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2025.11.25

【介護・障害福祉】要介護の軽度者への支援の在り方、保険外サービスの活用と質など議論 ー 財政審



財務省が財政制度等審議会(財政審)にて示した「社会保障改革」に関する資料について、PT-OT-ST.NETでは特に医療分野について前回記事にてお伝えしました。

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同審議会において、財務省は介護・障害福祉の両分野における主要な改革案についても示しています。

本記事では、同審議会において財務省が示した最新の資料に基づき、介護・障害福祉の両分野における主要な改革案と、それが現場にもたらす影響を分析します。




軽度者への給付見直し、持続可能性の確保へ

財政審では、高齢化の進行と現役世代の減少といった社会背景を踏まえて、介護保険制度の持続可能性の確保と、増大する費用への対応が議論されました。



特に、「利用者負担の見直し」や「給付の効率化・適正化」は、リハビリテーション専門職(PT・OT・ST)を含む現場のサービス提供体制と、サービス利用者の行動に直接的な影響を与えることが予想されます。


軽度者サービスの見直し

介護保険制度の持続可能性を確保するため、要介護度が軽度な利用者に対する介護サービス(生活援助サービス等)の在り方の見直しが提言されました。

要介護1・2の利用者への訪問介護・通所介護については、地域支援事業への移行を目指す方向性が示されました。

まずは生活援助サービス等の給付について、地域の実情に応じた多様な主体によるサービス提供を促す観点から、地域支援事業へ移行することが検討されています。

この方針により、通所介護に携わるPT・OT・STは、重度者への介入に重点を移すか、地域支援事業の枠組みにおいて新たな役割を模索することが求められる可能性があります。




利用者負担(2割負担)の見直し

財務省は、高齢化の進展により介護費用・保険料は大幅に増加しており、制度の持続可能性があやぶまれるとの考えから、「制度の持続性を確保し、現役世代の保険料の伸びを抑制するため、利用者負担の見直し、すなわち2割負担の対象者の拡大を図るべき」と提言しました。

過去の導入時の調査では、2割・3割負担が介護サービスの「利用控え」につながった影響は限定的であったとされています。

【改革の方向性】(案)

○ 負担能力に応じて、増加する介護費用をより公平に支え合う観点から、当分の間、一定の負担限度額を設けることや、金融資産の保有状況等の反映の在り方、きめ細かい負担割合の在り方と併せて検討した上で、2割負担の対象者の範囲拡大を実現すべき。また、医療保険と同様に、利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことが考えられる。

引用:財政制度等審議会 財政制度分科会(令和7年11月11日開催)







ケアマネジメントの利用者負担導入

居宅介護支援(ケアマネジメント)については、制度の創設以来、利用者負担が取られていませんでしたが、利用者負担の導入が検討されています。

財務省は、機械的な試算としながら、ケアマネジメントに係る費用について、現役世代が毎年負担している保険料は約150億円に登るとし、ケアプラン作成費用を現役世代の保険料で肩代わりし続けるのは不合理であるとしています。

また、利用者側からの質のチェックが働きにくい構造にあるとの懸念から「利用者負担の導入をすべき」との考えを示しました。



利用者負担が導入されれば、ケアマネジャーには、利用者のニーズに即した妥当性の高いケアプランを提示する責任がより明確に求められると考えられます。

一方で、ケアマネジャーへのアンケート結果からは、現行のサービス提供状況において「圧力で自法人のサービス利用を求められる」「事業者と利用者(家族)でサービスを決めてきて、プラン作成だけ依頼される」との回答が一定数みられている点も、指摘されました。

現状ではアセスメントに基づき必要なサービスを適切に選定するという本来の「マネジメント機能」が果たされていない可能性があることを示唆する結果ともいえます。



介護保険の理念には、「国民は、自ら健康の保持増進と能力の維持向上に努める」こととされています。

この理念を実現するために、ケアマネジメントにおいても、アセスメントに基づいて必要なサービスを的確にマネジメントしていくことが求められています。

「国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。」

引用:介護保険法第4条


利用者負担がされることで、質のチェックが強まることにつながるか、利用者の要望(ディマンド)に応じる形でのプランが作成されるようになることにつながるかは、慎重に見極めが必要です。

また、特別養護老人ホームなどの施設介護では、ケアプラン作成費が基本サービス費に含まれ利用者負担が生じているため、施設介護と在宅介護との間に負担構造の不均衡が生じることも指摘されています。






保険外サービスの活用と「ローカルルール」問題

ニーズの多様化や高齢者の生活の幅の広がりに対して、介護保険サービスだけでは対応しきれない領域が増えています。

この課題に対して、介護保険外の民間サービスとの組み合わせにより、利用者の利便性向上、サービスの選択肢の拡大、事業者の収益構造の安定、職員の処遇改善につながる可能性などが期待されています。

経済産業省が公表した「保険外サービス産業の振興に向けた取りまとめ」においても、保険外サービスを地域で育てていく重要性が示され、前向きな方向性が打ち出されています。

関連記事はこちら

【経産省】介護保険外サービス振興の取りまとめを公表 「産福共創」で地域を支える仕組みづくりへ

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一方で、保険外サービスについては、同じサービスでも自治体によって「できる」「できない」の判断が異なるなど、「ローカルルール」の存在が指摘されており、調査に基づき保険外サービスの柔軟な運用を認めるべき、としています。

【改革の方向性】(案)○ 自治体のローカルルールの実態把握を行った上で、国民の利便性向上に資するよう、介護保険外サービスの柔軟な運用を認めるべき。

引用:財政制度等審議会 財政制度分科会(令和7年11月11日開催)




グループホームの総量規制の検討

障害福祉サービスは、就労系や居住支援系の割合が増加しており、総費用の伸びに対する寄与度も大きい現状があります。また、その主因として、営利法人による事業所数の急増が指摘されています。

今回、制度の持続可能性を確保するために、サービスの質の確保と総費用額の抑制を両立させるための改革が必要との考えが示されました。

特に、グループホーム(共同生活援助)については、事業所の急増と虐待件数の増加を受けて、「他のサービスで導入されている総量規制の対象にグループホームも加えるべき」と、財務省が提起しました。

財務省の資料では、総量規制について以下のように示されています。

障害福祉サービスにおける総量規制の対象サービス
生活介護、就労継続支援A型・B型、障害者支援施設

総量規制の仕組み:

事業所などから指定申請があったとき、「サービス提供量(実績)が、サービスの見込み量を上回る」、もしくは「都道府県等の障害福祉計画・障害児福祉計画の達成に支障を生じるおそれがあると認めるとき」に該当する場合、指定を拒否できる



総量規制を導入する主な目的は、地域における障害福祉サービスの量を計画的に管理し、サービスの質を維持・向上させることにあります。

また、特定のサービスだけが過剰に増えることを防ぎ、地域ごとの需要と供給のバランスを適切に調整するという狙いも含まれています。

PT・OT・STが従事する障害児通所サービスにおいても、自治体による給付決定基準が曖昧なケースや、児童の状況にかかわらず一律に長期間の給付が行われているケースが指摘されています。

今後は給付決定の基準が明確化され、必要量の見直しが進むことで、サービスの提供量や支援内容の調整が求められる可能性も考えられます。

財務省が示す改革の方向性は、制度の持続可能性の確保を目的としたものですが、その影響はサービス提供体制や専門職の役割にも及びます。

これらの議論や制度的な動向を踏まえて、今後の支援の在り方を検討していくことも求められます。

引用・参考
財政制度等審議会 財政制度分科会(令和7年11月11日開催)(財務省HP)
 資料3 社会保障②

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