2024年度診療報酬改定で設けられた「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」は、専従のリハビリテーション専門職を病棟に置き、病棟全体のADLの質を管理する体制を評価するものです。
この病棟管理とリハビリの提供量が患者のADL回復とどのように関わるかを検証した多施設研究(9病院18病棟・4,166例)が、米国の医学誌「JAMDA」に掲載されました。
「病棟管理型」への移行という発想
この加算は、従来の「ADL維持向上等体制加算」を改組して設けられたものです。
個別リハの単位数ではなく病棟全体のADLの質を評価する仕組みで、リハビリテーション専門職に、個別の訓練提供者にとどまらず、病棟の生活そのものを管理する役割を求める内容だといえます。
この仕組みが期待しているのは、専従のリハビリテーション専門職が病棟の生活を管理することで患者のADL回復を後押しすることです。
では、その効果は実際にあるのでしょうか。安田らの多施設研究は、この加算を算定している病棟のデータから、病棟管理とリハ量がADL回復とどう関わるのかを分析し、その結果がJAMDA(2026年)に掲載されました。
研究の概要|「効果検証」ではなく「実態の分析」
この研究は、「加算を算定している病棟」だけを集めた多施設共同の観察研究として実施されました。
「加算あり群 vs なし群」でも「改定前 vs 後」でもありません。したがって「リハ職を病棟に配置したことがADL回復に効果があった」などと仮説を検証した研究ではなく、加算の算定病棟の内部で、病棟管理の度合いとリハ量がADL回復とどう関連するかを見たものです。なお、制度はその後の改定でも見直されており、この研究が観察したのは2025年時点の運用下にある病棟です。
日本の9病院18病棟を対象に、2025年9〜11月に入院した患者が追跡調査されました。当該病棟の患者のうち、院内死亡・末期がん・入院時Barthel Index(BI)100点などの者が除外され、最終的に4,166例が解析されました。
主要アウトカムの「ADL獲得」は、あるレベルに到達したかどうかではなく、入院から退院までにBIが何点上がったかという変化量です(退院時BI−入院時BIで、大きいほどADLが改善)。日常生活動作の自立度は0〜100点のBIで評価されます。
リハビリテーション専門職の活動は電子的に記録され、①個別リハビリテーション、②多職種連携、③事務管理、④病棟管理業務(ベッドサイド指導・家族調整など)の4領域に分類されました。このうち病棟管理業務は、活動時間の19.4%(約70分/日)を占めていました。
病棟管理"単独"では有意でなかった
まず全体像として、対象患者ではBIが入院時42.4点から退院時65.0点へと平均22.6点改善し、71.9%の患者でADLの改善がみられました。
調査の結果、病棟管理そのものが単独ではADL改善との関連は確認されませんでした(β=-0.053, p=0.390)。専従スタッフを置けばADLが上がる、という単純な関係ではありませんでした。
解析の結果、ADL改善との関連が示されたのは、病棟管理とリハビリテーション提供量の組み合わせでした。病棟管理が手厚い病棟ほど、週末リハビリテーションを増やしたときのADL改善の伸びが大きい、という関係です(管理×週末リハの交互作用 β=0.968, p=0.021)。さらに、病棟管理・平日リハ・週末リハの3つの要因がかけ合わさったときにADL改善がもっとも大きくなる関係も認められました(交互作用 β=0.186, p=0.005)。
この交互作用を分かりやすく示すため、著者らは代表的な状況での予測ADL獲得を計算しています。病棟管理が手厚く平日・週末ともリハビリテーション提供量が多い条件では28.2点、逆に病棟管理が手薄で平日・週末ともリハ量が乏しい条件では21.2点となり、その差は7.0点であると報告しました。
7.0点をどう読むか──「予防のパラドックス」
BIがどのくらい上がれば臨床的に意味のある改善といえるか、その目安は脳卒中などで9〜16点程度とされます。個々の患者で見れば、7.0点はこれを下回り、一見小さく見えます。
ただ著者らは、これを個人ではなく集団レベルで解釈すべきだとしています。
そこで参照されるのが、疫学者ジェフリー・ローズの「予防のパラドックス」です。少数の高リスク者を集中的に治療するより、集団全体の平均をわずかに底上げするほうが、社会全体ではより多くの発生を防げることがある、という考え方です。
著者らは、急性期病棟のような大きな集団では、一人ひとりでは小さな7.0点の底上げでも、集団全体で見れば自立して退院できる人の増加につながりうるとみています。
現場への示唆と限界
本研究では、病棟管理とリハビリテーション提供量がうまく噛み合ったときに、投入したリハ提供量は回復に結びつきやすくなる可能性が示唆されました。
この結果を自分の病棟に当てはめると、いくつか確かめたい点が出てきます。週末にリハが手薄になっていないか。専従のリハビリテーション専門職による病棟管理業務(入退院時評価・ベッドサイド指導・家族調整など)が十分に行えているか、といった視点です。単位数を増やすという視点以外にも、こうした点を見直す価値はありそうです。
著者らは、研究の限界として後ろ向き観察研究なので因果関係は示せないこと、活動記録が自己報告であること、対象病棟にST(言語聴覚士)が不在で嚥下・コミュニケーションケアの影響を評価できていないことなどを挙げています。
リハビリテーションの効果は「単位数をどれだけ積むか」だけでなく、「病棟の生活全体をどう支えるか」で変わる。本研究は、そのように考えるきっかけを与えています。
■ 論文情報
【掲載誌】Journal of the American Medical Directors Association
【論文タイトル】Impact of Therapist-Led Ward-Based Interprofessional Management on ADL Gains: A 3-Way Interaction With Rehabilitation Volume
【著者】Kouhei Yasuda, Masaaki Matoba, Yumi Kamijo, Mikihiko Toyoda, Yuki Suwada, Masahiro Mori, Shiori Sazaki, Yuta Kinoshita, Genki Kobayashi, Akihiro Konta, Toshio Suzuki, Hiroaki Saito, Taiki Okada, Yousuke Enomoto, Kensei Yakushi, Nobuhito Ito, Toshifumi Amano
【DOI】
10.1016/j.jamda.2026.106396
引用・参考
■ Yasuda K, et al. Impact of therapist-led ward-based interprofessional management on ADL gains: a 3-way interaction with rehabilitation volume. J Am Med Dir Assoc. 2026; 27, 106396. DOI: 10.1016/j.jamda.2026.106396
■ A233 リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算(PT-OT-ST.NET 令和8年診療報酬改定 特設サイト)