日本理学療法士協会が開発を進める「理学療法標準評価」に関する研究論文が、国際的なリハビリテーション医学誌「Journal of Rehabilitation Medicine」に掲載されました。
「評価者が違っても結果が揃うか」「FIMなど既存の評価とどの程度対応しているか」を検証したもので、同協会は2026年6月29日に論文掲載を報告しています。
理学療法標準評価とは──全ての病期・分野で使える共通の物差しを目指して
今回の「理学療法標準評価」最大の特徴は、急性期・回復期・生活期といった病期や、医療・介護といった分野を問わず、同じ評価票を使い続けられることを目指している点です。
現在使われているFIMや要介護認定は対象や目的によって使い分けが必要ですが、理学療法標準評価は病期・分野を横断して使える共通の物差しを目指して作成されています。
日本理学療法士協会が示す本評価票の主な特徴は以下のとおりです。
◯ 「できるADL(能力)」と「しているADL(実行状況)」を同時に評価できる
◯ 疾患や病期を問わず使用できる
◯ FIMや介護認定評価票との高い相関が確認されている
◯ 5項目の「リハビリテーション必要度評価」でスクリーニングとしても使える
◯ 特別な器具や環境が不要で、簡便に実施できる
2019年の委員会発足から始まり、2020年のフィージビリティスタディ、2021年の大規模調査を経て、2022年版が作成されました。
今回の論文は、この大規模調査のデータをもとにした国際的な検証報告です。評価票と使用ガイドは2024年4月に更新されており、使用方法の解説動画が会員限定コンテンツで公開されています。
「誰が評価しても同じ結果が出るか」を複数の疾患領域で検証
今回掲載されたのは、大畑氏らによる研究論文(DOI: 10.2340/jrm.v58.45701)です。
理学療法標準評価には、患者の動きの質をスコア化する「動作の質スコア(MQS)」という仕組みが含まれています。
この研究では、神経系・運動器系・内部障害系の異なる疾患で入院リハビリを受けている患者84名を対象に、2名の理学療法士がそれぞれ独立してMQSを評価し、その結果がどの程度一致するかを調べました。
結果として、評価者間の一致度は「優れている」と判定される水準に達しており、疾患の種類が違っても安定して使えることが示されました。
また、すでに臨床で広く使われているFIMの運動項目との強い関連が見られ、特に「移乗・移動」「セルフケア」との関連が強いことが確認されています。一方、「排泄コントロール」との関連はやや弱めという結果でした。
示したグラフは、点が右上がりに集まっていれば、「MQSの評価が高い人ほど、FIMの点数(日常生活の自立度)も高い」という強い相関関係(妥当性)があることを示しています。論文内では「非常に強い相関(ρ = 0.91)」があったと報告されています。
論文では、MQSはADLベースの評価を補いながら「動きの質」に焦点を当てた指標として有用であると結論づけています。
「使える評価」として認められるには、まだいくつかのステップが残る
国際誌への掲載は、評価票の品質が査読を通じて認められたという意味で、標準化に向けた大きな一歩です。疾患の異なる患者さんに同じ評価票を使っても結果がブレないことが示されたのは、他職種への説明や施設をまたいだ情報共有の際に共通の指標として使いやすくなる可能性を示しています。
一方で、診療報酬・介護報酬の算定根拠にはなっておらず、日本理学療法士協会は引き続き研究やシステム開発を進めながら、より広く使われる評価を目指しています。
今回の研究は、理学療法標準評価が「評価者が違っても結果がブレない」ことを示す第一歩であり、今後は「時間が経つと結果がどう変化するか(反応性)」「予後をどの程度予測できるか」といった追加の検証報告が期待されます。
全国の臨床現場で日常的に使われるようになるには、記録の手間や電子カルテへの組み込み、そして報酬制度上の位置づけといった課題も残っています。
引用・参考
■ 医学系雑誌「Journal of Rehabilitation Medicine(Vol.58, 2026年)」に、理学療法標準評価に関する論文が掲載されました(2026年6月29日)(日本理学療法士協会HP)
■ K. Ohata, et al. Inter-rater reliability and construct validity of a cross-diagnostic movement quality score for rehabilitation assessment. J Rehabil Med. Vol.58 (2026). DOI:10.2340/jrm.v58.45701
■ 理学療法標準評価(日本理学療法士協会HP)