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2025.06.30

【診療報酬改定】疾患別リハの早期介入“4日目以降”が38% 評価のあり方を議論



6月26日に開催された「入院・外来医療等の調査・評価分科会」において、「疾患別リハビリテーション」の早期介入のあり方やその評価について議論された。

厚生労働省は、高齢者や脳卒中患者を中心とした早期リハビリテーションの効果、DPCデータを用いた急性期リハビリテーション加算の運用実態などについて資料を提示。

検討会では、加算の算定状況からみえる現場の実施状況と制度のギャップに対して、複数の委員よりリハビリテーションの評価方法や加算制度の見直しに関する意見が寄せられた。


早期からリハビリテーション介入の重要性

厚生労働省は、早期退院及び退院後の適切なリハビリテーション提供がADLの維持向上に寄与することについて科学的根拠を用いて説明した。

資料では、平均87歳の超高齢者に対し、週末を含む連続した5~7日間、1日2回・20分間の運動介入を実施することで、身体機能やQOLの改善が認められた研究結果が紹介された。

また、早期の退院と適切な外来・通所リハビリテーションの組み合わせにより、通常の入院よりも退院後のADL維持が良好となったことを示す海外の介入研究も提示された。



検討会では、脳卒中に対する早期リハビリテーション介入の影響についても紹介された。

脳卒中急性期リハビリテーションの指針」では、急性期脳卒中(主に脳梗塞)における離床(ベッドから離れる訓練)の適切な開始時期について、「発症後 24~48時間からの離床開始が妥当である可能性がある。ただし、軽症脳卒中や非高齢の虚血性脳卒中など患者を選択した上で、発症後24時間以内の離床を考慮しても良い」と記載されている。

また、DPCデータを用いて、日本の急性期病院にて約14万人分の脳卒中患者データから早期リハビリテーション介入における影響を分析した論文より「脳卒中(脳梗塞)発症後、入院2日目のリハビリテーション開始が退院時の機能転帰に良好な結果を与える可能性がある」ことが紹介された。




早期リハビリテーションの実施状況と課題

令和6年度の診療報酬改定では「急性期リハビリテーション加算」が新設されるなど、病態に応じた早期からの疾患別リハビリテーションの提供が推進されてきた

しかし、早期のリハビリテーションを評価する加算(急性期リハビリテーション加算、初期加算、早期リハビリテーション加算)は、いずれも発症日からリハビリテーション開始までの日数についての要件はなく、どのタイミングからでも算定可能となっている。

実際、DPCデータを用いた分析によると「14日以内に疾患別リハビリを実施した症例のうち、38%が3日以内に介入できていない」という現場の実態があることを、厚生労働省は報告した。

これらの数値より、リハビリテーションの早期介入の重要性が示されている一方、現場のリハビリテーション実施体制は十分ではない可能性が示された。




土日祝日のリハビリ提供体制の把握など、さらなる分析が必要

検討会では、加算の算定状況などを踏まえて、リハビリテーションの評価方法や加算制度の見直しに関する意見が寄せられた。

委員からは「入院初期からのリハビリテーションの開始は当然のこと」とした上で、「さらに進める方向性について加算のあり方を検討していく必要があるのではないか」と提起があった。

別の委員からは、「急性期に関しては切れ目のないリハビリテーションが重要」であるとの認識のもと、「土日祝日のリハビリがちゃんと行われているのか、ということも把握しておく必要がある」との意見が述べられた。

また、リハビリテーションの提供体制として、「この14日間で何時間リハビリを受けたのか、実際に加算を算定している患者と、算定していない患者の土日のリハビリの実施率のデータも出していただきたい」など、加算の有無によるリハビリ提供の差異を定量的に把握すべきとの意見も挙がった。

さらに、「このデータはリハビリが実施された患者のみであり、DPCデータには入ってこない『未実施の患者』が相当数いることを考えると、リハビリの実施率としてはまだまだ少ないというイメージも持つ」との指摘もあり、現在の制度では十分な早期介入が確保されていないという現実を踏まえ、より大胆な施策が必要ではないかとの提言もあった。

今後、急性期リハビリテーション加算の実効性を高めるため、制度上の評価方法や実施体制のあり方を再考し、医療現場に即した現実的な仕組みの整備が求められている。

引用・参考
◾️令和7年度第5回 入院・外来医療等の調査・評価分科会(厚生労働省HP)
 資料 入ー1(PDF)
脳卒中急性期リハビリテーションの指針(2023 年 5 月 1 日)
■ Martínez-Velilla N, et al. Effect of Exercise Intervention on Functional Decline in Very Elderly Patients During Acute Hospitalization: A Randomized Clinical Trial. JAMA Intern Med. 2019. doi:10.1001/jamainternmed.2018.4869
■ Cunliffe AL, et al. Sooner and healthier: a randomised controlled trial and interview study of an early discharge rehabilitation service for older people. Age Ageing. 2004. doi:10.1093/ageing/afh076
■ Otokita S, Uematsu H, Kunisawa S, Sasaki N, Fushimi K, Imanaka Y. Impact of rehabilitation start time on functional outcomes after stroke. J Rehabil Med. 2021. doi:10.2340/16501977-2775
■ 令和6年度診療報酬改定.【急性期リハビリテーション加算】病態に応じた早期からの疾患別リハビリテーシ ョンの推進(PT-OT-ST.NET)

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