東京都健康長寿医療センター研究所と全国老人保健施設協会(全老健)の研究グループは、全国の介護老人保健施設(老健施設)を対象とした調査データの分析結果を報告しました。
結果、「認知症短期集中リハビリテーション実施加算」(以下、認知症短期集中リハ)を算定している施設は、算定していない施設に比べて在宅復帰率が高いことを明らかにしました。
研究成果は2026年7月3日、国際学術誌『Journal of the American Medical Directors Association』にオンライン掲載されました。
認知症短期集中リハとは
老健施設では、2006年以降、身体機能の回復をめざす「短期集中リハビリテーション実施加算」(以下、短期集中リハ)と、認知症のある利用者を対象とした認知症短期集中リハが、介護保険制度上の加算として位置づけられています。
認知症短期集中リハは、認知機能の維持・改善や認知症の行動・心理症状(BPSD)の軽減を目的としています。
主に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が医師の指示のもとで提供するものであり、入所後3か月間、1日20分、週3回を上限に算定でき、短期集中リハと同日に併用することも可能です。
論文中で研究グループは、認知症短期集中リハが認知機能やADLの改善に寄与することを示した先行研究はあったものの、退所先、特に在宅復帰との関連を全国規模のデータで検証した研究はこれまでなかったと述べています。
今回の調査は、この点を明らかにすることを目的として実施されました。
調査方法と結果
研究グループは2024年12月から2025年2月にかけて、全老健に登録する3,532施設に調査票を送付し、527施設(回答率14.9%)から回答を得ました。
このうち、短期集中リハを算定しており分析に必要な情報がそろっていた434施設を分析対象としました。
<結果のハイライト>
● 434施設のうち、264施設(60.8%)が認知症短期集中リハを算定しており、170施設(39.2%)は算定していませんでした。
● 在宅復帰率の平均は、認知症短期集中リハを算定している施設で45.5%、算定していない施設で36.6%でした。
● 施設規模、利用者の要介護度、PT・OT・ST・看護師などの配置人数、他の加算の算定状況といった条件を調整した後も、認知症短期集中リハを算定している施設は算定していない施設より在宅復帰率が5.4ポイント高いという結果でした。
欠測データのある施設や、短期集中リハを算定していない施設を含めた追加の分析(感度分析)でも同様の傾向が確認されており、研究グループは異なる条件で分析しても同じ傾向が得られたことから、結果の信頼性が高いとしています。
一方で、本研究は横断的研究であり、認知症短期集中リハと在宅復帰率の関連は示されたものの因果関係を直接示すものではない点に留意が必要です。
また研究グループは、調査の回答率が14.9%にとどまり回答施設に偏りがあった可能性や、施設単位の調査であるため利用者個人の認知機能や家族支援の状況を十分に反映できていない点を本研究の限界として挙げています。
次期改定で「認知症短期集中リハ」も論点に
認知症短期集中リハをめぐっては、社会保障審議会・介護給付費分科会でも2027年度介護報酬改定に向けて老健の報酬体系の論点の一つとして取り上げられています。
研究グループは、認知症短期集中リハが認知機能やADLの維持・改善を通じて利用者の退所準備性を高めている可能性があると説明しています。
また、全国規模で実施されている加算制度と在宅復帰率との関連を示した点は、老健施設における在宅復帰支援のあり方を検討するうえで意義があると位置づけています。
そのうえで、利用者個人の特性も含めた縦断研究などにより、認知症短期集中リハの効果をより詳細に検証する必要があると指摘しています。
■ 論文情報
【掲載誌】Journal of the American Medical Directors Association
【論文タイトル】Association of Intensive Cognitive Rehabilitation With Discharge to Home
【著者】Seigo Mitsutake, Takumi Hirata, Masahiro Akishita, Kentaro Higashi, Kenji Toba
【DOI】
10.1016/j.jamda.2026.106307
引用・参考
◼️ プレスリリース 老人保健施設における認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定は在宅復帰率の高さと関連(東京都健康長寿医療センター研究所HP)
◼️ Mitsutake S, et al. Association of intensive cognitive rehabilitation with discharge to home. JAMDA. 2026; 27, 8. DOI: 10.1016/j.jamda.2026.106307