厚生労働省は7月6日、「第3回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」を開催しました。
今回の検討会では、少子化による入学者数の減少や、教員の負担増といった養成校が抱える課題を踏まえ、遠隔授業の活用、サテライト化、社会人を含む多様な人材が参入しやすい養成課程のあり方について議論が行われました。
専門学校修了者は地元就職の割合が高い
文部科学省からは、専修学校の現状について説明がありました。
資料では、専門学校修了者は、学んだ分野に関連する職業に就職する割合が高く、また大学と比較して地元就職の割合が高いことが示されました。
地域の医療提供体制を支える人材を養成するうえで、専門学校を含む養成校が果たす役割の大きさが改めて確認された形です。
学生減少と教員負担、養成校の運営課題
厚生労働省からは、医療関係職種の「養成校の運営」について説明がありました。
資料では、学生数の減少が学費収入の減少に直結し、地方を中心に養成校の経営に影響を与えていることが課題として示されました。
また、学生の多様化に伴い、専任教員に求められる指導や支援の負担が増加していることも指摘されました。
こうした課題への対応策として、ICTを活用した遠隔授業の推進、複数校の経営一体化、一部をサテライト施設として運営する方法などが論点として示されました。
養成校がない地域への対応も論点に
検討会では、県内に当該職種の養成校がない地域への対応も論点となりました。
職種によっては、養成校が存在しない地域があり、こうした地域では、単に既存の養成校を統合するだけでは人材養成の課題を解決できないことが指摘されました。
言語聴覚士については、養成校が存在しない県が12県あることが資料にて示されました。
対応策として、遠隔授業やサテライト施設の活用、都道府県を越えた広域連携による学びの場の確保などが挙げられました。
また、遠方から通学や実習に参加する学生に対して、交通費や居住費などの経済的支援を検討する必要性も示されました。
遠隔授業やサテライト化、演習・実習の質確保が課題
委員からは、遠隔授業やサテライト化の推進に賛同する意見が出された一方で、医療職養成において重要となる演習・実習の質をどのように担保するかについても、意見が出されました。
遠隔授業やサテライト化を進める場合でも、実技や臨床実習の教育の質を確保する仕組みが不可欠であるとの指摘が相次ぎました。
また、サテライト化や学校統合を行った場合の具体的な教員配置基準について、国として早急かつ明確に示すべきとの要望も出されました。
検討会では、リハビリテーション専門職の専門学校によるオンデマンド事業の事例などが提示されました。
社会人を含む多様な人材、目指しやすい仕組みを
養成課程については、社会人など意欲ある多様な人材が医療関係職種を目指しやすい仕組みづくりも論点となりました。
具体的には、修業年限の柔軟化や、他校・他資格で取得した既修得単位の履修免除をより円滑に進める仕組みなどが挙げられました。
委員からは、学び直しやキャリアチェンジを後押しする観点から、教育の質を確保しつつ、過去の学習歴や経験をどのように評価するかについて、さらに検討が必要であるとの意見が出されました。
人材確保の前提として、処遇改善や労働環境の改善を求める意見も
一方で、委員からは、本検討会の主な論点である養成課程や養成校の運営のあり方とは別に、医療職全体の処遇改善や労働環境の改善を求める意見も出されました。
地域で医療関係職種を安定的に確保するためには、遠隔授業やサテライト化、既修得単位の認定など、養成段階の柔軟化だけでは十分ではありません。
資格取得後に専門職として働き続けられる環境が整っていなければ、医療職を志す人材の確保にはつながりにくいとの指摘です。
養成の入口を広げる議論とあわせて、卒業後の処遇や働き方をどう改善していくかは、検討会の中心論点からは外れるものの、医療関係職種の安定的な確保を考えるうえで極めて重要な課題といえます。
今後は導入支援や基準整備が焦点に
今後は、遠隔授業やサテライト化を実際に進めるための支援策や、制度運用の見直しがさらに検討される見込みです。
具体的には、遠隔授業に必要な通信ツール、サテライト施設の整備、他校との講義調整にかかる費用などへの支援が論点となります。
また、サテライト施設等における適切な教員配置基準、オンライン授業と対面実習の切り分け、複数校での経営一体化を円滑に進めるための制度整備も課題となります。
さらに、都道府県が中心となり、地域の需給バランスに基づいて適切な養成数を把握し、養成校や医療機関が連携して人材を確保する体制づくりも求められています。
リハビリテーション専門職団体から、教育の質保証と地域の養成体制確保を求める意見
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の各職能団体からも、遠隔授業やサテライト化を含む養成課程の柔軟化や地域での養成体制の確保について意見が出されました。
PT協会・斉藤秀之会長「実習教育のあり方、避けて通れず」
日本理学療法士協会の斉藤構成員は、遠隔授業やサテライト化について「反対するものではない」としつつ、医療職養成においては実習教育のあり方を避けて通ることはできないと指摘しました。
地域枠の活用や外部機関との連携、実習教育の充実、教員の負担軽減を組み合わせて検討する必要性に言及し、地域医療に資する人材をどのように育成していくかが重要であると述べました。
OT協会・山本伸一会長「柔軟な制度設計への挑戦を」
日本作業療法士協会の山本構成員は、学校養成所の経営一体化について「興味深い提案」としたうえで、演習・実習を含めた課題があると指摘しました。
一方で、2040年に向けた医療専門職の安定的な人材確保には、柔軟な制度設計に挑戦していく必要があるとの認識も示しました。
また、既修得単位の履修免除について、学び直しやキャリア形成、複数資格の取得、キャリアパスの多様化につながる可能性があるとして、教育の質の保障を前提に、職能団体や行政との合意形成を進める必要があると述べました。
ST協会・内山量史会長「専任教員配置は教育の質を左右する重要課題」
日本言語聴覚士協会の内山構成員は、サテライト化に関して、専任教員の配置は教育の質の担保に関わる重要な課題であると指摘しました。
また、言語聴覚士の養成所が存在しない県が12県あることに触れ、養成所がない地域への対応は、単に学校を統合するだけでは解決できない課題だと述べました。
そのうえで、都道府県が医療需要や人材需給を調査・分析し、将来的な人材確保に主体的に関与する必要性を強調しました。
あわせて内山構成員は、言語聴覚士には大学卒業後に入学する2年課程があり、社会人経験を経て入学する人も多いと紹介。
社会人として培ったコミュニケーション能力や職業観を備えた人材は臨床現場にとっても貴重であり、多様なキャリアを経て医療職を目指せる仕組みには大きな意義があると述べました。
教育の質保証と地域の養成体制の両立を
各団体の発言からは、遠隔授業やサテライト化などの制度柔軟化を進めるにあたっても、教育の質保証、実習体制、教員配置、地域での養成機能の確保を一体的に検討する必要性が示されました。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を含む医療関係職種の養成は、地域の医療提供体制を支える基盤です。
養成校の存続、教育の質の確保、地域での人材確保と、多様な人材が医療職を目指しやすい環境づくりをどのように進めるか、今後の議論が注目されます。
引用・参考:
■ 第3回 医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会(厚生労働省HP)
・01_資料1_専修学校の現状について
・02_資料2_学校養成所の運営・養成課程について