厚生労働省は5月11日、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員向けに、「保険外サービスを含む多様な地域資源について利用者や家族等に情報提供する際の手引き・ポイント集」を公開しました。
手引きでは、生活支援や通院同行、配食など、介護保険サービスだけでは対応しにくいニーズについて、情報提供の流れや確認すべきポイントが整理されており、在宅支援に関わるリハビリテーション専門職にとっても参考になる資料となっています。
介護保険サービスだけでは、日々の生活を支えきれない。そうした場面は、在宅支援の現場で少なくありません。
買い物や通院同行、見守りなど、これまで家族が担ってきた役割を、誰が、どのように支えるのか。在宅支援では、この課題がより大きくなっています。
今回の手引きからは、介護保険サービスだけでは在宅生活を支えきれない現状を前提に、保険外サービスを地域資源として活用していこうとする方向性もうかがえます。
保険外サービスはこれまでも地域ごとに活用されてきましたが、厚労省が情報提供の流れや確認すべきポイントを整理して示したことで、地域包括ケアの中で、介護保険外の支援を地域資源として捉える流れが、より明確になったともいえます。
介護保険だけでは足りない場面が増えている
独居高齢者の増加や、仕事と介護を両立するビジネスケアラーの増加を背景に、介護保険サービスだけでは対応しにくい生活支援ニーズが広がっています。
買い物や通院同行、見守りなど、これまで家族が担ってきた支援を、地域でどう補っていくかが問われています。
一方、利用者・家族からは、
・介護保険でできること・できないことが分かりにくい
・地域にどのようなサービスがあるのか分からない
・事業者が多く、どこに相談・依頼すればよいか分からない
といった声も多く、情報提供を担うケアマネジャーや地域包括支援センター職員の役割がより重要になっています。
手引きの対象と主な内容
今回の手引きは、主に以下の関係者を対象に作成されています。
● ケアマネジャー
● 地域包括支援センター職員
● 自治体担当者
手引きでは、①生活支援・家事支援、②配食、③移動・外出支援、④訪問理美容の4領域を中心に、利用者へ情報提供する際のポイントや利用事例などを整理しています。
情報提供の3つのステップ
ステップ1:まず困りごとを整理する
利用者・家族への聞き取りを通じて、何に困っているのかを整理し、介護保険サービスだけでは対応しにくい部分を明確にしていきます。
手引きでは、困りごとが本人の中でも整理されていないケースが多いとし、まず生活上の不自由を丁寧に把握する重要性を示しています。
ステップ2:サービスや担い手を検討する
利用者の状況に応じて、適切なサービスや担い手を検討します。
特に、介護保険サービスと比べて自己負担が大きくなる場合があるため、料金面の説明も重要なポイントとして示されています。
ステップ3:本人・家族が選べる形で提示する
複数の選択肢を提示し、利用者や家族が納得して選べるよう支援します。
パンフレットを持ち帰って家族で相談してもらうなど、実践的な工夫も紹介されています。
各サービスカテゴリの情報提供ポイント
生活支援
生活支援では、どこまで対応できるのか、料金体系はどうか、誰が支援するのかといった点が、情報提供時の確認事項となります。
介護保険では対応が難しい一方、保険外サービスで対応できる場合がある生活周辺支援の例として、以下が挙げられています。
● 同居家族分を含む掃除や買い物
● 庭木の剪定や草刈り
● 大掃除や不用品整理
● 通院同行・救急搬送時の付き添いや同乗
● 旅行や冠婚葬祭等への同行
● 金銭管理や入院・入所の手続き代行
配食
配食サービスでは、どのような頻度・形態で届くのか、常温・冷蔵・冷凍のいずれかに加え、きざみ食やムース食などに対応しているかといった点が、主な確認事項として挙げられています。
また、自治体によっては配食サービス補助に安否確認サービスが付随している場合もあり、地域ごとの確認が必要とされています。
移動・外出支援
移動・外出支援では、利用者の身体機能と移動目的に応じたサービス選択が重要になります。
自力での移動が可能か、介助が必要か、医療的ケアを要するかによって、介護タクシー、同行支援付きサービス、民間救急などの選択肢が変わります。有資格者対応の要否の確認も重要なポイントとして挙げられています。
訪問理美容
訪問理美容は誰でも利用できるわけではなく、骨折や認知症、寝たきり状態などにより、店舗への来店が難しいと認められる場合が対象となります(理容師法施行令第4条等)。
そのため、情報提供時には利用条件の確認も必要とされています。
身寄りのない高齢者支援との関係
今回の手引きと同時に、厚労省は「身寄りのない在宅高齢者への支援」に関する自治体向けガイドブックも公表しました。
身寄りのない高齢者では、通院同行や手続き代行、安否確認など、これまで家族が担ってきた役割を誰が支えるかが課題となります。
また、身寄りのない高齢者の増加は、家族による支援を前提としてきた在宅支援モデルの見直しを迫っているともいえます。
今回の手引きからは、家族が担えなくなった役割を、地域でどう補完するかという視点で読むこともできます。
リハビリテーション専門職にとっての活用可能性
リハビリテーション専門職にも、生活期・維持期の支援や在宅サービスとの連携の中で、生活を支える地域資源として保険外サービスの存在を把握し、必要に応じて多職種と共有する視点が重要になる場面が増えています。
例えば、外来リハビリテーションに通いたいが付き添いがいない、独居で買い物が難しいといったケースも少なくありません。このような場面で、通院同行や生活支援などの保険外サービスが、在宅生活継続の支えになる可能性があります。
また、言語聴覚士(ST)が関わる在宅高齢者の摂食嚥下支援においては、配食サービスがきざみ食やムース食などに対応しているかを知っておくことも実践的な情報となります。
ケアマネジャーとの連携においては、こうした地域サービスの情報を多職種で共有しながら、必要な支援につなげていく視点も重要になると考えられます。
また、リハビリテーション専門職も同様に、生活全体を地域で支えるという視点をもって地域の保険外サービスを組み合わせる工夫も求められるかもしれません。
引用・参考
◾️ 介護保険最新情報 Vol.1503(令和8年5月11日)(厚生労働省HP)
◾️ 「保険外サービスを含む多様な地域資源について利用者や家族等に情報提供する際の手引き・ポイント集」(株式会社日本総合研究所、令和8年3月)
◾️「地域における頼れる身寄りがいない高齢者等への支援に関する自治体向けガイドブック」(株式会社日本総合研究所、令和8年3月)