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2025.04.21

【PT協会】学生の評価を公平かつ正確に「OSCE実施マニュアル(第1版)」発刊

日本理学療法士協会は、OSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)における学生の評価を、全国で統一して公平かつ正確に行うことを目的に、「OSCE実施マニュアル(第1版)」を発刊しました。

OSCE(客観的臨床能力試験)とは?

国家試験が医学的知識や理学療法学など知識の理解度を評価する学力試験であるのに対して、OSCEは臨床判断力やコミュニケーションスキルなど、基本的な臨床技能や態度を客観的に評価する実技試験です。学生は、模擬患者を対象に、実際の臨床現場を想定したシミュレーション試験を通じて、診療技術や対応力を身につけます。

OSCEは、養成過程における最終学年の臨床実習前に実施する「Pre-OSCE」 と臨床実習後に実施する「Post-OSCE」 を想定しており、どちらも行うことでそれぞれの結果を比較し、臨床実習における学習の効果を評価することができます。



OSCEの試験は、①中枢神経疾患、②整形外科疾患、③在宅高齢者の3つの分野ごとに試験場が分かれており、それぞれの模擬患者を対象とした実践力を評価されます。

③在宅高齢者に関しては、生活期の対象者に対するリスク管理を含めた実践能力を評価するため、Post-OSCE(臨床実習後)のみ実施するとされています。

評価内容は、実際に臨床現場で患者さんを目の前にした時に、▽疾患や症状に対する配慮や丁寧なコミュニケーションが取れているか、▽正しい手順での検査ができるか、▽必要な問診ができるかなど、実際の場面を想定した細かな評価が行われます。

このように、OSCEは教育課程の早い段階において学生の改善点を確認、理解することができるため、学生一人一人の成長を促すことができます。


OSCE実施マニュアル(第1版)の目的と内容

これまでOSCEは、医師や看護師の教育課程に広く導入されてきましたが、近年では理学療法士の養成課程においても取り入れられています。

理学療法士は、筆記試験だけでは測れない、実際の臨床現場で必要とされる技能や態度を客観的に評価することが求められています。養成校では、2000年代始めからOSCEを導入する事例が出てきた一方で、これまで正式なマニュアルはなく、養成校ごとに独自の方法で実施されてきました。

本マニュアルは、OSCEが全ての養成校に導入されることにより、臨床現場で求められる思考力やその場で適切な対応ができる臨床判断力などの「認知領域」に基づき、患者さんのことを理解するためのコミュニケーション力が求められる「情意領域」と専門家としての技術を求められる「精神運動領域」の研修につなげることを目的に作成されました。

内容は、全7章、合計105ページにわたり、課題と配点、受験者のタイムテーブルや実施手順を始め、当日の模擬患者用シナリオや評価シートなどOSCE実施に必要とされることが網羅的に掲載されています。そのため、養成教育機関においてすぐに導入することができ、標準化された評価を行うことで教育の質の向上が期待されています。

本マニュアルの制作を牽引した日本理学療法士協会・卒前卒後教育シームレス化検討部会 部会長の白石浩氏は、本マニュアルの制作背景と今後期待することについて、以下のようにコメントしています。

現在、理学療法士の活躍の場はさまざまな分野に広がっており、その役割は非常に重要です。

そのため、教育の質は患者や利用者の健康や生活の質に直接影響します。理学療法士には技術だけでなく、患者とのコミュニケーション能力、倫理観、共感力など、多くの能力が求められます。

これらの能力を総合的に評価するためには、従来の筆記試験や実技試験だけでは不十分であり、OSCE のような客観的で構造化された評価方法が必要です。

本マニュアルが全国の養成校で広く導入され、日本の理学療法の未来を支える理学療法士の育成に寄与することを期待しています。


OSCE実施マニュアルと評価シートは、同協会ホームページにて会員限定コンテンツとして公開されており、閲覧・ダウンロードが可能です。


参考・引用
◾️OSCE実施マニュアル(第1版)を掲載しました(日本理学療法士協会HP)
    https://www.japanpt.or.jp/info/20250325_320.html

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