理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が集うリハビリ情報サイト

PT-OT-ST.NET

トピックス

2025.04.07

日本人76歳の健康度、“世界の65歳”と同等|Lancet Public Health

「65歳以上=高齢者」という区分は実態を捉えているのか?── The Lancet Public Health(2019)に掲載された国際研究の論文「Measuring population ageing: an analysis of the Global Burden of Disease Study 2017」で、日本人の76歳は“世界の65歳”と同じ健康度であることが示された。

本研究は、1990年から2017年にかけて世界195カ国を対象に疾患や障害の負担を調査した国際的な疾病負担研究「Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study(GBD2017)」のデータが用いられた。

GBD2017データより、92の加齢関連疾患(例:心血管疾患、認知症、変形性関節症など)を対象に、年齢とともに増加する疾患負担(DALYs)を評価。その上で、「65歳時点での世界平均の健康状態」と同等の疾患負担を持つ年齢(=等価年齢)を各国ごとに算出した。分析の結果、日本の76歳は世界の65歳と同等であるという研究結果が示された。

また、等価年齢が最も高かったのは日本の76.1歳であった一方、最も低かったのはパプアニューギニアの45.6歳であり、最大30年以上の差があることが明らかになった。

これらの結果は、日本において年齢関連疾患の負担が他国よりも遅れて積み重なっていることを示している。病気になっている割合(有病率)や、病気の重症度(障害・死亡リスク)が日本は他国より少ない、もしくは後からやってくるということになる。これにより、日本の高齢者の健康状態が他国と比べても極めて良好であることが明らかになった。



これは、“65歳時点の世界平均の加齢関連疾患負担”と同じ健康状態になるのが、日本では76.1歳であることを意味している。つまり、「日本人はおおよそ11年分、健康的である」と解釈することができる。

著者らは「加齢に伴う疾病負担がどの年齢層で蓄積するかを比較したところ、日本を含むフロンティア諸国では、同程度の疾病負担を持つ他国に比べて、負担の蓄積が高齢期まで遅れていることを明らかにした」と報告。

この結果に基づき「身体活動量の多さ、喫煙率の低さ、医療へのアクセスの良さなど、どのような要因が遅らせることに成功したのかを理解することで、予測される高齢化の負担を軽減する方法が明らかになる可能性がある」と述べている。


従来の指標との違い

高齢者とされる年齢は、より客観的な健康指標に基づき、単なる年齢ではなく、実際の健康状態や機能的能力を評価することが求められている。

本研究は、年齢関連疾患における障害調整生命年(DALYs)を包括的に分析することで、従来の「年齢中心の高齢者概念」から、「健康状態と疾患負担に基づく高齢者評価」への転換を促しており、著者らは、その点が本研究の強みであるとしている。


今後の課題

本研究では、1990年から2017年にかけて、世界各国で年齢関連疾患負担率が減少し、その主な要因として、致死率と疾患の重症度の低下が挙げられている。ただし、日本を含むフロンティア諸国における負担軽減の具体的な要因については、本研究では明確に論じられていない。

なぜ、日本などのフロンティア諸国では、高齢者の健康状態が他国と比べても極めて良好であるのか。その理由については、公衆衛生の充実、医療アクセスの良さ、食生活、教育水準の高さ、日常生活レベルでの活動性や社会参加の高さなどが影響していることも考えられる。

今後は、フロンティ国である日本を含めて国別の違いや背景をさらに分析し、負担軽減の成功要因を解明することが期待されている。


■ 論文情報

【掲載誌】The Lancet Public Health

【論文名】Measuring population ageing: an analysis of the Global Burden of Disease Study 2017

【著者】Angela Y Chang, Vegard F Skirbekk, Stefanos Tyrovolas, Nicholas J Kassebaum, Joseph L Dieleman

【DOI】10.1016/S2468-2667(19)30019-2

引用・参考文献
◾️Measuring population ageing: an analysis of the Global Burden of Disease Study 2017(Lancet Public Health)


当サイトが紹介するプレスリリースは最新の実験や分析の成果報告であり、社会に実装するには追加の研究や検証が必要な場合があります。最新の研究成果を利用する際は、専門家の指導を受けるなど安全性に配慮するよう留意ください。
関連タグ
研究 国際
PT-OT-ST.NET:LINE公式アカウント「最新ニュースをLINEでお届け」友達追加

この記事が気に入ったらいいね!しよう

もっと見る 省略する

情報提供

ページ上部へ戻る