厚生労働省は、病院のICT化・業務効率化に対し、1施設あたり最大8,000万円を補助する
「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」を令和8年度から本格的にスタートします。
事業概要では、リハビリテーション専門職の「記録作成時間の削減」や「早期リハ介入率の向上」などが成果目標の例として明示されており、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(PT・OT・ST)にとっても注目の事業です。
これまで厚生労働省は、本年2月に各都道府県知事に対し事務連絡を通知し、3月18日には
Q&A(第1版)を公開しました。今後、5〜6月に予定される「業務効率化計画」の提出に向けて、準備が進められています。
1. 事業の目的と手厚い補助内容
本事業は、ICT機器等の導入によって業務の効率化と職場環境の改善を図り、質の高い医療提供体制を構築することを目的としています。
● 対象となる病院
・令和8年4月1日時点でベースアップ評価料を届け出ている病院
・
実施要綱で求める要件を満たす病院
● 補助上限額: 1施設あたり 8,000万円
● 補助率: 対象経費の 5分の4(国が3分の2、都道府県が3分の1を負担)
● 実施主体: 各都道府県
2. 対象となるICT機器・経費の例
単なる事務機器だけでなく、AIやロボットなど最先端の技術導入が幅広く対象となっています。
● コミュニケーション・見守り:スマートフォン、業務用インカム、患者の見守り支援機器
● AI・自動化:生成AIを活用した文書自動作成支援、AI問診、薬剤自動分包機
● ロボット・設備:薬剤・検体搬送ロボット、汚物処理設備(マセレーター)
● 附随費用:Wi-Fi環境の整備、電子カルテ等とのシステム連携費用、職員への訓練費用
なお、令和8年度中に生じるソフトウェアの利用料(最大12ヶ月分)も対象となりますが、令和9年度以降のランニングコストは対象外です。
3. 申請のための必須条件に「賃上げ」「業務効率化計画の作成」
この補助金を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
以下の①〜⑤は、補助金を受けるためにすべての病院が満たさなければならない必須要件です。
4. 申請スケジュールと採択の仕組み
厚生労働省が示すスケジュールは以下のとおりです。
<令和8年スケジュール>● 3~4月:都道府県の所要見込額の決定
● 5~6月:対象医療機関から申請書・「業務効率化計画」の提出
● 7月~ :厚生労働省における選定作業を経て補助対象の決定
本事業は、都道府県ごとに所要見込額の上限があり、厚生労働省が申請内容を審査・選定します。申請書や「業務効率化計画」を提出した病院がすべて補助対象となるわけではない点には留意が必要です。
また原則、令和8年7月以降の国からの内示後であれば、実施要綱に基づき厚生労働大臣が認めた病院が、認められた事業として実施したものについては補助対象になります。Q&Aでは、「令和7年度中に導入した機器等は補助対象となりません」と明記されています。
5. 注意すべき「返還リスク」と費用管理の要点
本事業で留意すべき点の一つに、成果が出なかった場合の返還リスクがあります。
計画の進捗は厚生労働大臣に報告し評価を受ける義務があり、成果が認められなかった場合には、補助金の返還を求められる可能性が明記されています。
要件の一つである、ベースアップ評価料の届出や定量的な目標達成など、求められる要件は決して低くありません。導入して終わりではなく、実際に残業代削減や業務効率化に結びつける経営的な戦略が不可欠となります。
また、申請要件として「業務効率化推進委員会」の設置が求められています。Q&Aでは、院長等の管理者が委員長となることが必須とされており、この点は見落としのないよう留意が必要です。
費用面では、電子カルテの導入費用やその更改費用そのものは補助対象外となる点に注意が必要です。ただし、バイタル自動入力機器等を導入する際に電子カルテとのシステム連携が必要となる場合には、そのシステム改修費用は補助対象となります。
過去には、厚生労働省は令和4年度委託事業として、医療機関における「
勤務環境改善に向けた好事例集」を作成・公開しています。ICT導入による業務効率化の具体的な取組事例として、自院の参考にできる部分もあるかもしれません。
自院の業務実態を数値化し、どの部門でどのようなICTツールが最大の効果を発揮できるかシミュレーションし、「業務効率化計画」の提出に向けて準備が求められます。
引用・参考:
◾️医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業の実施について(厚生労働省HP)
◯ 実施要綱
◯ Q&A(第1版)
■ 令和7年度補正予算案について(報告)(厚生労働省HP)