
厚生労働省は昨年末、新たな地域医療構想に関する検討会のとりまとめを公表した。
本検討会では、少子高齢化や人口減少といった社会構造の変化を背景に、将来に向けた医療提供体制の整備について議論が行われてきた。
本とりまとめでは、「治す医療」と「治し支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、医療機関の連携・再編・集約化を推進することが重要であるとの考えが示された。
新たな地域医療構想では、「病床の機能分化・連携」に加え、「地域ごとの医療機関機能及び広域な観点の医療機関機能の確保に向けた取組を推進する」とし、法律改正を含む必要な措置を講ずるべきとしている。
地域医療構想の基本的な方向性については、高齢者救急への対応や在宅医療の需要増加への対応、医療の質の向上や医療従事者の確保、地域で必要とされる医療提供体制の維持を中心として、持続可能な医療体制の構築を目指すとしている。
回復期機能を“包括期機能”に再定義
これまでの「回復期機能」について、その内容に高齢者等の急性期患者への医療提供機能を追加して「包括期機能」として再定義する考えが示された。
「包括期機能」は、「高齢者救急等を受け入れ、入院早期からの治療とともに、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的取組等を推進し、早期の在宅復帰等を包括的に提供する機能、急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能」として位置づけ、適切に理解されるよう周知に努めるべきであるとの考えが示された。
また、病床機能報告が医療機関から適切に行われるよう、報告方法等について分かりやすく周知することが重要であると提言した。

地域医療提供体制の整備を進めるため、構想区域は「二次医療圏を基本としながら、必要に応じて広域的な区域や市町村単位などの狭い区域も設定」することが必要としている。
これに加え、地域医療構想調整会議を活用し、医療・介護関係者が効率的かつ実効性のある議論を行うことで、各地域の実情に応じた医療体制の構築を目指すとしている。
2040年を見据え、地域の医療需要や診療データを基に病床数の必要数を定期的に見直し、柔軟で持続可能な医療提供体制の実現を図ることが重要との考えが示された。
基金を活用して「新たな地域医療構想」を推進
2027年度からは、新たな地域医療構想の推進を目的に、地域医療介護総合確保基金によるこれまでの支援内容に加え、医療機関の機能確保や病床減少を伴う再編を支援対象に加える方針が示された。
地域医療介護総合確保基金は、地域医療構想の実現を支援するために設けられた財政的な仕組みであり、病床の機能分化や連携、医療機関の再編・集約化を進める取り組みを支援している。
今後は、医療機関の連携・再編・集約化を進めるための施設・設備整備についても支援の対象となる。
さらに、基金の活用効果を高めるため、都道府県における成功事例(好事例)を他の地域に共有する仕組みを整備し、地域間の医療格差を縮小する取り組みを進めることが適当とされている。
国、都道府県、知事、市町村の役割を明確化
国は厚生労働大臣の責務として、地域医療の目指す方向性や必要なデータを提供し、都道府県の取り組みを支援し、都道府県は、取り組み状況の「見える化」を図り、調整会議で決まった事項の実施に努める。
市町村は調整会議に参加し、地域医療介護総合確保基金を活用しながら在宅医療や介護との連携を推進する。これらの役割分担により、地域に応じた医療体制の構築を目指すと示されている。
都道府県知事には、新たな地域医療構想に基づき、医療機関機能の確保や病床整備を調整する権限が付与される。知事は、医療機関機能報告が実態と異なる場合に報告の見直しを求めるほか、急性期拠点機能の強化に向け、経営状況を考慮した調整会議の協議内容に基づき、医療機関に具体的な取り組みを求めることができる。
新たな地域医療構想では、地域ごとの実情に応じた医療提供体制の整備を行い、医療機能の役割分担や病床機能の再定義を進め、関係者が連携して質の高い医療を持続可能に提供する仕組みの構築を目指すとしている。
引用・参考
■ 新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚生労働省HP)
■ 新たな地域医療構想について(地域医療構想の推進、病床機能・医療機関機能、構想区域)(厚生労働省HP)
■ 第14回新たな地域医療構想等に関する検討会(厚生労働省HP)
■ 第13回新たな地域医療構想等に関する検討会(厚生労働省HP)