厚生労働省は9月3日、第264回社会保障審議会介護給付費分科会を開催し、令和9年度介護報酬改定に向けて、「リハビリテーション・栄養・口腔の一体的取組」などについて議論しました。
リハビリテーション・栄養・口腔の一体的取組については、一定の効果が示された一方、関連加算の算定率は低く、管理栄養士や口腔に関わる専門職の確保が課題となっていることが報告されました。
認知症やLIFEなど5つのテーマを議論
今回の分科会では、「認知症への対応力強化」「医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護」「科学的介護情報システム(LIFE)」「口腔・栄養、一体的取組」「多床室の室料負担」の5つが議題に挙げられました。
認知症への対応力強化では、本人の意向を尊重した生活を目標に、日常生活動作や社会参加の向上につなげる方策などが論点となりました。
医療・介護連携では、高齢者施設における協力医療機関の確保や感染症への対応力強化、各サービスにおけるACPの位置づけ、看取りのあり方などが論点として示されました。
LIFEについては、関連加算におけるデータ提出やアウトカム評価のあり方などが論点となりました。
なかでも、リハビリテーション専門職に関わる「リハビリテーション・機能訓練、栄養、口腔の一体的取組」については、令和6年度介護報酬改定後の算定状況や取組の効果、加算を算定していない理由が示され、今後の推進方策と加算のあり方が議論されました。
リハ・栄養・口腔の一体的取組を評価
令和6年度介護報酬改定では、リハビリテーション・口腔・栄養を一体的に推進し、自立支援・重度化防止につなげる観点から、通所リハビリテーションの「リハビリテーションマネジメント加算(ハ)」などが新設されました。
リハビリテーションマネジメント加算(ハ)は、LIFEへのデータ提出に加え、管理栄養士の配置、栄養アセスメントと口腔の健康状態の評価、関係職種間での情報共有などを行った場合に算定できます。
また、介護老人保健施設では「リハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)」、介護医療院では「理学療法注7・作業療法注7・言語聴覚療法注5」、特別養護老人ホームでは「個別機能訓練加算(Ⅲ)」が設けられています。
通所リハの算定事業所は10.3%
今回示された資料によると、通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算(ハ)の算定率は、事業所ベースで10.3%にとどまりました。
また、介護老人保健施設のリハビリテーションマネジメント計画書情報加算(Ⅰ)は事業所ベースで16.9%、介護医療院の理学療法注7・作業療法注7・言語聴覚療法注5は18.4%でした。
介護老人福祉施設(特養)の個別機能訓練加算(Ⅲ)は6.3%、地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特養)では4.6%となっています。
令和6年度改定で「リハ・栄養・口腔の一体的取組を評価する加算」が設けられたものの、算定は限定的な状況にあることが資料より示されました。
「共通の方針・目標」の検討に一定の効果
一方、一体的取組を実施している事業所・施設では、一定の効果も確認されています。
令和6年度介護報酬改定の検証調査では、一体的取組の内容として、「関係職種が必要時に相談し合う体制を作っている」「関係職種で情報連携を行うカンファレンスを実施している」と回答した事業所・施設が8割以上を占めました。
カンファレンスを行った効果については、「関係職種と話し合うことで、共通の方針・目標について検討できた」とする回答がおおむね7~8割となりました。
利用者への効果として、介護老人保健施設、介護医療院、地域密着型特養では、「口腔衛生状態の維持・改善につながった」とする回答が4~5割でした。
特養では、「誤嚥性肺炎の予防やリスクが高い利用者の早期発見につながった」が約5割、通所リハビリテーションでは、「利用者のリハビリテーション・栄養・口腔の関わりに対する理解や意識が向上した」と約4割が回答しました。
通所リハでは管理栄養士、口腔専門職の確保が壁
一体的取組の普及を妨げる要因として示されたのが、関係する専門職の確保です。
一体的取組に係る加算を算定していない理由について、介護老人保健施設、介護医療院、特養などでは、「口腔の専門職の確保が困難だから」とする回答が約3割を占めました。
通所リハビリテーションでは、「管理栄養士の確保が困難だから」「口腔の専門職の確保が困難だから」とする回答が、それぞれ約5割に上っています。
一体的取組に関するカンファレンスへの参加状況をみても、通所リハビリテーションにおけるリハ専門職・機能訓練指導員の参加は8~9割だった一方、管理栄養士の参加は約3割、歯科医師・歯科衛生士は1~3割にとどまりました。
通所リハビリテーションのリハビリテーションマネジメント加算(ハ)では、事業所内への配置または外部との連携により、管理栄養士を1人以上確保することが求められています。また、口腔の健康状態については、言語聴覚士、歯科衛生士または看護職員が、ほかの職種と共同して評価することが要件となっています。
一体的取組の方向性や効果には一定の評価がみられるものの、必要な専門職を確保できるかどうかが、実際の算定を左右している状況がうかがえます。
専門職の確保や一体的取組の評価を求める意見
委員からは、一体的取組による高齢者の状態の維持・向上などの効果は示されている一方、歯科専門職や管理栄養士との連携が難しく、人材を確保できる仕組みの整備が必要との意見が出されました。
また、専門職が連携すること自体を新たに評価する仕組みや、通所リハビリテーションに設けられている一体的取組の評価を訪問リハビリテーションにも広げることを求める意見が挙がりました。
令和9年度改定に向け、加算のあり方も論点に
分科会では、令和9年度介護報酬改定に向けた論点として、リハビリテーション・機能訓練、栄養、口腔の一体的取組を今後どのように推進するか議論が交わされました。
あわせて、介護報酬では改定を重ねるごとに加算の種類が増え、算定要件も複雑化していることも指摘されました。利用者のわかりやすさや事業者の事務負担軽減の観点を踏まえ、一体的取組に関する加算をどのように考えるかも論点に挙げられています。
次回以降の介護給付費分科会では、9月10日、14日、16日の3回にわたって事業者団体等との意見交換が予定されており、令和9年度介護報酬改定に向けた検討が続けられます。
引用・参考
■ 第264回社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省HP)
・【資料4】口腔・栄養、一体的取組