日本理学療法士協会と日本作業療法士協会は、日本公衆衛生協会が実施する「地域保健総合推進事業」の開始を希望する都道府県士会に対して「伴走支援」をパイロット的に実施し、その成果をとりまとめた報告書と、自治体や企業向けにパンフレットを作成・公開した。
■ 報告書の概要
日本理学療法士協会と日本作業療法士協会は、一般財団法人日本公衆衛生協会が実施する「地域保健総合推進事業」を受託し、地域保健領域における理学療法士・作業療法士の効果的な参画の在り方について検討を重ねてきた。
本報告書は、地域・職域における予防・健康づくりを目的とした保健活動に対し、都道府県の理学療法士会・作業療法士会から構成されたモデルチームが実践した取り組みを紹介している。
令和7年度以降の横展開に向けて、伴走支援の在り方や研修による普及可能性を示した内容となっている。
■ 事業の背景と取り組み
令和4年度の調査により、成人の健康づくりに対する理学療法士・作業療法士の関与が限定的であることが明らかとなった。これを受け、令和5年度には関係機関と連携した研修事業を展開し、成果を「普及のための手引き」としてまとめられてきた。
今回、令和6年度は、その手引きを活用し、健康づくり事業に取り組む意向を示した都道府県士会に対して伴走支援が実施された。
① 伴走支援の実施
本事業では、山口県理学療法士会および茨城県作業療法士会をモデルチームとして選定し、事業の計画立案から実践、評価に至るまで、経験豊富な支援者が伴走する形で支援を行った。
その結果、両士会の主体的な事業展開が促され、今後はモデルチームの構成員が新たな伴走支援者として活躍し、全国への展開が期待されている。
② 研修会の開催
本伴走支援の成果を広く周知し、全国の士会による事業展開を支援するため、各都道府県の担当者を対象とした研修会を開催した。
研修会では、厚生労働省関係者や保健師による講義に加え、モデルチームによる実践報告、さらには健康課題をテーマとしたグループワークが実施された。
研修後のアンケート結果からは、理学療法士・作業療法士に求められる役割への理解が深まったことや、今後の事業展開に向けた具体的なイメージを得られたことが示された。報告書には、実践報告で使用された資料も付録として収録されている。
■ 他職種向けパンフレットの制作
日本理学療法士協会および日本作業療法士協会は、令和6年度の成果として、自治体や企業における成人の健康づくりに対して、関係機関との連携を通じて多職種での実践を推進するためのパンフレットを作成した。
本パンフレットでは、リハビリテーション専門職としての理学療法士・作業療法士が一次予防・二次予防においても果たすことができる役割を示している。
山口県および茨城県のモデル事例に加え、行政機関や関係機関との連携による5つの取り組み事例も紹介されており、多職種協働の可能性を広く伝える内容となっている。
協会は、このパンフレットの活用を通じて、国民の就労支援のみならずQOL向上にも貢献する取り組みを全国的に展開していく方針を示している。
本報告書およびパンフレットが、各地域における多様な予防・健康づくり活動の展開につながることが期待される。
引用・参考
■[各種調査・結果]令和6年度地域保健総合推進事業報告書(日本理学療法士協会HP)
・報告書(PDF)
・パンフレット(PDF)