
1. 資料の準備要約したい資料(PDFファイル、Webページの記事など)を用意します。
2. AIツールへの入力資料のテキストをコピー&ペーストするか、PDFファイルを読み込ませます。
3. 要約の指示AIに以下のようなプロンプトを入力します。
PT太郎
PT太郎 ポイント●情報源の確認
AIが生成・要約した内容だけでなく、必ずソース元となる情報源を確認し、その正確性と信頼性を担保することが必要です。特に、医療に関する情報は、エビデンスに基づいているかどうかが非常に重要です。
● 著作権への配慮
他者の著作物をAIで要約する際は、著作権に配慮し、適切な引用元を明記するなど、著作権法を遵守することが大切です。
事例3:メール作成の効率化
日々の業務では、メールに対応する場面もあります。AIを活用することで、定型的なメール連絡への返信や、情報共有のためのメール作成にかかる時間を短縮できます。
また、文章の誤字脱字や、言葉の言い回しのチェックもできるため、送信内容の二重チェックとしても活用できます。
>>>実際のChatGPT作業動画
■実践例:
1. メール作成の指示メールの内容をAIに伝え、どのようなメールを作成したいかを具体的に指示します。
PT太郎 2. ドラフトの確認と修正AIが生成したメールのドラフトを確認し、内容の正確性、言葉遣いの適切さ、不足している情報がないかなどを修正します。
ポイント● 個人情報・機密情報の取り扱い
メールに含まれる個人情報や機密情報は、AIに入力する際に十分注意し、必要に応じて匿名化するなどの対策を講じましょう。
● 最終確認の徹底
AIが作成したメールはあくまでドラフト(草案)です。送信前に必ず内容を最終確認し、自身の意図と合致しているか、誤字脱字がないかなどを入念にチェックしましょう。
AIを業務に活用するために「まずは試してみる」
本記事では、リハビリテーション専門職のためのAI活用術として、入門レベルの具体的な活用事例を紹介しました。
これらの事例を参考に、実際にChatGPTを使用してみると、AIが日々の業務効率化だけでなく、専門職としての成長や患者ケアの質向上に大きく貢献する可能性を実感していただけるのではないでしょうか。
重要なのは、AIはあくまでツールであり、リハビリテーション専門職の専門性や患者との直接的なコミュニケーションが代替されることはないということです。
むしろ、AIはルーチンワークを効率化し、専門職がより創造的で、患者さん一人ひとりに深く向き合う時間を生み出すための強力なパートナーとして機能する可能性を秘めています。
リハビリテーション専門職のAI活用は、業務効率化だけでなく、専門職としての成長や患者ケアの質向上につながることも期待されます。
webアンケート回答者の約70%が「使うきっかけがない」と回答されていますが、今回紹介した事例のように、まずは小さな業務から試してみてはいかがでしょうか。
活用事例の共有についてあなたのAI活用事例を
PT-OT-ST.NET掲示板のコメントで、ぜひ教えてください。
記事を読んで「うちではこんな風に使っている」「こうすると便利だった」など、実際の工夫や体験をコメントや掲示板で共有いただけると嬉しいです。
投稿いただいたアイデアは、他の方の参考や新しい発見につながります。小さな工夫でも大歓迎ですので、お気軽に書き込でみてください。
引用・参考
■ 【調査レポート】AI活用は約4割、未利用者は関心高くも「きっかけがない」ーリハ職AI活用アンケート(PT-OT-ST.NET)
参考
■ChatGPTの始め方「便利そうだけど、実際どうやって試したらいいの?」という方も、ChatGPTなら今すぐ簡単に使い始められます。
GoogleアカウントがあればOpenAIのChatGPTに無料登録でき、ブラウザやスマホから手軽にアクセス可能です。公式のスマホアプリもあるので、職場でも移動中でも思いついた際にすぐに利用が可能です。
■ChatGPTにデータを学習させないための設定患者などの個人情報が誤って指示文に入っていた場合に、ChatGPT側に学習させない事前の設定があります。ご利用の際は、ぜひご確認ください。
1. 左下の自身のアカウントをクリック
2. 設定3. データコントロールをクリック
4. “すべての人のためにモデルを改善する”をオフにする5. 実行をクリック
PT太郎
右被殻出血、発症後3週間、72歳男性。Brunnstrom Stage:上肢III、下肢IV。FIM運動50、認知30。独居。移乗は介助レベル。歩行不可。注意障害あり。
※データファイルがあれば添付も可能